この作品は基本的には弁護士と依頼者という設定だ。
しかし、起きた出来事を正直に語ろうとしないことが、後の裁判で不利に転じてしまう可能性がある。
無罪獲得率100%を誇る敏腕女性弁護士フェラーラ
彼女は自分のキャリアを傷つけることがないように、慎重に事実関係を精査してゆく。
彼女の仕事はズバリ「無罪を勝ち取ること」
主人公アドリアーノの顧問弁護士パオロは、富裕層を相手に弁護士活動をしているが、毎回アドリアーノからの依頼で証拠を隠滅したりお金で証言を取ったりしていたが、今回アドリアーノにかけられた殺人嫌疑に対する物的証拠と状況証拠があまりにも分が悪く、仲間のフェラーラに頼ることにした。
約束より早くアドリアーノを訪ねたフェラーラ 起きた出来事と関連事項について詳細に聞くと同時に、彼の証言の些細な辻褄の合わない箇所を掘り下げながら、「実際に何が起きたのか」について詳細に聞き取ってゆく。
彼女は急いでいた。
検察に証言者が来たことをでっちあげ、アドリアーノの証言を急がせるのだ。
さて、
物語とは今やすべて「組み合わせ」でしかない。
まったく新しい物語というのはあるのかもしれないが、おそらく新しい素数を探すより難しいだろう。
この物語も、弁護士と依頼者というごく一般的な設定を基本に、復讐とそのための工作を組み合わせているが、従来これと同じ組み合わせの作品がなかった斬新さを感じざるを得ない。
当然それが大どんでん返しとなるのだが、その過程で視聴者の心理を大きく変えてしまうという離れ業をやり遂げている。
一般的に物語は、主人公がピンチを迎え、逆境を乗り越えるところに共感を抱く。
しかしこの作品は逆で、徐々に主人公に対する嫌悪感を視聴者に蓄積させるのだ。
この作品も、人間として「やっちゃった」けど、どうにかしようとする主人公の行く末に焦点が当てられる。
しかし、徐々に主人公という人間の本性があぶりだされ、どうにも許せなくなる。
その程度もいくつか段階がある。それがまたよくできている。
そもそも、アドリアーノの言い分は「男が部屋にいて殴られ、気づけばラウラが死んでいた」ということだ。
アドリアーノが考える犯人は、「事故を起こしたときに出会った男」
しかしフェラーラは「違う」と言い切る。
そして「起きた殺人事件」について詳細に聞き取り始める。
アドリアーノの回想が物語となっているのだが、その回想は彼の客観的なものではないことをフェラーラが指摘して、修正させ、「真実を言わないと負ける」と脅し、一つ一つの些細な部分に焦点を当てていくのが実に巧妙かつスリリングで作品に引き込まれてしまう。
最初の時点で、アドリアーノに掛かった嫌疑は「ラウラへの殺人罪」
森で起きたのは事故 だから真犯人が誰かわかれば現状の最悪の状況から逃れることができる。それには、事故の真実を語る必要がある。とフェラーラは言う。
アドリアーノは当初から、一連の選択をした理由、つまり事故の隠蔽工作をライらの所為にしていた。
それが、彼の証言がフェラーラによって少しずつはがれ落とされてゆく。
終いには、事故で死んだと思っていた男は生き返ったにもかかわらずそのまま車を沈めたことが判明する。
さもラウラが首謀者と言っていたが、すべてがアドリアーノ首謀だったこと。
そして、問題のラウラ殺害は、アドリアーノがしたということを打ち明けるのだ。
しかしフェラーラは、すべては「トンマースガルリ」の犯行だと仮説を立てる。
彼女の仮説は見事で、そもそも下調べなども十分に行っていた。彼の妻が例のホテルで働いていたことまで調べ上げていた。なぜ彼を知ったのかという理由も完璧だ。
そのトンマースガルリがアドリアーノの住む向かいの空き部屋を借り、ずっとアドリアーノを監視していることも教える。
当然その推理はでたらめだ。同時にアドリアーノがまだ嘘をついていることを察したフェラーラは、ラウラを殺したのもアドリアーノではないかと確信する。
つまりアドリアーノの「問題」は、ラウラ殺人とトンマースガルリの息子の殺人2件になったのだ。
フェラーラはついに本心を口に出す。
「大事なのは、自分だけ!」
それでもフェラーラは「私の仕事は無実にすること」と力強くいうが、視聴者は「これが裕福層の特権か」と胸糞悪くなる。
これが格差社会だと気分が悪くなる。
長時間の聞き取りでフェラーラは疲労した。同時にアドリアーノも披露していた。しかしフェラーラの問題は「時間」だった。
そもそもフェラーラが約束の時間よりかなり早く到着したのは、本物のフェラーラがやってくる前にすべてのすべてを知るためだった。
万年筆に仕込んだ盗聴器。
何故か向かいのトンマースガルリの部屋に行ったフェラーラ
わざとらしく顔のマスクをはがすと、そこにはトンマースガルリの妻の姿があった。
やがてピンポンが鳴りドアを開けるアドリアーノ
「はじめまして、パオロからの依頼で来ましたフェラーラです」
今世紀最大の復讐劇。
あらすじを書く以外何もできない。
面白かった。
素晴らしかった。