ひとくず

劇場公開日:

ひとくず

解説

「劇団テンアンツ」を主宰する俳優の上西雄大が監督、脚本、主演などを務め、児童虐待や育児放棄をテーマに描いたヒューマンドラマ。母親の恋人から虐待を受け、母親からは育児放棄されている少女・鞠。ガスも電気も止められた家に置き去りにされた彼女のもとに、ある日、さまざまな犯罪を繰り返してきた男・金田が空き巣に入る。幼いころに自身も虐待を受けていた金田は、鞠の姿にかつての自分を重ね、自分なりの方法で彼女を助けようと、鞠を虐待していた母親の恋人を殺してしまう。一方、鞠の母親である凜も、実は幼いころに虐待を受けて育ち、そのせいで子どもとの接し方がわからずにいた。金田と凜と鞠の3人は、不器用ながらも共に暮らし始め、やがて本物の家族のようになっていくが……。

2019年製作/117分/PG12/日本
配給:渋谷プロダクション
劇場公開日:2020年3月14日

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映画レビュー

4.0掃き溜めのアンチヒーロー

2021年2月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 空き巣に入った男が児童虐待の行われている家庭を救う。そう聞いただけだと、ちょっとしたファンタジーだと思う。現実には、そこまで踏み込んだ善行をする空き巣などいないだろうし、そんな干渉を受け入れる家庭も多分ない。
 こんな一見突飛な設定の物語だが、皮肉にも私たちが報道で目にする児童虐待の残酷な帰結が、少女鞠の存在や、凛や金田の生い立ちにこの上ないリアリティをもたらしている。

 確かに金田は常識に照らせば悪人だし、そんな彼が少女を救うという行動はファンタジックで、手段も非合法かも知れない。だが、現実で虐待を受けている子供の元には金田のような大人など現れず、合法的な救済の網の目からこぼれ落ちて亡くなる子が後を絶たない。ある意味そんな現実の方が狂っているとも言えないか?
 監督・脚本・主演を務めた上西雄大のそんな声が、映像の狭間から聞こえてくるような気がした。上西自身、3歳まで無戸籍で、虐待を受けて育ったという。彼は児童相談所の嘱託医から現在の児童虐待の現状、親から子への虐待の連鎖について聞いたことをきっかけに、本作を作り上げた。
 観に行く前は、テーマからしてただただ重たい一方の、見続けるのが辛くなるような内容ではないかという不安があった。確かに虐待が描写される場面は辛いが、合間合間で想定外にほっこりさせられたり、金田の言動がユーモラスに見えたりするシーンもあって、くじけずに物語を追っていくことが出来た。

 映画の作りとしては、自主制作映画のような荒削りな印象を受ける箇所が散見される。暗い場面で細部が潰れがちな荒い映像、時折台詞の聞き取りづらさが気になる音響。
 だが作品の世界に入ってしまえば、そういった演出がドキュメンタリーのような雰囲気を醸すのに一役買っているようにも見えてくる。エモーショナルな場面でちょっと大げさな劇伴が流れたり、所轄の刑事が人情派に傾きすぎていたのは演出が古く見えて少し違和感を覚えたが、作品が打ち出すメッセージの強さを毀損するほどのものではない。

 万が一虐待の影を身近に見聞きしたら、その影の向こうには鞠のような仕打ちを受けている子供がいるかも知れない。その仕打ちはもしかしたら悲しい連鎖をしてゆくかも知れない。そんな、予兆を他人事で終わらせず想像力を持つためのヒントを、この作品は提示している。
 このヒントに助けられて動き出した想像力が通報を始めとした勇気ある救いの手を生み、金田というアンチヒーローのいないこの現実世界の一隅で虐げられる子供たちが少しでも救われることを、私自身の無関心への自戒と共に願う。

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ニコ

4.0泥棒というヒーロー

2024年9月28日
iPhoneアプリから投稿

悲しい

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だいふく

4.0何もかも奪われた後に

2024年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

物語上原因と結果に不釣り合いがあることはどうしても腑に落ちない感覚を覚えてしまう。
それをやりすぎると、今度はしつこさが否めない。
この作品において、このバランス調整が若干難しかったと思わざるを得ない点が惜しかったところだ。
児童虐待はなくなることがない社会問題だが、なぜ救われないのかという点にフォーカスした作品。
「それを救える人物はどんな人だろう?」
主人公マサオの過去と現在の空き巣仕事がきっかけでこの物語が紡ぎだされる。
マサオがなぜアイスを食べないのかも説明される前にわかってしまう。
アイスは「許し」の象徴だ。
マサオは面会に来た母の差し入れがうれしかったに違いない。彼の人に対する変な言葉と威嚇するような言葉遣いは、やさしさのようなものの裏返しだ。
マサオは母の男を刺し殺した現場で、母が最後に見せた母としての責任を見た。それで納得した。彼にとってすでに許したのだから、もうアイスを食べる必要はなくなったのだ。
母のことが本気で嫌いなら、マリやリンにも母から聞かされたあの言葉を遣ったりしないだろう。
リンは自分も優しくされなかったので子供の接し方がわからないと感情をぶちまけたが、マサオが服役中にマサオの本心を理解したのだろう。
彼の母を探して出所時に迎えに来たのだ。この演出が最後のどんでん返しとなり同時にオチになるが、畳みかけるしつこさが否めない。
ヒロくんを殺害した報いは設定上必要かもしれないが、少し前のドラマがすでにしている。
決してつまらなくはなく、不自然さもないが、プロット構成の型が古いのだ。少し間違えてしまえば感涙ポルノになってしまう。基本的に見飽きることのない面白い作品だったが、この境界線をどうしても考えてしまう点が惜しかったところだ。

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R41

4.5邦画で初めての監督指名作品。新ディレクターズカット版を鑑賞。アイス食べたくなる映画。

2024年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

幸せ

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野球十兵衛、