ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男

劇場公開日:

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男

解説

環境汚染問題をめぐって1人の弁護士が十数年にもわたり巨大企業との闘いを繰り広げた実話を、環境保護の活動家という一面も持つマーク・ラファロの主演・プロデュース、「キャロル」のトッド・ヘインズ監督のメガホンで映画化。1998年、オハイオ州の名門法律事務所で働く企業弁護士ロブ・ビロットが受けた思いがけない調査依頼。それはウェストバージニア州の農場が、大手化学メーカー・デュポン社の工場からの廃棄物によって土地が汚され、190頭もの牛が病死したというものだった。ロブの調査により、デュポン社が発ガン性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、その物質を大気中や土壌に垂れ流し続けた疑いが判明する。ロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏み切るが、巨大企業を相手にする法廷闘争は、真実を追い求めるロブを窮地に陥れていく。ロブの妻役をアン・ハサウェイが演じるほか、ティム・ロビンス、ビル・プルマンらが顔をそろえる。

2019年製作/126分/G/アメリカ
原題または英題:Dark Waters
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2021年12月17日

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映画レビュー

4.0アメリカの資本主義の手強さ

2023年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

巨大企業の長年にわたる隠ぺいを執念で追求する弁護士の物語。大企業の顧問弁護士をやるような男が、片田舎の粗野な男の言うことにちょっと耳を傾けてみたらとんでもない不正が発覚していく。弁護士サイドは主人公のみならず同僚や上司も、色々な現実に直面しながらも、きちんと社会正義を実現しようという気概を持っているのがいい。しかしながら資本主義の巨人は本当に手ごわいんだなと実感する。主人公のモデルになった人物はいまだにこの訴訟を戦い続けているらしいが、アメリカという国は、本当に資本主義レースで勝てば官軍なんだなと実感させられる。マーク・ラファロがタフで諦めの悪い主人公弁護士を熱演している。ここでの彼は家族を危険にさらすことと社会正義のために戦うことに引き裂かれた一人の等身大の男にすぎない。彼にとってこの不正との出会いは人生を変えられてしまうような体験になっている。こういう人生の節目で見て見ぬふりをして現状維持を選んでしまわない、その選択と心の強さが映画の芯になっている。 こういう映画をトッド・ヘインズが監督したのは意外な感じがする。しかし、全体的にとてもよく演出されていて画面に集中させられた。

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杉本穂高

4.0デュポンの不正とテフロンの害に唖然! だが弁護士と映画人の良心に勇気づけられる

2021年12月18日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

知的

テフロン加工のフライパンを以前は当たり前に使っていた。テフロンがはげてきているのを使い続けるのは体に悪いというのは一応知っていたが、その有害性がまさかこれほどとは……。 この実録ドラマにおける“悪役”は、有機フッ素化合物の一種「テフロン」の特許を持ち、その製造過程で有害な物質が生じることを把握しながら、工場から40年も廃棄物を垂れ流して土地や川を汚染してきた米化学大手デュポン。名門法律事務所でもともとは企業側につく立場だった弁護士ビロットが、デュポンの工場の近くで農場を営む男性から牛の大量死を調査してくれと頼まれたことがきっかけで、巨大企業の恐るべき不正を知り、環境汚染と健康被害に苦しむ住民側につくことを決意。家族との時間を犠牲にし、自身の健康を顧みず、収入減にも直面しながら、十数年にもおよぶ不利な闘いを続けていく。 この訴訟を報道で知り、最初に映画化に向けて動き出したのが、ビロット役で主演を務めるマーク・ラファロだ。直接ビロットとコンタクトを取り、製作者の一人として脚本をマシュー・マイケル・カーナハン(「バーニング・オーシャン」)に依頼し、「キャロル」「ワンダーストラック」のトッド・ヘインズが監督を引き受けた。劇中、ビロットの上司(演じるのはティム・ロビンス)が「大企業の味方ばかりするから弁護士は嫌われるんだ。不正をしてきたデュポンを許すな!」と事務所の弁護士らを鼓舞する台詞があるが、これはきっとラファロたちスタッフとキャストの気持ちも代弁しているはずだ。 原題は「Dark Waters」だが、「水」の意味では不可算名詞のwaterにsが付いている点にも注目したい。「川」や「海」の意味で使われる場合は可算名詞になるので、つまり、この事件の舞台となったウェストバージニア州の川だけの問題にとどまらないことを訴えているのだと解釈できる。有機フッ素化合物は「永遠の化学物質」とも呼ばれ、分解されずに今や世界中の海に広がっていることがエンドロールの情報で示される。啓発と注意喚起の意義も大いに認められよう。 日本ではこうした大企業や国の不正を追及する実録ものはなかなか作られないが、邦画の作り手も本作にきっと刺激を受けるだろうし、そんな気骨のある邦画を期待する観客も増えることを願う。

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高森 郁哉

4.5マーク・ラファロの信念を見た

2021年12月15日
PCから投稿

本作のストーリー構造はオーソドックスだ。組織の不正を暴いたり、孤軍奮闘で正義を貫いたりーーーそんな類のものはすでに数多く見たよ、と言われればそれまでだが、しかし本作が何より秀でているのは、グッとテンションを抑えて、夜闇にほのかな光が浮かび上がるイメージを絶やさないところだろう。それは闇に立ち向かう唯一の希望のようであり、押し潰されそうになりながら決して諦めない主人公の心境をも投影しているかのようだ。マーク・ラファロ演じる弁護士は背中を丸め、冴えない男みたいに見える。そんな彼が見過ごせない事実に気づいた時、引き返せぬ一歩を踏み出す。時には上司にため息を吐かれながら、なぜ彼はこれほど身を捧げることができるのか。単なる告発モノにとどまらず、コミュニティや家族、それに宗教的なモチーフが挟み込まれているのも興味深いところ。製作を兼任しチームを率いたラファロ、カメラの前でも後でも最高にいい仕事をする。

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牛津厚信

4.0映画の持つ力を改めて感じさせてくれる。

2021年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ハリウッド映画のスターであり、実力派俳優のひとりであるマーク・ラファロが主演とプロデューサーを兼任して、全米を震撼させた実話に基づく衝撃の物語を映画化した。巨大企業との闘いを描いた内容のため、場合によってはスターの地位を失う危険性もありそうなもの。しかし、主人公の弁護士と同様に、不屈の精神で本作を製作したラファロの熱い思いが見る者の胸を打ち、映画の持つ力を改めて感じさせてくれる。 本作のコピーに「真実に光をあてるためにどれだけのものを失う覚悟があるのか―」とある。自らの大切なものを失うかもしれないことを覚悟して、巨大企業の隠ぺいを暴き、弱き者を救おうとすることは並大抵の信念ではないだろう。ラファロは、そんな弁護士ロブをヒーローや聖人として演じるのではなく、プレッシャーやストレスとも闘いながら、真実をひたむきに追及する生身の人間として感動的に演じ切っている。

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和田隆

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