わたしの叔父さん

劇場公開日:

わたしの叔父さん

解説

デンマークの農村を舞台に、体の不自由な叔父と一緒に家畜の世話をして生きてきた女性に訪れる人生の転機を、時にユーモアを交えながら美しい映像で描いたヒューマンドラマ。幼い頃に両親を亡くし、体の不自由な叔父と2人で暮らす27歳の女性クリスは、家業である酪農の仕事を手伝いながら日々を穏やかに淡々と過ごしている。そんな彼女には、獣医になるという夢があった。ある時、教会で出会った青年マイクからデートに誘われたクリスは、訪れる変化に戸惑いながらも胸のときめきを隠せない。将来の夢と恋に悩むクリスに気付いた叔父は、姪の幸せを静かに後押しするが……。2019年・第32回東京国際映画祭コンペティション部門で最高賞にあたる東京グランプリを受賞した。

2019年製作/110分/G/デンマーク
原題または英題:Onkel
配給:マジックアワー
劇場公開日:2021年1月29日

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(C)2019 88miles

映画レビュー

4.0反復と変化。そこに浮かび上がるユーモアと人間描写が素晴らしい

2020年12月31日
PCから投稿

また北欧から秀作が届いた。長年二人ぼっちで支え合ってきた叔父と姪。冒頭からしばらく台詞は無く、まるでサイレント映画を見ているかのように、わずかな表情と単調な身のこなしだけで、もう何年も変わりばえのない農場の暮らしが描かれていく。かくも丁寧に刻まれる反復。だが映画における反復とは、やがて生じるズレの予兆でもあることを私たちは知っている。果たして、父娘のような二人に訪れる転機とはーーー。互いの幸せを願うほど身動きが取れなくなっていく、この踏み出したいのに踏み出せない、もどかしい関係性の描写が実に素晴らしい。時に身を切るように切なく胸に迫るものの、かと思えば笑っちゃうくらい辛辣であり、それでいて優しく、愛おしい。この匙加減がなんとも絶妙だ。何より魅力的なのは、深刻なテーマを扱いながらも、仄かなユーモアが作品内に絶えず光を宿し続けるところ。彼らに幸せが訪れますようにと願わずにいられない作品である。

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牛津厚信

5.0旅立ちは順番。 人間は旅立たないといけない。 そして、それを送り出す人たちの物語。

2024年12月16日
Androidアプリから投稿

酪農は 本当に大変だと思う。 休めない。366日。1年中、24時間。 NHKの「ラジオ深夜便」に、たびたび投稿をなさる常連の「鳥取の若葉さん」。あの方も牛舎で作業をなさりながらラジオを聴いておられる。 「コーダ あいの歌」では、登場人物たちの生業は漁業だった。海が荒れて海に出られないと、そして不漁続きだと、漁師の生活は破綻する。生きていかれなくなる。 その「コーダ〜」の元になったオリジナルの映画は「エール!」だった。この「エール!」のオリジナルストーリーでは一家の仕事が「酪農」だったわけだ。 酪農業も、牛舎に出ないと牛が死ぬ。そして収入が絶たれる。飼い主も暮らしていけないから死ぬ。 有給休暇など皆無の、厳しい仕事だ。 きっと酪農家の人たちは、冠婚葬祭や急用の折には、お互いにヘルプをし合える同業の仲間を確保しているはずだ。 牛の世話は絶対に休めないからだ。 牛の世話。そして人間の介護。 どれもが繋がっている命綱の関係。 そして、本作を含めて、これらの作品の共通の悩みは 「休むわけにはいかないその家業の中で、しかも、欠けてはならない働き手が一人、抜けるかもしれない」 という四面楚歌の苦しいテーマだった。 ・・・・・・・・・・・・・ わが家の両親の事は、時々自分のメモとしてこのレビューでも触れているが、 老健で暮らしている。 息子たち三兄弟で、入れ替わり立ち替わり、特急と飛行機を乗り継いで面会に行っている僕らだ。 とりあえずは、昨春から素敵な「サ高住=サービス付き高齢者向け住宅」に父母揃って入所したので、安心はしているところだ。 衣食住の全てが、あのペンションのようなお部屋と +付帯施設で供される見守りのシステム。あの体制には、身障の老人が生きていくための、絶対的な安心感がある。 でも、 本人たちの感じている寂しさの「本心」の所在は分かっているから、三兄弟は間隔を開けずに連絡し合って、泊まりがけで親たちに会いに行くわけだ。 でも、 末の弟が兄たちに念を押すように言ったのだ。 両親のために最も心を砕き、奔走してくれた一番下の弟だ。 「兄ちゃんたちにしっかり言っておくけど、もうすぐ終わる人たちのために、まだ未来がある人間が自分に犠牲を背負い込む必要はないのだよ」 「でも‥」「でも‥」が頭の中いっぱいの毎日だ。 どうすることが一番なのか、悩む事で頭の中がいっぱいなのだ。 ・・・・・・・・・・・・・ 「わたしの叔父さん」 原題は「Uncle」。デンマーク映画。 身障者の叔父と、その姪の生活を見つめる映画。 「9分10秒」 映画の開始から流れる長い長い無言の時間。 スーパーマーケットで「ヌテラを」と叔父さんが口にするまでの、こんなに長い無言の時間が 9分10秒。 二人の生活。 ( ヌテラって、ココア味のヘーゼルナッツの、パン用スプレッドのこと )。 「12分05秒」 姪が初めて声を出すのが12分05秒のところだ。 ここまで二人の声が聞こえたのはたったの2回。 「ヌテラ」 「きらめき」 ボードゲームの単語探しで、姪が叔父にヒントをくれたその一言。 「24分40秒」 娘の名前がクリスティーネだとやっと分かる。 言葉無しだから、余計に二人の毎朝の様子を こちらもじっくりと見せてもらえて、とてもいい出だしだった。 腰は曲がっているが、今までよく働いてきたのだろう。大きな良い手を叔父さんは持っている。 なぜ姪っ子と二人暮らしなのだろうか。(それはおいおい判る)。 姪っ子はお喋りではないが、叔父さんとの暮らしを大切にしているようだ。 スマホなど一切いじらないで、叔父さんの横で本を読んでいる。 きっと毎日が、何の代わり映えもしないで、この繰り返しだったのだろう。 パンをトースターで焼き、ヌテラを塗り、シリアルを食べる。 台所やリビングには蝿がいて、この二人の生活が牧畜業に しかと根付いている=作り物でない=ことがちゃんと分かる。 二人が喋らないぶん、テレビのニュースの音声が、二人が生きている世界の情勢を、ちゃんと生身の物としてバックアップしている。 だから、 この世界の片隅で ・姪としてはこの叔父さんを世話し、 ・この老人の安全のために同居を守り抜くことが大切だった。 「旅立ち」など到底彼女の選択肢にはなかったんだけれど・・・ ・・・・・・・・・・・・・ 映画は、 「何かを言おうとしている二人の表情」を映して、 そこでフイルムは終り、暗転する。 小津ばりの 大変に素晴らしいラストだ。 そして、再びの長い無音のエンドタイトルが流れるから、 物語の続きは僕らが想像するしかないのだが。 ここからは僕の想像のストーリーだけれど、↓↓ きっとクリスティーネは出て行くし、 叔父さんはそれを後押しする決心をしたのだろう (と、僕は見る) 。 「でも‥」「でも‥」 生活の基本であった牛たちと、 最愛にしてかけがえのない叔父さん。 この二つを手放して、家を出ていく決心は 誰も彼女から奪えないはずだ。 旅立ちは順番。 人間は、あるものは死出の世界へ、そしてあるものは新しい恋の世界へ、 旅立たないといけない。 振り返る必要はない。 若者は生きるべきなのだ。 彼女は正解。 彼女の人生は正しい。 叔父さんがいつも寡黙だったのは、 じっと考えて、姪の「その時」を見極めるために、待っていてくれたからだろう。 助けられていたのはクリスティーネの側だったね。 クリスティーネのハートを聴診器で計っていたのは叔父さん。そして親身な獣医ヨハネスたちだった。 ・・そう想いたい。 見送る事も、老人たちの力になるのです。 ケツをまくれ、クリスティーネ! Tillykke. gå dit liv. ティリッキ ガダィリ おめでとう、あなたの人生を歩きなさいね。

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きりん

4.0静かな映画です

2024年6月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

音楽も無し。 そっけない映画。 主人公は冒頭で脇の手入れくらいするが、それ以外は“女性”としての生活を諦めている。 クリスとの出会いなど小波はあったが、叔父に寄り添う暮らしを結局は選択する。 「ノマドランド」に感じた印象を思い出した。 静かな決意をもって“負ける”事を選択する人々。 幸せは不幸と同じくらい不安なものだ。

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Ferma

4.5クリスと叔父さんは共依存の沼に首までどっぷり浸かっています。

2024年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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Giovanni