ペイン・アンド・グローリー

劇場公開日:

ペイン・アンド・グローリー

解説・あらすじ

スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが長年にわたってタッグを組んできたアントニオ・バンデラスを主演に迎え、自伝的要素を織り交ぜつつ描いた人間ドラマ。世界的な映画監督サルバドールは、脊椎の痛みから生きがいを見いだせなくなり、心身ともに疲れ果てていた。引退同然の生活を送る彼は、幼少時代と母親、その頃に移り住んだバレンシアの村での出来事、マドリッドでの恋と破局など、自身の過去を回想するように。そんな彼のもとに、32年前に手がけた作品の上映依頼が届く。思わぬ再会が、心を閉ざしていたサルバドールを過去へと翻らせていく。バンデラスが主人公の映画監督を繊細に演じ、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞。第92回アカデミー賞でも主演男優賞、国際長編映画賞にノミネートされた。アルモドバル作品のミューズ、ペネロペ・クルスが家族を明るく支える母親を演じる。

2019年製作/113分/R15+/スペイン
原題または英題:Dolor y gloria
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2020年6月19日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第92回 アカデミー賞(2020年)

ノミネート

主演男優賞 アントニオ・バンデラス
国際長編映画賞  

第77回 ゴールデングローブ賞(2020年)

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) アントニオ・バンデラス
最優秀外国語映画賞  

第72回 カンヌ国際映画祭(2019年)

受賞

コンペティション部門
男優賞 アントニオ・バンデラス

出品

コンペティション部門
出品作品 ペドロ・アルモドバル
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映画レビュー

4.0“人生を振り替えるお年頃”を肴にしたアルモドバルの万華鏡

2020年6月29日
PCから投稿

古くからの盟友A・バンデラスが演じる映画監督が、明らかにアルモドバルと同じ髪型をしていることからも、本作は自伝的作品と思われるだろう。実際、主人公のアパートは、アルモドバルが暮らしている住居で撮影されたという。

だとしたら、ある映画をきっかけに主人公と仲違いする人気俳優は、いったい誰がモデル? もしかして『アタメ』の頃のバンデラス? なんて深追いをしたくなるが、さすがはアルモドバル、簡単に謎が解けるような告白映画を撮ったりはしない。

いくつかの時代を振り返りながら人生の断片を俯瞰する構成がとりとめもないからこそ、余計にリアルに思えてしまうのも巧妙な引掛けに思えた。自分の人生をモチーフに、老境に差し掛かった感慨を描いてはいても、やはりこれは架空の世界であり、だからこそ純化されていて美しい。映画は現実に勝るのだ。

過去作でも使っていた手だが、メタな映画内映画で遊んでみせるあたりも、本当に映画作りを楽しんでいるのだなという気がする。

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村山章

4.0アルモドバルの最新作が観客を温かくもてなす理由

2020年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

知的

心身共に消耗し切っている映画監督が、過去に体験した切実で痛々しい恋愛や、愛してやまない母親への思いを再確認することで、再び創作意欲を取り戻していく。数ある職業の中でも、苦痛を創作の武器に換え、そこから作品を生み出せるのは、美術家か小説家、または、映画監督ぐらいではないだろうか。初の自伝とも言われる本作のために、作者のペドロ・アルモドバルは盟友のアントニオ・バンデラスに自身の分身と思しき主人公を演じさせ、自宅から所有しているアート(ギジェルモ・ペレス・ビジャルタの抽象画等)やインテリア(月の満ち欠けが楽しめるエクリッセ・ランプ等)や食器(エルメスのティーカップ等)を持ち出し、セットの中に自分が生きてきた時間と空間を見事に再構築している。稀代のアートコレクターとして知られるアルモドバルらしい舞台設定の下、語られる物語は、だからこそ観客を温かくもてなすのだろう。

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清藤秀人

4.0アルモドバル監督の自伝的作品としても、ある母と息子の物語としても見応えのある一作

2025年4月6日
PCから投稿

スペインを代表する映画監督、ペドロ・アルモドバル監督は、その独特の色彩・映像美と時に意表を突いた物語展開が多くの観客を引き付けていますが、同時に自らの母について映画を通じて繰り返し語ってきた作家でもあります。

『オール・アバウト・マイ・マザー』(1998)などの既存作品と同様、本作も一応アルモドバル監督が創造した舞台、登場人物が織りなす物語なのですが、主人公サルバドール(アントニオ・バンデラス)が半ば引退した高名な映画監督だったりと、明らかにアルモドバル監督の自伝的色合いの濃い作品です。

また本作の実質的なもう一人の主人公、サルバドールの母ハシンタ(ペネロペ・クルス/フリエタ・セラーノ)は、自らの人生を切り拓いていく強さのある人物として登場しており、これまでのアルモドバル作品に登場した女性像と重なり合う部分が多く、彼の作家像についての一つの答え合わせとなっている感がありました。

もちろんこれまでアルモドバル作品に触れる機会がなくとも、単体の映画作品として見ごたえのある作品です。

サルバドールの目を通じて描くハシンタの物語となっている点が本作の一つの要点で、母の強さに惹かれ、良い息子であろうとしたサルバドールが老いた母から投げかけられたある言葉に対して見せる表情。その驚きと苦しみの感情は、観客にも直接突き刺さってきます。

この鮮烈な感情表現は、長年アルモドバル監督と創作を共にしてきたアントニオ・バンデラスだからこそ成し得た演技でしょう!

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yui

3.0色彩はとても印象的だが、「ニュー・シネマ・パラダイス」は少々言い過ぎでは…

2024年11月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

名匠ペドロ・アルモドバル作品ということと、アントニオ・バンデラスが第92回アカデミー賞主演男優賞でノミネートされた作品ということで鑑賞。
予告編での「アルモドバル版ニュー・シネマ・パラダイス誕生」とのキャッチで期待値が必要以上に上がってしまったせいか、観終えた率直な感想としては正直いまひとつ。ニュー・シネマ・パラダイス感はさほど感じられなかったし、やたら抽象的な会話の連続でストーリーが展開していくあたりは何が言いたいのか何をしたかったのか、とにかく何が何だかよくわからない。恥ずかしながら、途中からは眠気のとの闘いになってしまった。
とはいえ、やっぱりスペイン映画らしく色彩はビビットでとてもきれいで良い。特にホワイトに塗りたくった洞窟の壁と、グリーンのレザージャケットはとても印象に残った。
もう少しペネロペ・クルスの出番が多ければ、ラテン感にも拍車がかかり観応えも出たのかも知れない。

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いけい

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