劇場公開日 2019年11月8日

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グレタ GRETA : 映画評論・批評

2019年10月29日更新

2019年11月8日よりTOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ新宿ほかにてロードショー

ゴシック・ホラーに極めて親和性が高い女優同士の、火花が散るような壮絶な闘争

モナリザ」(86)のナット・キング・コールが歌う同名の名曲、「クライング・ゲーム」(92)の開巻、マイケル・ボルトンが歌う「男が女を愛する時」と、ニール・ジョーダンの秀作ではどれも使われているスタンダード・ナンバーが忘れがたい印象を残す。「グレタ GRETA」も、やはり冒頭で、フランシス(クロエ・グレース・モレッツ)がニューヨークの地下鉄構内を浮遊するように歩く後ろ姿にハスキーなジュリー・ロンドンの「ホエア・アー・ユー」が流れてくると一気にロマンティックな気分に浸ってしまう。

しかし、映画は、そんな束の間の甘美な幻想を、すぐさま完膚なきまでに打ち砕いてしまうのである。地下鉄の座席で置き忘れたバッグを見つけた彼女は、持ち主である未亡人グレタ(イザベル・ユペール)に届けると、歓待される。母を亡くし、喪失感に囚われているフランシスと娘と離れて暮らすグレタは、あたかも孤独な魂同士が相寄るように親密な関係を結ぶことになる。

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いかにも軽薄そうなルームメイトのエリカ(マイカ・モンロー)の「あんたはガムみたいよ。すぐにくっつきたがるんだから」という忠告がおかしい。明らかに、二人がいびつな共依存関係にあることを直観的に見抜いているからだ。そして、映画もグレタの恐るべき性癖の秘密を知ったフランシスが絶交を宣言すると、急転直下、凶悪なストーカー・ホラーへと変貌するのだ。

フランシスに執拗にまとわりつくグレタはミヒャエル・ハネケクロード・シャブロルのサスペンス映画でユペールが演じた非情で冷酷なヒロインをすぐさま想起させる。だが、その氷のような無表情からは、うっすらと微妙なユーモアすら滲むのは名女優ゆえの余裕といえようか。

いっぽう、クロエ・グレース・モレッツにとってもフランシスは、リメイク版「キャリー」(13)で被虐から加虐に転じるヒロインを演じて以来、すでに自家薬籠中のキャラクターである。つまり現代劇でありつつ伝統的なゴシック・ホラーに極めて親和性が高い女優同士の火花が散るような壮絶な闘争こそが、この映画の最大の見どころなのである。

高崎俊夫

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