アスのレビュー・感想・評価
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「Under the Santa Cruz」
「旧約聖書 エレミヤ書 11章11節」と書かれた段ボールを抱えた男が過去、現代の物語の随所に出てくる。
エレミヤ書って、ユダへの裁きのメッセージだったよな?と思いつつ鑑賞。
鑑賞後、調べると11節にはかなりショッキングな主の言葉が記されているので、それをモチーフとしたと思われる。
狂信的な部分も垣間見えたので、「Under the Silver Lake」のダークパターンに突っ込んでいくかと思ったが、植木鋏、赤い服が印象的な視覚恐怖の世界に引き釣り込まれた。
訳の分からないモノに支配されていく世界感や、ワンダーランドである遊園地が舞台だったり、惨劇の舞台がサンタ・クルスだし、不穏な雰囲気が増して行くジョーダンワールドは健在。
あの、印象的なラストは解釈分かれるだろうな。
どうしてこうなった??
予告編の内容から踏み出した瞬間がこの映画最大の山場。そこから先は、、、
補足的説明が散見されるこの作品。本人(ジョーダン ピール)も脚本の穴は自覚してるはず。
次回作は他人の脚本で、ホラーに拘らずに一級品の演出を観せて欲しい。
持たざる者は赤くなる
『ゲットアウト』が大ヒットを飛ばした
コメディアン出身の監督兼脚本家
ジョーダン・ピールの新作スリラー。
...
『ゲットアウト』は黒人差別がテーマと思わせて
実は……というスマートなスリラーだったが
(レビュー書いてないが個人判定3.5くらい)、
今回は前作よりスケールも不条理性もアップ。
ガリガリと壊れたように喋る“裏”主人公
(1人2役のルピタ・ニョンゴが見事)
と、色々と壊れた“裏”家族たちが不気味。
手を繋いだ顔の見えない4人の姿や、いたぶる
ように淡々と主人公一家を責め立てる様が怖い。
エリザベス・モスの、作り物のような笑顔
のまま自分の顔を切り裂く様も気味悪かった。
ジャンプスケア(突然の出現や音でビビらす演出)
に安直に頼らず、場違いな表情や姿勢で異様さを
与えることで観客を恐怖させようとする演出も好み。
密室型のミニマムなスリラーかと思いきや、
舞台を次々変えながら展開していき、後半からは
終末SFスリラーみたいなスケールの話にシフト。
そのため全体的にちょっと散漫な印象は受けたが、
終盤の無機質で広大な地下空間やたくさんのウサギ、
バレエなど、奇妙に組み合わせた舞台やアイテムに
よって最後まで不条理な怖さが持続する。
...
『ゲットアウト』がテーマ性の高いスリラーだった
こともあり、今回のタイトル『Us』も初めから
額面通りの“Us(我々自身)”では無さそうだと
踏んで鑑賞していたが、果たして多分に含みを
持たせた内容だったと思う。
幸せな主人公一家VS不遇な侵略者一家。
本質的に全く同じ人間だとしても、育つ環境が
違えば人間としての性質は変わってくるはずで、
特に最初から入れ替えられていた主人公2人は
『劣悪な環境に置かれ続ければ出自がどうあれ
心が壊れてしまう/元から心が壊れていても
恵まれた環境で育てば人間性を取り戻せる』
ということを分かり易く示したものだろう。
“持たざる者”が“持つ者”に敵愾心を抱くのは世の常で、
おまけに“持つ者”が自分と姿形の似た人間ならば、
「私はこんなに不幸なのにどうしてお前だけ」
と真っ赤な憎悪を抱くのはなお不思議ではない。
一方、劣悪な地下世界とそこにいる自分自身の存在
を知りつつもその事実を忘れることで逃げ続けた
“表”の主人公は、自分の幸せを守るため、他者の
不幸を見て見ぬふりし続けていたということになる。
貧困層が抱く憎悪。
富裕層・中流層の無関心あるいは逃避。
『US』とは『これがUS(United States)
の現状だ』という主張なのかと思ったが、
日本に住む自分にも無縁な話でないのが悲しい。
自分の今の生活を守るのに手一杯で、他人の不幸
から目を背けたいと考えてしまう後ろめたさ。
また、映画の中で象徴的に描かれていた、
米西海岸から東海岸までをつなぐ赤い侵略者だが、
冒頭のアトラクションにでかでかと描かれた先住民
との連想から、『他者から奪うことで繋がってきた
国家』としてのUS(United States)という
イメージが浮かぶのは短絡的過ぎるかしら。
...
不条理なスリラーとして楽しませつつ、
「“地下層”の人々は我々と本質的に同じ人間だ、
人間同士助け合うのが真のUSじゃないのか?」
というメッセージも感じ取れる作品でした。
ただ、メッセージ性先行で考えながら
観ちゃったせいか、どうもスマートに
作り込まれ過ぎた映画と感じてしまい、
今一歩物語に入り込みきれなかった自分も
いる……(レビューにあんまり熱がこもって
ないと感じられたなら多分その辺が理由です)。
観て損ナシの作品だとは思います。3.5判定で。
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長い余談:
以下はレビュー後に見つけた、パンフレット
内の情報やその他関連しそうな情報の抜粋。
・映画冒頭で流れる『ハンズ・アクロス・アメリカ』
は、ホームレス等の社会的弱者を救済する目的で
実際に行われた慈善イベントだそうな。
15ドルを団体に支払って自分が立つ場所を指定
してもらい、集まった人々どうしで手を繋いで
米西海岸から東海岸までを繋ぐというもの。
結果的にラインは繋がらなかったそうだが、
『参加者が平均1.2m離れてルートに沿って広がって
いれば、48州で切れ目なくラインが完成したはず』
ともされているので結構な参加者はいたらしい。
集金額3400万ドル、運用コストを差っ引いて
実際に支給された額は1500万ドル。
映画の赤いラインは与える者ではなく奪う者が
形成したラインという皮肉になってた訳かしら。
・監督いわく、ウサギは『不思議の国のアリス』
からの地下のイメージとイースターエッグ
(救世主の復活=“裏”主人公)のイメージ
から来ているとのこと。
・監督いわく、ハサミは日常品/凶器の対比。
2つの部品で成り立つものという連想から。
・旧約聖書エレミヤ書11章11節は、
自分の信仰に背き続けたユダ王国の民に対して
「国を滅ぼすぞ」と激おこ状態の神様の言葉。
”それゆえ主はこう言われる
見よ、わたしは彼らに災いを下す
彼らはこれを逃れることはできない
わたしに助けを求めて叫んでも、
わたしはそれを聞き入れない”
エレミヤが広めようとしたその神の預言を
ユダ王国の人々は楽観視し続け、エレミヤを
非難したが、王国はその後、北方の国バビロニア
に征服され、多くの民がバビロニアに捕囚された
(バビロン捕囚)。
本作との関連は僕にはイマイチ読めないが、
『神の教えに従って善良に生きねばいずれ
国が滅ぶぞ』ということを言いたかったとかかね。
独特であり奥が深い
ごめんなさい。いまいち。
US=アメリカ
前作ゲット・アウトと比較してしまうのは仕方ないのですが、今回はいかんせん、結末は予想できてしまいます。
ある程度映画を観ている方なら、序盤で何となく想像がつくかと。
つまり、この映画はどんでん返しを楽しむ映画ではないのです。
自分と同じように見た目でありながら、明らかに人間離れした行動をし、目的は分からないのにニタニタと笑いながらハサミを持って襲ってくる。
得体の知れない理不尽な恐怖は、不穏な音楽と相まって素晴らしかったです。
相変わらず、観客の神経を逆撫でするのが上手(誉めてます)
物語が進むにつれ、監督が伝えようとする違和感の正体が分かり、それにゾッとします。
ホラーではなく、人間の本質の怖さであったことに気づきます。
アメリカという国が見て見ぬふりをしてきた部分。
映画では◯◯ですが、現実には貧困です。貧困層は、声を持たない。伝える術がなく、教育も受けられずに追いやられている。
そして、持てる者は、自分が脅かされると、途端に善人の化けの皮が剥がれ、相手を全力で叩き潰す。自分たちが加害者(=侵略者)である事実には目を伏せて。(終盤にその場面があります)
善人のように振る舞っていても、それは自分たちが常に優位だから。
それが脅かされれば、どんな手段でも使う。
それが、アメリカだと。
監督の痛烈なメッセージが込められていると感じました。
奇跡の家族
1986年サンタクルーズの遊園地で不思議な体験をしトラウマを抱えた少女が大人になり、家族4人で訪れた同地で再び恐怖に見舞われる話。
突然現れた自分達家族とそっくりな人物達によるプレッシャーはスリリングだし、ミステリアスだし、ホラーだし、そこそこ盛り上がるのだけれど、そこにはなぜ?どういうこと?という疑問がついて回る内容になっている。
正体とか状況の説明がされるとその設定はまあ良いとして、ご都合主義というか支離滅裂というか、だとしてもこの結果にならないよね?と、ストーリーの筋が通っていない感じ。
大オチも予想を超えてくる程ではないし、やはりだとしたら言ってることに矛盾があるし。
もうちょい練って設定つくるか、グチャグチャに入り乱れさせる展開だったらね。
ちなみに、前半でエレミヤ書11章11節が強調されているけど良くわからず、鑑賞後調べてみたけどやっぱりこのストーリーとの関係は良くわからず…一般的な人間社会のこと言ってるのか?
微妙でした。
2作目は残念でした。
中盤まではゾクゾク来た
2019-80
この現実離れした設定を受け入れられるかどうか。
『ゲット・アウト』の独特の怪しい雰囲気が好きだったので、結構前から本作を心待ちにしてました。
怪しい雰囲気は満ち溢れています。これが好きなんだよなぁ。
ただ冒頭に書いた通り、自分そっくりの赤ずくめの人間がいる理由が結構ぶっとんでるので、その説明を聞いて受け入れられるかで、評価は変わるような気がします。
そんなことある?、と思ってしまったら、ゲット・アウトしたくなるかも。
個人的にはぶっとんだ設定が腑に落ちたわけではないけど、アリっちゃアリかなぁと思ったのですが、だったらもっとシリアスな感じがよかったかなぁと。
ちょいちょい夫がボケ担当したりするのですが、それが笑いや絶望に感じるならいいとして、イライラしてしまう。
そうすると、別路線ホラーに感じてしまって。
ルピタ・ニョンゴってまだ30そこそこと思ってたので、こんな大きい娘のいる母ちゃん役かぁ🤔だったのですが、この人若々しいですね。
そりゃ、母ちゃんなら大丈夫ってなるわ(笑)
ルピタの演技力もすごいし、エリザベス・モスがすごかった。
設定が無理くり過ぎる^^;;;
金曜レイトショーは、コレ!
ゲット・アウトと同じく黒人俳優さんが、恐怖を演じると緊迫感も怖さも倍増@@!
ポスターからもそれは伝わりますよね。。。
瓜二つの別人ドッペルゲンガーってのは、幽霊や宇宙人よりリアルにいると思いますが・・・
ストーリー設定が、あまりもありえないB級感満載^^;;;;
しかし最後はmやっぱりそうやったんって衝撃の(°0° ;;)
秋の夜長〜おヒマならレイトショーかサービスデイ利用で、前情報なしに是非!
私達の恐怖と無自覚
「幽霊より怖いのは人間」、「他人より自分を知るべき」というよく言われているようなことが嫌味なく物語に練り込まれ、最初から最後まで楽しく(ビビりながら)鑑賞。
窮地を脱して行くほどに、逆に主人公家族の人間性が問われ、追い詰めていく意地悪な展開が最高。
コミュニケーションを図るとき、誰もが相手を必要とする。
その相手は、一般的には「他人」と呼ばれる。
その「他人」が「自分」だったら?
その「自分」が牙を向いて向かってきて、自分が「自分」を打ちのめしたとき、自分の中にいるもう一人の自分がやったという言い訳すら許されない。
だって、もう一人の自分は目の前に倒れているのだから。
私がやったのだから。
やったのは、私自身なのだから。
それ故に本作は「us(私達)」なのだ。
本作は純粋なホラー映画として十分に楽しめるが、現在の社会情勢に対する監督の憂慮が随所から伝わってきて、私にはそれを無視することができなかった。
それは侵入者の「私達」家族が何者であるのかを問われた際の返答に顕著に表れている。
本作はアメリカにとっては移民問題であり、全世界的な排他的な潮流を投影している。
自分が声高に非難する相手は「自分」であり、その「自分」を排除した自分は何者でもなくなる、もしくは怪物に成り果てるというメッセージではないかと感じた。
人類皆兄弟なんて青臭い博愛主義にしか聞こえないかもしれないが、そんなことをあえて問い直さないといけない状態なんだという監督の強い危機感なのではないかと思う。
自分に牙を向く相手にどう対処するか。
本作は黙って耐えることは要求しない。
ただ自分の言動の攻撃性に無自覚な者は相手と全く同質であるし、相手を打ち負かしても自分すら残らない。
本作には序盤から自分の攻撃性に自覚的な登場人物が一人だけいた。
だがその人物の最期の表情に監督の憂慮が透けて見える。
まだまだ語り尽くせない。
これが監督の力量、この映画の力なんだと思う。
アメリカでは大ヒットだったが・・・
日本ではこの手のジャンルは客が入らないのだろうか、
日本公開がかなり遅かったし、公開初日にも関わらず都内シネコンでの客入りは寂しかった。
ジョーダン・ピール監督は前作「ゲット・アウト」で黒人青年の恐怖を描きました。社会問題とホラー映画とを結びつけたその巧みなシナリオで、見事アカデミー脚本賞を受賞しました。
本作「アス」では何を描いたのかというと、多分貧困問題だと思います。
1986年で始まるこの映画。当時アメリカでは「Hands Across America」という慈善運動"貧しい人たちを救う寄付を集めるためにアメリカ人みんなが手をつないで西海岸から東海岸まで手をつないで1列に並びまょうという運動"がありました。その当時の映像の引用から始まります。
この映画を見ていくと、登場人物は比較的裕福な人達なんだということがわかる。
そして、本編中では旧約聖書のエミリア書第11章11節の一節が引用されます。そこにはこう書いてあります。
"それゆえ主はこう言われる、見よ、わたしは災を彼らの上に下す。彼らはそれを免れることはできない。彼らがわたしを呼んでも、わたしは聞かない。"
※Wikipediaより抜粋
富裕層の人達が自分の地位や生活を奪われる恐怖
と、
ドッペルゲンガーなどのホラー映画お決まりの記号的演出を組み合わせたまさにジョーダン・ピール監督らしい作品だと思う。
まさに神の裁きだと言わんばかりの意味深な演出も嫌な感じ出てるし、人里離れた場所で感じる嫌な感じ、寂れた遊園地の不気味さ、潜在的に感じる恐怖を呼び覚ましてくれるような演出がよかった。
私は大好物だ。
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