暁に祈れ

劇場公開日:2018年12月8日

暁に祈れ

解説・あらすじ

タイの刑務所に服役し、ムエタイでのし上がることに成功したイギリス人ボクサー、ビリー・ムーアの自伝小説を映画化したアクションドラマ。タイで自堕落な生活から麻薬中毒者となってしまったイギリス人ボクサーのビリー・ムーアは、家宅捜索により逮捕され、タイでも悪名の高い刑務所に収監される。殺人、レイプ、汚職がはびこる地獄のよう刑務所で、ビリーは死を覚悟する日々を余儀なくされた。しかし、所内に新たに設立されたムエタイ・クラブとの出会いによって、ビリーの中にある何かが大きく変わっていく。「グリーンルーム」のジョー・コールが主人公ビリー役を演じる。監督は「ジョニー・マッド・ドッグ」のジャン=ステファーヌ・ソベール。

2017年製作/117分/R15+/イギリス・フランス合作
原題または英題:A Prayer Before Dawn
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2018年12月8日

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(C)2017 - Meridian Entertainment - Senorita Films SAS

映画レビュー

5.0 地獄の中の希望

2018年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

とんでもないものを見せてくれる作品だ。タイの刑務所は地獄のようだと本で読んだことはあったが、ここまですごいとは。

ジャン=ステファーヌ・ソベール監督のリアリティへのこだわりによって、撮影場所は元刑務所の建物で、囚人役も元囚人たち。なかには殺人を犯したものを混じっているらしい。刑務所内で暴行も殺人もクスリも当たり前、周囲のどこを見渡しても希望のない世界で、主人公のビリーは殴り合いの世界「ムエタイ」に光を見出す。ムエタイは神聖な競技だ。ワイクルーとという、神に祈りを捧げる踊りを試合前に行う。一方で賭博の対象になっていたりもするし、貧困から抜け出すことを夢見る少年たちが身を投じる世界でもある。

暴力が支配する地獄の刑務所で見つけた希望が、格闘技という殴り合いだったことは、主人公はどこまでいっても暴力から逃れることができないことを示唆していかもしれない。それでも生きる意思の強さが胸を打つ。

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杉本穂高

5.0 暗闇の中に差す一点の光

2018年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

怖い

常時主人公に至近距離で張り付いたハンディカメラが、暴力と賄賂が渦巻く刑務所内をぐるぐる回り続けて、閉塞感を通り越した一種の快感を呼び覚ましていく。1カット1テイクを再編集して構成したという映画のフォーマットが、まさか、こんな効果をもたらそうとは!?そして、麻薬所持で逮捕、投獄されたイギリス人ボクサーを取り囲む、褐色の肌にどす黒いタトゥを入れたタイ人収監者たちの殺気が、これほどまでに観る側を震撼させるとは!?字幕スーパーでカバーされない意味不明のタイ語が、さらに戦慄を増幅させる。数ある刑務所映画の中でも、暴力と孤独を克明に描いたという意味で、これを超える作品を今は思いつかない。主人公が救済へと手がかりを見つけるまでの約2時間は、しかし、不思議な心地よさを与えてもくれる。それを表現するとしたら、暗闇の中から光が差し始める瞬間を待つ、祈りの時間とでも言おうか。個人的に、今年のベストワンと断言できる1作だ。

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清藤秀人

4.0 【タイの地獄の様な極悪人のみが叩き込まれる刑務所を、ムエタイの技で生き残った男の実話。刑務所内のリアリティ感や極悪な囚人たちの前身の刺青やタイならではの男色シーンなど、強烈に覚えている作品。】

2025年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

幸せ

■タイで麻薬中毒になったイギリス人ボクサー、ビリー・ムーアは、闇社会で行われるボクシングの試合に参加するようになる。
 ファイトマネーは全てドラッグに消える堕落した日々を送るなか、彼は警察の家宅捜査を受けて逮捕され、タイの極悪人が収容されている刑務所に収監されてしまう。

◆感想

・どうやって撮影したのか分からないが、タイの刑務所の囚人たちの姿が凄い。全身刺青。凄い入れ歯。
 厳しい刑務所内ヒエラルキーの数々・・。

・ビリー・ムーアは何度も犯されそうになりながら、必死に生き延びていくのである。

・そして、元々実力のあったムエタイで、刑務所内で地位を築いていく過程が凄かった作品である。
 確か、囚人たちは実際の元囚人を使っていた記憶があるなあ。
 パンフレットも買ったけれども、探す気力ないなあ・・。

<今作を鑑賞してから”微笑みの国タイ”の暗黒を知り、出張時にハシシは勿論、ヤバい地域には一切行かなくなったきっかけになった作品である。>

<2017年12月 名古屋伏見ミリオン座で鑑賞>

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NOBU

未評価 剥き出しの血と肉

2025年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 新年早々、きっつい映画のご紹介です。でも、この禍々しさに捉えられたら忘れる事ができなくなってしまいます。まず、このタイトルがカッコよくて惹かれるのですが、その実は恐ろしい、恐ろしい。

 イギリスから来てタイでムエタイ・ボクサーとして闘うビリーは、ヤク中の闇に落ち、やがて警察に踏み込まれて直ちに監獄に放り込まれます。そこは、西欧的な常識など一切通用しない地獄の様な場所だったという、なんと実話に基づくお話です。

 刑務所が舞台の映画ですから、囚人や刑務官をはじめ沢山の人物が登場し、大量の言葉が行き交います。ところが、スクリーンに現れる字幕はごくごく僅かだけなのです。つまり、タイ語を殆ど話せないビリーにとっては囚人らの言葉は単なる音声に過ぎず意味を持ったコミュニケーション・ツールではないのです。彼のその当惑と恐怖を観客である我々も字幕のない映画で共有する事になります。この演出がとても巧みです。

 「この男は何を怒ってるんだ?」

と言う事を表情だけから読み取らねばならず、知らず知らずの内にスクリーンに集中してしまいます。怒号が飛び交う場面の連続なのに、意味のある言葉がないという意味で非常に静寂な映画なのです。

 そして、この刑務所、囚人と云うのが強烈です。実際のタイの刑務所跡を利用し、元囚人達を起用しての撮影なので、日本のヤクザ映画とは格の違う本物の狂気なのです。

 体だけでなく顔面までも刺青で埋め尽くした男からは、

 「こいつ、本当に人を一人や二人は殺しているな」

という不吉なオーラがヌラヌラと放たれています。もう、おしっこちびりそうです。

 刑務所内では、暴力や恫喝は勿論、殺人や男同士のレイプまでもが冷えたタッチで次々と描かれます。刑務官への賄賂も当たり前で、彼ら自身が所内で汚い金儲けに手を染めています。全く、「出口なし」の地獄絵図なのです。

 そんな中、ビリーは所内の囚人ムエタイ・チームに入る事で活路を見出そうとします。そして、終盤にはやはりお決まりのリングでの格闘シーンを迎えます。しかし、そこには『ロッキー』や『クリード』の様な熱い高揚、勝利の栄光など一切ありません。荒々しい手持ちのカメラで描かれるのは、やはり粗雑な荒々しさに過ぎないのです。観ている者がカタルシスを感じる事も全くありません。でも、これはこれで凄い!

 何より、これが実話であると言う事に唖然とさせられます。

 『バッド・ジーニアス』が現代のタイであるならば、『暁に祈れ』もまたタイなのです。

 生ぬるいお正月のテレビでだれてしまった心に喝を入れるには最適の映画はじめになるのではないでしょうか。お勧めです。

  (2019/01/02 鑑賞)

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La Strada