37セカンズ

劇場公開日:

37セカンズ

解説

出生時に37秒間呼吸ができなかったために、手足が自由に動かない身体になってしまった女性の自己発見と成長を描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で観客賞とCICAEアートシネマ賞を受賞した人間ドラマ。脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ)は、異常なほどに過保護な母親のもとで車椅子生活を送りながら、漫画家のゴーストライターとして空想の世界を描き続けていた。自立するためアダルト漫画の執筆を望むユマだったが、リアルな性体験がないと良い漫画は描けないと言われてしまう。ユマの新しい友人で障がい者専門の娼婦である舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それを知ったユマの母親が激怒してしまい……。主人公のユマと同じく出生時に数秒間呼吸が止まったことによる脳性麻痺を抱えながらも社会福祉士として活動していた佳山明が、オーディションで見いだされ主演に抜てき。母親役を神野三鈴、主人公の挑戦を支えるヘルパー・俊哉役を大東駿介、友人・舞役を渡辺真起子がそれぞれ演じる。ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARI監督の長編デビュー作。

2019年製作/115分/PG12/日本・アメリカ合作
配給:エレファントハウス
劇場公開日:2020年2月7日

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(C)37Seconds filmpartners

映画レビュー

5.0アウトサイダーが偏見も因習も忖度もぶっ飛ばし、隠されがちな存在を可視化する

2020年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

楽しい

幸せ

革命は辺境より来たる。むかし歴史で習った言葉を思い出した。

本作は多くのアウトサイダーたち(マイノリティーと言い換えてもいい)が関わって生まれ、世に送り出された。若くして単身渡米し人生模索ののち、30歳で映画監督を志したHIKARI。脳性麻痺を抱えながら社会福祉士として働き、演技未経験ながら、ヌードや性的な場面もあるユマ役をオーディションで勝ち取った佳山明。脚本には佳山自身の人生や家族の要素に加え、障害者の性に関する支援をする介護士、野良猫のように何にも縛られず介護支援を行う「のらヘルパー」らとの出会いも反映されたという。常識や前例や同調圧力にとわられずに生きる彼女ら、彼らだからこそ、障害を持つ女性が勇気を出して人生の冒険に踏み出すストーリーを、普遍の成長物語に昇華できたのだろう。

始まってものの5分で心を鷲掴みにされる。4Kの映像は美麗で、時に残酷だ。日本社会では不可視の存在とされがちな障害者の、性的な要素を含む生活と内面に光を当てた功績は大きい。この傑作が偏見や差別を減らす力になると強く信じる。

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高森 郁哉

4.0心に刺さる映画。自分自身のことを見直せる。

2024年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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共感した! 4件)
しの@福井

4.0何にも代えがたい成長の物語

2024年1月9日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
「ただいま」
「おかえり」

常に心のどこかでは「運命の37秒間」についてのわだかまりを負っていたらしい彼女が、自身のその「わだかまり」を乗り越えて成長した物語ー。
そう評したら、ピントがボケているでしょうか。本作の評としては。
上掲の映画のことばは、凡庸なセリフですけれども。
精神的には大きく成長して帰宅したユマと、それを安心して受け入れる母親との会話として、本作の中では、取り上げるに足りる十分な重さが含まれていたと思います。評論子は。

そして、(もちろん女性である)彼女の成長には、いろいろな立場の同性が関わっていたことが、大きな要素であったことは、疑いがありません。アダルト系のマンガ週刊誌の編集長をしている藤本さん、夜の大人の世界を自由に生きている舞さん、そして(反面教師としてなのですが)ユマのお母さんと、親友(?)とは言いつつ、ユマをゴーストライターとしていわば搾取していたアヤカ。

後記のとおり、胸に痛い一本でもあるのですが、それぞれの立場の女性の、それぞれの関わりが、ユマを育んでいくプロセスに、じんわりと心が温まる一本でもありました。

後記した「追記」の点も踏まえると、秀作評して誤りのない一本と思います。評論子は。

(追記)
作品の中には直接的な描写は何もないので、飽くまでも評論子の推測なのですけれども。
お母さんには、ずっと自責の念があったのだと思いまし。ユマを産んだ本人として。
その自責の念が、ユマをして「超過保護」と言わしめるほどまでお母さんは自分自身を追い込んでしてしまっていましたし、お父さんが由香を連れて家を出たのも、彼女のその自責ぶりの重苦しさに耐えかねたからではないでしょうか。

ユマのほか由香まで、そんな重苦しい環境下で成長させることが憚られたから。
お父さんとしては、本当はユマも連れて出たかったはずですが、お母さんが(その自責の念から)ユマを放さなかったー。
そして、今度は、ユマを連れ出すことができなかったお父さんの自責の念が、自身の寿命を縮めてしまう結果となってしまったとまで憶測したら、それは評論子の勝手な推測でしょうか。

たまたま37秒間の不幸な事象がユマの身の上に起きてしまっただけで、誰が悪いわけでもないのに…、
この胸の痛さは、どうしたら良いものでしょうか。

(追々記)
車イスを駆って、自在に動き回り、その点には不自由のないようでしたけれども。
ちょっとしたことで、やっぱり介添者が必要であることには、改めて思いが至りました。
自分の足で歩くことができることの幸いも、改めて噛みしめます。

(追々々記)
イ・チャンドン監督の『オアシス』が、かなり強烈な一本だった評論子でしたけれども。
本作は、「脳ミソを破壊するくらいの威力で、一括りにはできない個人を描く」という、映画comレビュアー・グレシャムの法則さんの評に衝き動かされて観ることにしたものでした。
本作がその評に寸分も違(たが)わない秀作であったことは、前記のとおりです。
鋭い評を通じて評論子の食指を動かして、良作に巡り合わせて下さったグレシャムの法則さんに、厚く感謝いたします。
末筆ながら、ハンドルネーム記して、お礼に代えたいと思います。

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talkie

4.0優しい人は助けてくれる

2024年1月1日
PCから投稿
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