劇場公開日 2020年2月7日

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「アウトサイダーが偏見も因習も忖度もぶっ飛ばし、隠されがちな存在を可視化する」37セカンズ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0アウトサイダーが偏見も因習も忖度もぶっ飛ばし、隠されがちな存在を可視化する

2020年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

楽しい

幸せ

革命は辺境より来たる。むかし歴史で習った言葉を思い出した。

本作は多くのアウトサイダーたち(マイノリティーと言い換えてもいい)が関わって生まれ、世に送り出された。若くして単身渡米し人生模索ののち、30歳で映画監督を志したHIKARI。脳性麻痺を抱えながら社会福祉士として働き、演技未経験ながら、ヌードや性的な場面もあるユマ役をオーディションで勝ち取った佳山明。脚本には佳山自身の人生や家族の要素に加え、障害者の性に関する支援をする介護士、野良猫のように何にも縛られず介護支援を行う「のらヘルパー」らとの出会いも反映されたという。常識や前例や同調圧力にとわられずに生きる彼女ら、彼らだからこそ、障害を持つ女性が勇気を出して人生の冒険に踏み出すストーリーを、普遍の成長物語に昇華できたのだろう。

始まってものの5分で心を鷲掴みにされる。4Kの映像は美麗で、時に残酷だ。日本社会では不可視の存在とされがちな障害者の、性的な要素を含む生活と内面に光を当てた功績は大きい。この傑作が偏見や差別を減らす力になると強く信じる。

高森 郁哉
マサシさんのコメント
2023年3月1日

共感します。しかし、同じ様な経歴の持ち主の『PLAN75』の監督と同様の評価なのが、納得出来ません。180°違うと僕は思いますが。この映画の関しては、貴殿の解釈に大賛成です。差別や同情に毅然と立ち向かう経緯をきちんと分析されていると僕は感じました。

マサシ