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近未来を舞台にしたオムニバス。
三本とも環境や身の回りの「近未来感」は最小限に抑えられていて、申し訳程度のその要素が浮いて見えた。
ネオン光らせとけば未来感出るわけではないでしょう、と思いつつネオン大好きなのでキュンとしてしまう…。
『失敗人間ヒトシジュニア』
テンションと映像表現は一番好きだけど、ストーリーに上手く乗りきれず。
自分がクローンだと知らされた時のショックやクローンに対する一般人の生理的反応に傷付き、政府の非人道的な対応を考えると相当苦しい。
ただなぜ20歳まで普通に育てるのか、そもそも子供の代わりのようにクローンを作るメリットがあまり伝わって来ず、細かい部分が引っかかってしまった。
ライトセーバー的なナイフ欲しい。
ヒトシジュニアとハッピーの取った行動に対する元親の反応は好き。
しかしなぜその後ほっといて行けるのか。
結局人間のクローンへの意識は変わらないのか、悲しいな。
心の声はガンガン大きいのにセリフやバックミュージックが小さいのが地味に気になって仕方なかった。
『リンデン・バウム・ダンス』
映像の美しさはピカイチだけど、それが逆にあざとく感じてしまい途中までかなり印象が良くなかった作品。
SUMIREの個性と美しさはよく分かるけど彼女のポートフォリオが観たいわけじゃない、と思っていた。
結果的に一番好きな作品。
AIの管理する延命治療で置き物のようになってしまった祖母と、祖母を置いて回る日常の寂しさ。
夢の中の赤いワンピースの少女が祖母だと分かった時からブワッと鳥肌が立ちっぱなしだった。
私自身がかなりおばあちゃんっ子(プラスおじいちゃんっ子)なので、もし5年後、10年後、20年後、寝たきりになってしまったら…と考えるともうダメだった。祖父母に限らず少ない家族誰にも当てはめても。
というか自分がこうなる可能性だって大きい。
自分と同年代の祖母と友達になれたら楽しいだろうな、祖父はめちゃくちゃイケメンだから好きになってしまいそうだな、何を話そう、何をして遊ぼう、なんてあれこれ考えて想像して終盤ずっと泣いていた。
最後の草原に白いノースリーブのワンピースを着た美少女二人。
またあざといカットだけど、夢の内容と現実の行動が示唆するラストに捻りが効いてて面白い。
石鹸を溶かして固めたんだろうか。
AIなんかに決められるよりずっとずっと良いはずだから。
『SIN』
ストーリー自体のSF感が一番強い。
話としても起承転結はっきりしていて分かりやすく、観やすい作品。
親を選べない子供は幸せになれないのか。
脳波テストで本人の未来の性格がわかるならまだしも、完全なる未来の予言だったのが少し違和感。
気になる点はあれど未来に抗う王道の展開で面白かった。
力づくの行動や発作のような暴力に流れず、「大丈夫だから、せめて一緒にいようよ」の言葉を使えたことが嬉しい。
施設のおじさんとアマの対比に切なくなる。
もしあのとき違う選択をしていたら…という、よく思いがちなことを引きずってしまう。
三本とも共通して、自分と現実世界に置き換えてこの先の未来を考えさせられる。
正直作品自体に強い魅力は感じられなかったけど、全ての人に平等に訪れる時間の経過とその先の老いを思って感情が動き、結果なかなか良い映画体験だった。