ビューティフル・ボーイのレビュー・感想・評価
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作品を彩るあらゆる要素が、光り輝くエモーションを紡ぎ出していく
ドラッグ依存に陥った息子を救おうと全力を尽くす親。その立ち位置そのものには目新しさを感じないし、そこから発展する余地があるのか疑問符さえ浮かぶ。だがこの映画はタイトル通りの透明感と飛翔感によって限界の壁を軽やかに突破していくのだ。
現実の一点を見つめるのみならず、そこに過去の記憶を散りばめたり、時系列を少しずらすことでストーリーに緩急をつける。そして柔らかな肌触りを大切にしながら、暗闇の中の輝きを際立たせる。かくも希望や光を失わずに前に進むことこそ、親子の歩むべき道なのだとということを痛いほど突きつけられる。
カレル&シャラメの演技もさることながら、彼らを包み込む風、木々、光、水、音楽、詩といったものこそ、空気感を成す欠かせない要素だ。その中央にeverythingという言葉があり、すべてを受け入れる愛がある。こんな絶妙なニュアンスを表現し得たベルギー生まれの監督にも賞賛を送りたい。
親子の“分かり合えなさ”の普遍性
薬物依存の問題を真正面から描く、なかなかにヘビーな映画ではある。依存症に苦しんだ若者の手記と、その父親の手記、それぞれの視点を原作から引き継ぎ1本の脚本にに紡ぎ合わせたのも新味と言えるだろう。だがいかんせん、何らかの依存症に深くはまった人かその身内でもない限り、この話をストレートに自らへ引き寄せて共感することは難しい。でも視点を変えて、親の心子知らずと言うように、家族の相互理解の困難さを扱う作品と考えてはどうだろう。こんなに苦しいのに親に分かってもらえない、愛する家族を助けたいのに思いが通じない…そんな普遍的な体験を象徴する話ととらえるなら、共感できるかも。
もともと気が滅入る筋に、不穏なBGMが流れてさらに心が重くなるが、タイトルになったジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」が対照的に優しく美しい。だがジョンも家ではDV親父だったという逸話を知ると、この曲も一層複雑に響いてくる。
人は個々の空間で生きる孤独な生き物
なぜ、人は覚醒剤にはまるのか?当事者でない限り、否、当事者すら意識していないちょっとした気の緩み、好奇心、自分への甘さから、代償が大きすぎる依存へと堕ちていくプロセスを、ティモシー・シャラメがその筋肉のない、細い身体で演じている。彼の薄い胸と、小さなウエストが主人公の心理と健康状態を如実に表現していて、とても痛々しい。我々の生活の中でも、すぐそこまで迫っている覚醒剤中毒の恐怖が、若手随一の人気俳優の肉体を介して伝わって来る、これは必見の作品だと思う。そして、最愛の息子が別人に変貌していくのを、ただ見守るしかない親の視点で眺めると、何と人は個々の空間で生きる孤独な生き物であるかという厳しい現実が、胸に突き刺さる。名曲の"ビューティフル・ボーイ"がここまで皮肉めいて聞こえるなんて、思ってもみなかった。
ヤクで成長
一定期間、鎖かなにかで繋いでおきゃいいのに。とは思う。
人道的ではないが嘘ついてでも裏切ってでもなんとしてでもやるのがアディクトであるなら繋いでおくのが確実でしょうに。
──と思ってしまう薬物依存の様子を描いている。
息子のニック(シャラメ)はリハビリ施設に入っては脱出し、クリーンになったと思えばまたやりだし、父デヴィッド(カレル)は信じては裏切られを、幾度となく繰り返してきた。
デヴィッドは離婚しており再婚相手がいるが家庭は裕福。
新しい母はアーティストで、義弟妹となるちびたちは天使のよう(弟はSweet Toothだよ)で、邸宅は趣味がよく、豊かな自然に囲まれている。
ニックは父母からも義母からも愛され、演じているのは美しいシャラメ。
端から見ると彼がドラッグへはしらなければならない生活環境上の欠損はひとつもない。
The Smashing PumpkinsにTryTryTryという曲があってMVをよく覚えている。
末路はあんな感じなんだろうと思うが、映画はきれいな絵面で構成されている。
編集過多で、時間軸がズタズタと言っていいほど交錯する。
素直だった幼少期と、救いようのないアディクトになった現在が絡まり、父の苦悩を体感することができる。
シャラメは演技がじょうずでがん決まりのハイになったところも真に迫っている。
きれいで線が細い人だがイケメンをかなぐり捨てて踏み込んでくる。
父役は最初からカレルだったがニック役は当初Will Poulterが予定されていたそうだ。が、200以上のオーディションリールから最終的にシャラメに決まったとのこと。
薬中を体現するのにシャラメの痩身が活かされているが撮影は過酷でwikiに以下のような激白があった。
シャラメは入院シーンの撮影の数週間前に減量するよう指示され、その後、残りの撮影をこなすために休養して回復した。シャラメは、撮影中に何度も医師の診察と危機一髪があったことを明かし、「心は演技をしているとわかっている。でも、体重が20キロも落ちて、Tシャツ姿で8テイクも雨の下にいたら......身体は演技をしていることに気づかないんだ」
同監督で、英The Eight Mountains、伊Le otto montagne、邦帰れない山(2022)という映画があって個人的にすごく感動した。まっとうでむりがなくて音楽も編集も撮影も絵のセンスもいい。そして普遍性のある父子の葛藤をすくいとっている。これもそうだった。状況はぜんぜん違っても描かれる家族には根底で共感できるものがあると思う。
実話で、父デヴィッド・シェフが書いた本と、息子ニック・シェフが書いた本を組み合わせて脚本を構築したとのこと。
映画では省略されているが、ニックは異性愛者だが薬代をかせぐためゲイのハスラーをやっていたそうだ。
薬物依存症のリアルが描かれている
ティモシー見たさに軽い気持ちで観初めてしまったが、テーマは薬物依存症の息子とその家族(主に父との関係)の葛藤の物語。思ったより重かった。
継母が泣きながらニックを車で追いかけるシーンから最後までは涙無くしては見られなかった。
最初はどうしてもデイビット役のスティーブ・カレルが「The Office」のマイケル役のイメージが強すぎて、シリアスな役所に違和感を感じてしまったのだけど、観ているうちにそんな違和感も無くなった。こう言う役もこなすんだね。
一つ引っかかるのが、どうして薬物に手を出してしまったのかと言う動機の部分があまり描かれていなくて、そこが気になってしょうがなかった。あんないい家族に囲まれて育ったはずなのに、何がニックを薬物依存にまで追いやってしまったのか、そこの描写をもっと入れて欲しかったなぁ。
思ったよりも断然重い
家族愛により愛息が薬物中毒をスッキリ克服できた話、というだけでは全然済まされなかった。家族愛っていいよね、と簡単にハッピーエンドでは終わらせてもらえない展開。これが薬物依存症の現実なのだろうか。
とはいえ、本来終始暗い映像の連続になりがちなところを、常にきれいな景色が中和してくれて、最後まで前向きに鑑賞できた。特に窓から見える景色は、日常ながらも強い息吹を感じる。
ラスト父息子が寄り添いながら薄暗い病院の廊下から光差す庭に踏み出すシーンは、彼らの未来が希望の光に包まれたようで、観ていて希望的観測ありきだが結構救われた。
薬物の闇
自分がその親ならという気分で見てましたが、あそこまでの対応は自分の子とはいえできる自信はないです。
50代以下の死亡要因の一位が、過剰摂取とはしりませんでした。
それほど、薬物の闇は深いと改めて思いました。
薬物には近寄らないと決心させられた作品です。
息子を見てるようで胸が痛んだ
難しい問題だ。父親は虐待でもネグレクトでも、逆に過保護でもない。こういう映画や小説に触れる度、親はどうしたらいいんだろうと悩む。この父親の問題は病気を治療するための最前の方法を探すことに執念を燃やしていて、病気になった原因に目を向けていないことだ。自分に何らかの原因があることをまず認め、だからと言って過去は変えられないけど、一緒に悩んでいくことが必要なのだと思う。それができたとしても治癒への道のりの険しさはそれほど変わらないかもしれないが、息子は少しは救われるのではないだろうか。
人間やめますか…
ドラッグの恐ろしさがこれでもかと伝わってくる実話。ちょっとした弾みから、手を出してしまったことで、それは取り返すことができない大きな歪みとなっていく。彼の周りには大きな愛で包む家族がいるのに、何度もやめてはまた手を出してしまうことを繰り返す。孤独を感じると手を出してしまう。悲しすぎる。よく分かるのは、本人の意志だけでは到底治療することはできない。愛しては何度も裏切られ、肉体的にも精神的にも家族が崩壊していく。遂には諦めてしまうが、やはり最終的には人間を取り戻させるのは家族の愛でしかない。かなりリアリティがあり、重たい作品ではあるが、スティーブ・カレル、ティモシー・シャラメの自然の演技が良かった。
親の育て方がダメ
厳格な親、子供を管理しようとする親、“良い子”でいることを強いる親…
こんなんじゃ子供がダメになるのは当たり前。
いつもニックが謝ってばかりで、親が一度も謝らない。
親が育て方を謝れば少しは子供の固まった心も溶けていくのに。
そして、子供がどんな悪いことをしても、助けを求めてきたら助けてあげなくては。
家が子供の安全基地にならなくては。
施設に頼ってばかりで、親が変わろうとしない。
子育ての反面教師として観ました。
実家の息苦しさを思い出す映画
帰省中に、無理やり笑顔作って
自分を取り繕うのってほんと疲れるよな・・・
親を心配させないため。
雰囲気を壊さないため。
明るく楽しく。ネガティブな感情を殺して、、、
そんな実家の息苦しさを思い出す映画。
一つ言えるのは
このお父ちゃんは頑張りすぎちゃったのかな。
離婚再婚の負い目からか。
なんか不自然。
子どものことを愛している気持ちも、
よい親子関係を築くために努力してるのも
十分に伝わってくるのだけど、
そうじゃないんだよ、と言いたい...
過干渉なのに大事なところを外す親よりかは
適当だけど大事なところで頼りになる親でありたい。
良き理解者だとか仲良し親子ぶるよりかは、
子どもが反抗できる余地とか、仏頂面してても許される環境を残しておいてあげたい。
完璧な親であろうとすればするほど
子どもは窮屈な思いをする気がするから、
不完全な親でありたい。
父親の葛藤
原作は2冊の本からなって、1つが父親からの目線、もう1つは息子からの目線で書かれてるという。
この映画は息子からの目線があんまり描かれていなく、ドラッグから抜け出せない苦悩が伝わってこなかった。
一方、父親が息子をどうしても救いたいという気持ちはすごく伝わってきた。息子も辞めたいと思ってる、反省している、なんとしてでも助けたい。でも結局は父親がどんなに頑張っても本人の問題になってくる。
頭に残ったのは、「あなたには救えない」と妻に言われた時の反応。これはドラッグ関連だけでなくても、どんなに他人を救いたいって思ったとしても、最終的には本人の問題になる。しかも自分の人生がめちゃくちゃに壊れそうなほど他人を救い出そうとしても意味がない。
もう少し息子側からの目線が欲しかったけれど、スティーブ カレルの演技が素晴らしかった。
ずっと抜け出せない
なかなか出口の見えない状況でもがく親子の話。
リアルがどうなのかはわからないけど、出口のわからない中で
どうするのが正解なのかわからない中でもがく姿が心苦しくもある。
あまりハッピーな終わり方とはいえないかもしれないけど、
これがリアルなんだろうなとは思う。
ドラッグ
ドラッグは満たせれない日常から簡単ににげだすことができる薬である。
なぜ?ドラッグに手をだすのか?
愛情ある両親に育てられたなら手をださないような気がします。
主人公は両親の離婚の時に寂しさと失望と向き合うのがつらくて
ドラッグに逃げたのか?
父親の愛情がストレートだが彼には重荷だったのかもしれない。
薬物中毒者の再生に力をもっと!と考えさせられる映画です。
主演俳優がイケメン過ぎですね(笑)
Everything
日本とは環境の違うアメリカは、薬物依存に対して寛容だなと、改めて思った。
ごく普通の優等生でも 薬物に依存してしまい、自分では止められなくなるということが改めて知らされたと思う。
それは脳の異常が原因なので、本人の止めたいという意思とは別に、脳が渇望することで突き動かされてしまう。
本当に恐ろしいと思う。
ただ、作品的には ただ起きたことを観させられているだけで、それ程感動とか…涙とか…そういうのは全くない。
敢えてドラマティックに描かなかったのかも知れませんが。
恐らく彼(ニック)は、今はもう薬物には手を出していないと思われるけれど、何気ないことでまたあの頃の記憶が蘇るという可能性と戦わなければならない。勿論家族も。
今、ニックは脚本家として頑張っているようですが、そのドラマ「13の理由」で物議を醸したシーンの是非を巡り、自身の経験を踏まえてシーンのカットは望まなかった様ですが…。
(個人的に 最終シーズンが気になるので、一刻も早く観たいですね(笑)!)
日本は薬物に対して異様な程叩きまくる習性があるけど、そろそろその考え方も改める時が来てるのではないかなと思う。
捕まえて刑罰だけを与えるのではなく、更生するためのプログラムなどを構築していかなくてはいけないのではないかな。
薬物中毒者を閉鎖病棟に隔離して高濃度の精神安定剤を投与したところで、裁判に耐え得るだけの状態を保つだけで根本の解決にはなりませんよ。
観た
重い。救いもない。
米国では50歳以下の死亡理由の1位は、薬物過剰摂取だとのこと。日本では若い世代で自殺が1位にと聞く。
つまり、自殺してしまう代わりに薬物に走るのが米国ということだろうか。どちらも辛い話だ。
観たが、絶望と恐怖を感じる為にわざわざ来たみたいだ。
若い頃にこれを観たら、薬物に走らなくなるかな。
辛かった。
どんなにバカ息子でも
幼く、何事も守ってあげなけゃいけなく、この上なく美しくかわいかった我が子。
どんなにバカ息子でも、見放したくても、その頃に貰ったかけがえのない日々が、彼をその頃に戻してくれる。
親とはそういうものだろう。
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