劇場公開日 2019年4月12日

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「親子の“分かり合えなさ”の普遍性」ビューティフル・ボーイ AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0親子の“分かり合えなさ”の普遍性

2019年4月25日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

薬物依存の問題を真正面から描く、なかなかにヘビーな映画ではある。依存症に苦しんだ若者の手記と、その父親の手記、それぞれの視点を原作から引き継ぎ1本の脚本にに紡ぎ合わせたのも新味と言えるだろう。だがいかんせん、何らかの依存症に深くはまった人かその身内でもない限り、この話をストレートに自らへ引き寄せて共感することは難しい。でも視点を変えて、親の心子知らずと言うように、家族の相互理解の困難さを扱う作品と考えてはどうだろう。こんなに苦しいのに親に分かってもらえない、愛する家族を助けたいのに思いが通じない…そんな普遍的な体験を象徴する話ととらえるなら、共感できるかも。

もともと気が滅入る筋に、不穏なBGMが流れてさらに心が重くなるが、タイトルになったジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」が対照的に優しく美しい。だがジョンも家ではDV親父だったという逸話を知ると、この曲も一層複雑に響いてくる。

高森 郁哉