劇場公開日 2018年11月9日

ボヘミアン・ラプソディ : 映画評論・批評

2018年11月6日更新

2018年11月9日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

伝記ドラマという枠を超える「王道エンターテインメント」

木村拓哉主演ドラマの主題歌となった「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」、数々のCMで使われている「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」などなど、もはや、クイーンの楽曲をまったく聴いたことがないという日本人はいないのではないか? 70~80年代に世界を席巻し、日本でも高い人気を誇ったロックバンド。本作はそのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの壮絶な半生とクイーンの軌跡を描いた物語だ。これは単なる伝記ドラマという枠を超えて、彼らの曲をまったく耳にしたことがない人が観たとしても、心が引き込まれてしまうに違いない王道エンターテインメントとして完成している。

インド系移民という複雑な出自と容姿によってコンプレックスまみれだったフレディが、個性あふれる仲間たちとともに、己の流儀を貫くことによって世界的バンドへと飛躍していく。どうだろう、「ロッキー」や「ザ・エージェント」ほか、私たちが大好きでグッとくる傑作ストーリーそのものじゃないか。さらに、エイズ発症によって死去したフレディのセクシャリティからも目を背けず、彼の苦悩や葛藤にも深く踏み込む。心から愛しながらも、決して添い遂げることはできなかった恋人メアリーとの関係性に、胸を痛める観客も多いはずだ。

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圧巻は、死期を察したフレディが堕落から這い上がり、仲間たちとともに上がる20世紀最大のチャリティ・イベント“ライブ・エイド”のステージ。本当の安らぎと絆を得たフレディが挑む、7万5000人の観衆が埋め尽くすスタジアムでの命懸けのパフォーマンス。伝説的ライブのスペクタクルが、映画館をスタジアムの一角に変える。

そして、数々の名曲の誕生エピソードにも注目。タイトルになった“英国史上最高のシングル”「ボヘミアン・ラプソディ」のシーンはその最たるもので、周囲の反対を押し切り、独創的な手法で制作した楽曲がNo.1ヒットを勝ち取る展開が痛快だ。マイク・マイヤーズがプロデューサー役で出演しているが、これは同曲が挿入曲の主演作「ウェインズ・ワールド」(92)への目配せ。爆笑したいなら、同作を観ておくことも忘れずに。

村上健一

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