ジュリアン
劇場公開日:2019年1月25日
解説
本作が長編デビューとなるフランスの新鋭グザビエ・ルグランが、第74回ベネチア国際映画祭で最優秀監督賞を受賞したヒューマンドラマ。離婚したブレッソン夫妻は11歳になる息子のジュリアンの親権をめぐって争っていた。ミリアムは夫のアントワーヌに子どもを近づけたくはなかったが、裁判所はアントワーヌに隔週の週末ごとにジュリアンへの面会の権利を与える。アントワーヌはジュリアンに、共同親権を盾にミリアムの連絡先を聞き出そうとするが、ジュリアンは母を守るために必死で嘘をつき続けていた。アントワーヌの不満は徐々に蓄積されていき、やがてジュリアンの嘘を見破るが……。
2017年製作/93分/G/フランス
原題:Jusqu'a la garde
配給:アンプラグド
スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
2020年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
家庭内暴力の問題を「シャイニング」のようなホラー演出で描いたのが新鮮だ。あのような常軌を逸した狂気が家庭にあるとしたら相当に恐ろしいことだ。親権をめぐる裁判で幕を開け、母親と父親どちらに問題があるのか、最初のうちはわからない。しかし、除々に父の行動がおかしくなり、次第に狂気に変わってゆく。
フランスでは離婚が成立した場合、共同で親権を持つ共同親権になるケースが多いそうだ。これは共同親権の盲点をついた作品だろう。狂気に堕ちた父にも親権があるため、子供は定期的に父と過ごさせばならない。しかし、裁判所が父の本性を見抜くことは困難だろう。そもそも人の本性を簡単に見抜ければそんな人間と結婚しないだろう。
ジュリアン役のトーマス・ジオリアも好演。これが映画デビュー作だが、憂いを秘めた目が良い。これから経験を積んでもっと良い役者になってほしい。
2019年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
レーティング「G」ではあるが、血は出なくとも見方によってはホラー以上に恐ろしい。ここで描かれた事件を法制度や社会問題からじっくり検証することも欠かせないし、世の中に埋もれている同様の悲鳴に関して、観客に多くを気づかせてくれる作品でもある。
と同時に、ヒューマンドラマ、サスペンスとしても見応えは十分だ。まさかこれほどの展開に発展していくとは誰も思わないだろう。子を守らねばという妻の気持ちも痛いほどわかるし、かといって夫の「どうにかして子供と会いたい」という気持ちもある程度は理解できる。だが夫の態度が急にぶっきらぼうになる瞬間、胸に刃を突きつけられたみたいにこちらも息が止まりそうになる。そして気づく。もっと恐ろしいのは、こんなことが以前にも起きていたであろうこと。母子はずっとこの恐怖に怯えながら、しかし法の保護を受けられずに生きてきたということだ。かくも様々な思いを喚起させる秀作である。
2021年10月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
楽しそうな場面なんてほぼ無くてずっと緊張感あるストーリー。
とりわけ派手な演出も無く淡々としてる映画は途中で退屈になる事も多いがこの作品はしっかり最後まで観れました。
フランス語が妙にマッチして全体の雰囲気をプラスしてくれました。
程よいサスペンス加減も素晴らしい!
2021年9月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
ー アントワーヌ(ドゥニ・メノーシュ)と妻ミリアムの離婚調停の場で読み上げられる、息子ジュリアンと娘ジョゼフィーヌの証言。ジュリアンの共同親権を求めて、言葉少なに父親の存在の必要性を求めるアントワーヌ。
今作で、恐ろしき父を演じるドゥニ・メノーシュの顔と体格が怖い。
(今作の恐ろしさは、ドゥニ・メノーシュの一切笑わない演技が齎していると言っても過言ではないであろう。とにかく顔が怖い。「イングロリアス・バスターズ」の冒頭、ナチスのクリストフ・ヴァルツにユダヤ人を匿っていないか、ネチネチと問い詰められるお父さんの姿の欠片もありません・・。)
ついでに言えば、この離婚調停での遣り取りも、相当に雑である。キチンと、子供達の証言に一歩立ち入って調べるべきアントワーヌの嘘を、見抜けない裁判官。
あれだけ、状況証拠があれば、アントワーヌに接近禁止令を出してもおかしくはないのに・・。ー
◆感想
・子供と妻に、自分の思うように会えない苛立ちを募らせていく、アントワーヌが怖すぎる。そして、描かれないが、離婚の前に彼が妻や娘に行っていた暴力行為も容易に想像ができる。
でなければ、ジュリアンが自分の父を”あの男”とは、呼ばないだろう。
・直ぐに激高するアントワーヌの態度に立腹し、家から追い出す実の両親。
私は、そんな男に育てた両親の罪は大きいと思う。小さい頃から、父の趣味の猟銃撃ちに同行させたりして、甘やかして育てて来たのではないか。
・ジュリアンが、母と姉を守るために、アントワーヌから離れ、隠れ住んでいる家を見つけられないようにする健気な姿が何とも悲しい。
<ラスト、10分のアントワーヌがジュリアンと母ミリアムの家を突き止め、執拗に玄関のベルを狂的に鳴らし、最後はライフルをドアに打ち込んで入り込んで来るシーンは、最早ホラーである。
隣人のおばさんが、警察に連絡し(そりゃ、そうだろう・・。ライフルをガンガン撃っているのだから・・。)何とか、難を逃れた時には、どっと力が抜ける・・。
ジュリアンが、相当なトラウマを跳ね除け、女性や子供に暴力を振るわないキチンとした男に育ってくれよ・・、と願ってしまった作品である。>
■自らの幼き子供を躾と称して殺害した男と、なすすべもなく従った女が、近年逮捕された事は記憶に新しい。
日本の刑法としては、相当に重い量刑が男には課されたが、私は極刑にすべきであったと思う。 親殺しの罪が重く、実の子を殺しても量刑が軽い日本の法制度が、古いのである。
司法は、現状の社会情勢にあった法制度に徐々に移行して行って欲しいものである。