それから

劇場公開日:

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解説

「3人のアンヌ」「自由が丘で」のホン・サンス監督が「お嬢さん」のキム・ミニを主演に迎え、出版社で働く女性が社長の愛人と間違えられたことから起こる騒動を美しいモノクロ映像でユーモラスにつづった人間ドラマ。小さな出版社で働きはじめた女性アルム。社長は妻に浮気を疑われており、アルムの出社初日に社長夫人がやって来て彼女を夫の愛人だと決めつける。その夜、社長の本当の愛人である前任者がひょっこり戻ってきたことから、事態は思わぬ方向へ転がっていく。共演に「隠された時間」のクォン・ヘヒョ、「ひと夏のファンタジア」のキム・セビョク、「技術者たち」のチョ・ユニ。

2017年製作/91分/G/韓国
原題または英題:The Day After
配給:クレストインターナショナル
劇場公開日:2018年6月9日

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受賞歴

第70回 カンヌ国際映画祭(2017年)

出品

コンペティション部門
出品作品 ホン・サンス
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映画レビュー

4.0シンプルな映像世界に、難易度の高い語り口がナチュラルに炸裂。

2018年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

知的

幸せ

冒頭の長回しからどことなく夫婦間のぎこちなさがはびこり、ここから始まる物語が物語の基本軸かと思いきや、それに並行してまた別の時間軸が入り込んでくる。観客としてはあたかも「時空のねじれ」に遭遇したかのように少々戸惑ってしまうのだが、しかし慣れてしまえばこっちのもの。あとはもういつものホン・サンス作品と同様、クスクス笑いの連続沼に入り込んでいくのみ。モノクロのシンプルな作品に見えて、このような難易度の高い仕掛けを周到に炸裂させるあたり、この監督は本当に飄々としていて、すこぶる巧い。

彼の作品群では、出会いと別れ、それに色恋沙汰が不可欠なものだが、それにしても本作では何かのために簡単に「捨てる」という、現代社会を投影したような行為が印象的だ。また事態の不条理さに気持ちの良い態度で抗うヒロインの姿が忘れがたい。キム・ミニの好演もさることながら、ホン・サンスはいつもながら女優を丁寧に描いている。

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牛津厚信

4.0ややこしい男女の機微をじっくりみせる

2018年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本では昨今、不倫は厳しいバッシングを受けるものになったが、いや、もちろん以前から褒められるようなものでもなかったが、男女の関係には複雑な機微があるのだから、、、というエクスキューズの視点もあったように思う。そういうエクスキューズを表立って表明することは憚られる世の中になったが、本作はそういう機微を堂々描く作品だ。

小さい出版社で働く男は、一人の若い女性を部下に持っている。男の妻は彼女を不倫相手だと勘違いする。実際の不倫相手は彼女の前任者なのだが、これらの登場人物がすれ違ったり鉢合わせたりして、事態は静かに、ややこしく進行していく。

主演のキム・ミニと監督のホン・サンスは実際に不倫関係にあった仲だが、近年タッグを組んで不倫ものを連続で作っている。男の態度も話の展開も煮え切らないものだが、男女関係のリアリティとは本来そういうものだろう。ホン・サンスの観察眼が光る。

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杉本穂高

4.0ある意味ホン・サンス監督作の入り口として最適な一作

2024年9月26日
PCから投稿

夏目漱石の代表的小説を原案の一つとした本作(夏目漱石に言及する場面もある)。文芸作品を下敷きにしているということで、高尚な人間ドラマを予想しがちですが、本作の物語ははっきり言って下世話そのもの。妻に浮気相手の存在を知られて、しらばっくれているうちに別のスタッフが巻き込まれる、とまとめてしまえば元も子もないのですが、実際そういう話なのだから仕方ありません……。

やや武骨な印象を残しつつ、サンス監督作品ではあくまで柔和な人物を演ずることが多いクォン・ヘヒョですが、本作ではものすごく隠し事が下手な出版社社長に扮しています。開き直ったときのしらばっくれた表情のなんとも言えない憎らしさには、さすが名優と妙に感心してしまいます。

本作を含め多くのサンス監督作品は独特の会話劇が一つの持ち味ですが、時に会話の内容や状況をつかみにくく感じることもあります。その点本作は最初から最後まで痴話げんかと浮気の隠ぺい工作を描いており、非常に描写意図がわかりやすい内容です。それでいてつい引き込まれてしまうサンス監督流の会話手法はすでに完成の域に達しています。

このようにコメディーとして楽しみつつ、特徴的な作劇を堪能できるという点で本作は特に、ホン・サンス監督作品に触れたことのない人に入門編としておすすめしたい作品です。

同監督作品の常連となっていくヘヒョやキム・ミニらも顔をそろえているため、後続作品との描写の違いを比較しても面白いかも!

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yui

3.5【ホン・サンス監督の巧みな会話劇を愉しむ作品。それから、ホン・サンス監督作品あるあるを記す。】

2024年6月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

幸せ

■アルム(キム・ミニ)は、評論家としても有名なキム(クォン・ヘヒョ)が経営する小さな出版社でキムが頼んでいた教授からの働くことになる。
 何故ならば、キム社長はイ・チャンスク(キム・セビョク)というたった一人の女性社員と浮気をしていたが、お互いに気まずくなって辞めたからである。
 出勤初日、アルムはキムの浮気を疑い会社に乗り込んできた妻(チョ・ユニ)に、夫の浮気相手と間違えられてしまう。
 さらには、イ・チャンスクが戻ってきたことで、キム社長を中心とし男女間の思惑、狡さ、優しさが会話を通じて描かれる。

◆感想<Caution!内容に触れていません。>

 ■ホン・サンス監督作品あるある。

  1.基本的に会話劇が中心である。
    派手なアクションや、大きな事件は起きない、と言うか映されない。
    全て会話に含まれる。
    故に、ホン・サンス監督作品を映画館で観る時には、注意が必要である。
    可なりの確率で、鼾をかいて寝ているオジサンに遭遇するからである。

  2.固定カメラでのショットが多い。
    構成としては、男女(複数の場合も多い。)が机を挟んで会話するシーンが多い。
    特に、酒を呑みながら且つ食事をしているシーンが多い。
    酒瓶は林立する事が多く、又男女問わず喫煙するキャラクターが多い。
    故に、観る側は左右の男女の横顔を見ながら、二人もしくは複数の登場人物の会話劇を楽しむことになる。

  3.常連の起用が多い。
    監督のミューズであるキム・ミニが代表格だが、クォン・ヘヒョの登場回数も多い。ホン・サンス監督を投影しているような、作家や映画監督がメインキャラクターで登場する事が多い。

  4.会話のセンスが、抜群に良い。
    今作もそうだが、何気ない会話をしつつ、相手の腹を探り合う所など。

  5.物語は、ドラマチックな展開は余りない。
    が、物語が終わった時には、登場人物の立ち位置が微妙に変わっており、余韻佳き作品になっている。

<ホン・サンス監督は実に多作な方である。
 そして、カンヌ映画祭での評価が高い。
 画を見れば”あ、ホン・サンス監督作品だ!”と分かる画面構成や、優れた会話劇が高く評価されているのだと勝手に思っている。>

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NOBU

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