フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

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劇場公開日:

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

解説

全編iPhoneで撮影した映画「タンジェリン」で高く評価されたショーン・ベイカー監督が、カラフルな風景の広がるフロリダの安モーテルを舞台に、貧困層の人々の日常を6歳の少女の視点から描いた人間ドラマ。定住する家を失った6歳の少女ムーニーと母親ヘイリーは、フロリダ・ディズニーワールドのすぐ側にあるモーテル「マジック・キャッスル」でその日暮らしの生活を送っている。周囲の大人たちは厳しい現実に苦しんでいたが、ムーニーは同じくモーテルで暮らす子どもたちとともに冒険に満ちた日々を過ごし、管理人ボビーはそんな子どもたちを厳しくも温かく見守っていた。そんなムーニーの日常が、ある出来事をきっかけに大きく変わりはじめる。主人公ムーニー役にはフロリダ出身の子役ブルックリン・キンバリー・プリンス、母親ヘイリー役にはベイカー監督自らがInstagramで発掘した新人ブリア・ビネイトを抜擢。管理人ボビー役をウィレム・デフォーが好演し、第90回アカデミー助演男優賞にノミネートされた。

2017年製作/112分/アメリカ
原題:The Florida Project
配給:クロックワークス
劇場公開日:2018年5月12日

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(C)2017 Florida Project 2016, LLC.

映画レビュー

4.5夢と現実が対になったフロリダの熱い夏

2018年6月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

悲しい

すぐそこにディズニー・ワールドがあるから、"マジックキャッスル"とか"フューチャーランド・イン"とか"セブン・ドワーフス・インとか、ディズニーに因んだネーミングになっているモーテルでは、しかし、夢の世界とは裏腹な貧しい人々がギリギリで生活を紡いでいる。彼らにとってモーテルは宿泊場所ではなく、宿代さえ払えば永遠に住み続けることが出来る住居なのだ。そんな夢と現実の痛烈な対比を、モーテルに住まう子供たちの目線で綴る映画は、子供にとって楽しい遊びの時間が、次第に厳しい社会の掟によって潰えていくプロセスを、祈るような気持ちで見守り続ける。カラフルなペイントが施されたモーテル群の上空にかかる七色の虹、ほぼ水着に近いかっこうで通りを歩けるフロリダの熱い夏、そこを駆け抜けて行く子供たち。眩しいほどの自由と、逃れられない貧困の現実とが対になった強烈なアイロニーが、見終わった後もしばらく後を引く、マジカルな社会派ドラマだ。

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清藤秀人

5.0粉飾と作為を限りなく回避した子ども映画の傑作

2018年5月30日
Androidアプリから投稿

笑える

悲しい

楽しい

海外の作品を観ると「子役がバカうまい!」と感心することばかりだが、本作はズバ抜けている。いや、うまい、という言い方も失礼だ。この映画の子供たちは、たちの悪いイタズラと悪態が人並はずれて大好きで、近所にいたら眉をひそめずにはいられないだろう。しかしこの映画は開始早々から、こんなガキどもいる!と納得させられずにいられないし、いつのまにか本当に近所の、いや、親戚か家族のような想いでこのガキどもを見守ることになる。

それはほかの大人たちも同様で、まるでこの魅力的な素人アンサンブルのアンカーの役割を担うウィレム・デフォーを除けば、普通の劇映画ではなかなかお目にかかることができない自然体のオンパレードだ。役者が本職のケイレブ・ランドリー・ジョーンズでさえ、素人から抜擢された中の一人に思えるほど、当たり前の日常にしっくりと馴染んでいる。

描かれているのは過酷な日常で、その先の展望も明るくない。しかしこの人たちは確かにフロリダの片隅で生きているという確かな実感が、この映画の一筋の希望の光になっていると感じた。

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村山章

5.0監督の優しい視線

2018年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

本作が捉える現実は厳しく残酷だ。しかし映画は温かい。ディズニーワールドのあるフロリダ、オーランドは全米屈指のリゾート地だが、貧富の差は激しく、全米平均よりも貧困に苦しむ人の数が多い地域でもある。
華やかなイメージから取り残された人々にスポットを当てる本作は、けれど貧困の悲惨さをことさらに強調しない。子どもの目線の高さから撮られた映像は、美しく楽しさに溢れている。

貧困に不幸を見出すのは簡単だ。しかし、つぶさに観察してみれば彼らは不幸なだけではない。監督は本作のエピソードのほとんどは現地の取材で見つけたそうだ。あの楽しげなエピソードは創作ではない。

だからと言って、残酷な現実から目を背けるわけでもない。このあたりの監督のバランス感覚というか、距離感の保ち方が絶妙だ。

個人的に、今年を代表する1本になりそうだ。心底感動した。

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共感した! 15件)
杉本穂高

4.0厳しい現実を映し出しているのに、なぜだか愛おしい気持ちが止まらなくなる

2018年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

楽しい

この映画のことを考え出すと、愛おしい気持ちが止まらなくなる。大注目の米配給会社A24が送り出す本作は、冒頭から圧倒されるほどの子供達のパワーが満載だ。それも演技慣れした子役ではなく、純然たる子供の素の表情を次々と活写し、もはやこの時点で我々は夢心地な瞳に陥ってしまう。

ストーリー的には、ケン・ローチの映画を思わせるような格差社会のリアリティにフォーカスしているものの、それを直接的に突きつけるのではなく、あくまで子供の目線を通じたワンダーランドとして提示しているところに独自性がある。思えばどんな境遇で暮らしていたって、子供達はその状況の中で最大限の夢想の羽根を羽ばたかせるもの。それが痛いほどわかるから微笑ましく、その先にあるリアリティについてより深く考えさせられてしまう。この手法もまさに魔法だ。そして、プロ俳優でない人々の中で一人優しい輝きを放つウィレム・デフォー。その姿が胸から離れない。

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牛津厚信
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