SUNNY 強い気持ち・強い愛 : 映画評論・批評
2018年8月21日更新
2018年8月31日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
工夫を凝らしたアレンジが効いた上質なリメイク。ともさかの名演技に注目!
2011年の韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」の日本版リメイクと聞いて、商魂ばかりが匂う安易な企画だと感じた人は筆者だけではないだろう。しかも90年代のコギャル文化に置き換え、オザケンや安室奈美恵の90年代ヒットソングを盛り込むとは、オリジナルを熱く支持した中年層を完全にロックオン!だ。
とかく「あざとい」要素が目に付くことは否定できないが、大根監督は企画と作品の価値は決してイコールではないと改めて証明してくれる。もしあなたがオリジナルのファンならば、この日本版リメイクもきっと楽しめる。オリジナルに敬意を払い、ドラマの骨子に余計な手を入れたりせず、それでいて工夫も凝らして新鮮にアレンジされているからだ。
けたたましいコギャルたちの青春も、若い女優陣の好演もあってキラキラと輝いている。とりわけ広瀬すずの「田舎からやってきたイタい転校生」っぷりは、彼女の実直ともいえる“捨て身”演技によって、決してオリジナルのシム・ウンギョンに引けを取らず、観ているこちらの口元をほころばせる。
そして、筆者がオリジナルの「サニー」公開時の盛り上がりにまったく乗れなかった人間であることは告白せねばなるまい。あれだけ愛された作品には抗しがたい魅力が備わっていることは間違いないが、正直、自分には楽しめないハードルがいくつもあって、今回のリメイクにもなるべく近づかないでおこうとさえ思っていた。
ところが、だ。完成品を鑑賞して、施された細かな改変が実にクレバーな判断によって為されていることに舌を巻いた。例えばオリジナルにあった「娘をイジメた女子高生グループを、大人が束になってボコボコにする」という問題の本質からズレた解決法はごっそりカット。似たシーンはあるのだが、巧妙に違うシチュエーションで再現されている。
もちろんオリジナルあってのリメイクであり、どっちが上という話ではない。が、本作は後発である利点を活かしたマイナーチェンジがいちいち効いていて、バージョンアップした印象すら受ける上質なリメイクになっているのだ。
最後に特筆しておきたいのが、現代パートに登場するともさかりえの凄味。オリジナルから踏襲されているどこか絵空事のような世界観の中で、短い出番で彼女が醸し出すのっぴきならない深みは、この作品をしっかと現実に結び付ける錨のような役割を果たしている。ともさかだけでも入場料金の元が取れるくらい、神がかった名演技である。
(村山章)