ウインド・リバーのレビュー・感想・評価
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ピューマの親子
クソ暑いこの季節に映画館は涼めるが本作を大画面で観ると涼しさが増しキンキンな気分に!? 常に緊張感が張り詰めて不穏な音楽に終始ドキドキで先が読めない展開に渋味のある主人公とW・デフォーの「ハンター」をチョット思い出したり!? J・レナーは渋くて格好良かったがT・ハーディが適役だったと勝手に思ったり犯人がピューマに食われる最後を勝手に想像してみたり。 嫌ぁなレイプシーンがリアルで犯人に対して観ている側も腹が立ち憎しみの感情が生まれ間髪入れず怒涛の銃撃シーンが圧巻で盾になるような身を守る物が無い怖さが伝わる。 不穏な雰囲気の音楽にピリピリと張り詰められた緊迫感に渋い男同士の葛藤など脚本家として本作の監督デビュー作と一貫して手腕を発揮するT・シェリダンには今後も期待するベシ!!
復讐劇なの?
ある少女の遺体が雪山の中発見された、殺された親の復讐かと思いました。 違った、アメリカが抱える問題が全面に出された作品?! 異種な人類が多く生活しているアメリカならではの映画だと思いました。 主人公の役者の悲哀が満ちた良い作品、極寒のロケ地壮大な雪山 景色といっては申し訳ないが良かったです。
痛みと向き合う事で一緒にいられるのだ
殺人事件を追う女性FBI 捜査官と捜査を手伝う男の話。 被害者の死因は、極寒の中をさ迷った事で肺から出血し窒息した、との検死結果。だけど現場は人里から10Km の距離で裸足。 羊たちの沈黙のようなサスペンス風味の冒頭からアメリカの社会問題提起があり、最後は西部劇のような結末。 幸運な者が生き残るんじゃない、強い者が生き残れるんだ。
またお前か。ジョン・バーンサル!
「ボーダーライン」の脚本家の監督作ということで、期待大でしたがヨカッタです。 とにかく、アメリカは広くて深いということを再認識しました。 こういった作品が、単館系でしか観られないことも悲しい。
米国闇部を白い雪原で描いたクライム佳作
アメリカ中西部ワイオミング州、冬。
吹雪があり、雪に一面閉ざされたある日、ネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバーでひとりの若い女性死体が発見される。
発見したのは、近隣の家畜がコヨーテに食い荒らされていることの通報を受け、駆除に出ていたハンターのコリー(ジェレミー・レナー)。
彼も四年前に娘を亡くしており、情況が似ている・・・
といったところからはじまる物語で、すぐにコリーはネイティブアメリカン女性と結婚しており、亡くした娘は彼女との間にできた子どもだったということがわかる。
映画はその後、FBIから派遣されてきたバナー女性捜査官(エリザベス・オルセン)が加わり、犯人究明に乗り出すが、常に行く先々は雪に覆われている・・・と展開する。
直前に観た『ノクターナル・アニマルズ』の劇中小説の冬版・保留地版という趣が強く、知られざる米国の一面をあぶりだす迫力は相当なもの。
興味深いのは、ネイティブアメリカンの保留地の扱いで、英語では「reservation」、かれらにとって用意された土地という意味で、歴史的なことを反故にしたような押しつけがましい響きがある(つまり「囲い込み」にもかかわらず、という意味である)。
で、その保留地の自治は、彼らネイティブたちにまかせっきりで、殺人事件と明白でないと、全米警察機構のFBIは関与できない。
(BIAという組織に捜査は委譲され、当地のBIAの警察組織は6人しかいない、つまり、解決はほとんどなされない)
発見された女性の死体は、レイプ痕跡はあるものの、犯人からの逃走中に、極寒の中で肺出血を起こし、結果、窒息死したことが判明する・・・
というあたりかなり興味深く、バナー捜査官が本来は捜査権がないコリーを相棒をして捜査を進めていくまで、近年まれにみる雪中行で、撮影のベン・リチャードソンも含め、テイラー・シェリダンの演出は迫力がある。
そして、事件の真相がわかり・・・
というあたり、さて、このタイミングで事件の真相を語るべきだったのかどうか、少し疑問が残る。
捜査する側は、真相については薄々でしかわからないなかでのクライマックス前の真相バラシ・・・
後の、クライマックスの銃撃戦からはショッキングな編集なのだけれど、ここでいいのかしらん、少々説明が長い、と感じました。
ここは、もう少し前段階で、怪しいと感じて合同捜査に出る前あたりが、観る側にはわかりやすく、ハラハラするような語りになったのではありますまいか(って、個人的は『めまい』のネタバレ的位置が最適と思うのだが)。
というのも、この映画では、事件の真相(だれが、どんな目的で、被害者女性に害を及ぼしたか)がカタルシスにつながるわけでもなく、かといって、ここを描かないと米国の闇(最後の字幕説明されるネイティブアメリカンの失踪事件についての説明)に焦点が当たらないので、なんとももどかしいのだけれど。
というわけだが、本作、米国の闇を扱った映画としては、かなり上位に属すると思います。
(安易に、コリーの娘の死に直結しないあたりが、その闇を深く描いていると思いました)
社会問題を投げかける硬派なサスペンス
極寒の地で死体となって発見された少女を殺した犯人を追う地元のハンターとFBI捜査官。 とにかく寒そう!雪国での殺人事件を描いたサスペンスはこれまでもあったが、この映画は空気が重い。アクションや銃撃や犯人探しには重点がおかれていないのもその理由かも。 白人とネイティブアメリカン、都市と辺境、性犯罪の加害者(男性)と被害者(女性)、そして子どもを殺されたことのある親とそうでない親。さまざな対比が描かれている。しかも事実に基づいて作られたというからさらに重く感じる。 単純に面白いとは言えないが、とても心に残る映画だ。
鑑賞1回目
娘を失った哀しみと怒りが強くにじみ出ていたが、それだけに父と娘のシーンがもう少し描かれていても良かったと思う。
また見所がイマイチ少なかったのとオチも驚きにかけていた。
印象的なシーン(というかセリフ)はワルとつるんでいた被害者の兄貴が妹の死を知って怒りで世界が敵にみえてくるとといったことに対し、ジェレミーが少しの理解を示すも「俺は感情と戦う。」といったシーンが娘を失った自分へも言い聞かせてる感じがして印象深い!
零下20℃の最高のハードボイルド
「娘を失う」というひどい経験をした男たちによる諦念と決意の物語。舞台であるワイオミング州ウインドリバー保留地という場所は、先住民であるネイティブアメリカンが元々住んでいた場所を追われ、与えられた場所。そこは荒野にして極寒の場所。冬は零下20℃に至る。映画は、その舞台と同じ冷たさの中で、最初から最後まで続く。 そこにあるのは「ここで生きていく」という強い決意のみ。よいわるいではなく、自分に与えられた環境をあるがままに受け入れ、それに屈しないで生きていくというただ強い意思だ。 もちろん、その決意がない者たちも多く暮らしていて、そういうやつらが引き起こした事件を、主人公が追う。 最高のハードボイルドを観た。氷のように、いや氷以上に冷たい環境の中で、炎のように燃えさかる静かな決意。 主人公の言う「強い者だけが生き残る」という言葉における「強い者」とは、決して「力が強い、体格がよい」ではなく、心。生きる意思があるかないかという大小を言っている。だからこそ、冒頭で遺体で発見される主人公の友人の娘について、主人公は繰り返し「強い娘(こ)だ」とつぶやく。 全編通して、真のハードボイルドを伝えるメッセージだけが、語られ続ける。 主人公は、動的に強く戦って生き、友人は、静かに心の中で戦って自らの葛藤に勝つ。この対比もさりげなくはさまれたエピソードに見えるが、実は映画の背骨とも言えるのではないだろうか。 この苛酷な環境に押し込められたネイティブアメリカンに目を向けると同時に、贖罪や哀れみに終わらず、そこで生きる強さという人間賛歌にまでつないでいるストーリーは、すごい。 「悲しんで、悲しんで、その上で悲しみに打ち勝て。そうすれば娘の記憶といっしょに生きてゆける。悲しみに打ち勝てなかったら、娘と共に生きることはできなくなってしまうぞ」 なんと達観した強い心なのだろう。 焼肉ドラゴンでも同様のことを感じて書いたが、苛酷な環境に生きる人たちの話を、観ている人が「俺もこういう生き方をしよう」と感じるところまで昇華させられる作家たちを、本当に尊敬します。ありがとう。
恐ろしい実話
この作品。事実に基づいた映画だったんですね。 恐ろし事件です。 もしFBIに協力するハンターがいなければどうなっていたんだろう? 最後のメッセージ。日本人だけと考えさせられます。 上映後。皆さんの表情は固かったです。 ウインドリバーの素晴らしい風景の元におきた悲しい事件のお話です(´Д` )
全てを奪われ絶望の中で生きるという苦しみ
これは様々な問題提起をする素晴らしい映画だった アメリカのワイオミング州にあるインディアン居留地 ウインド・リバーでネイティブアメリカンの少女の遺体が発見される インディアン居留地の捜査権はFBIにあるため、ラスベガスに出張していたFBI捜査官のジェーン(エリザベス・オルセン)は、急遽、ウインド・リバーへと向かう アメリカの中で、ワイオミング州というは、最も人口の少ない土地のうちの一つだという なぜなら、切り立った山に囲まれた土地は、石炭が取れるわけでも、石油が取れるわけでもないため、町として発展せず、人が集まらなかったからである 逆に言えば、そこはアメリカの中で最も土地が余っている場所であり、アメリカ政府は、そこへネイティブアメリカンを強制的に住まわせ、インディアン居留地「ウインド・リバー」と命名した それ以来、ネイティブアメリカンの人々は、絶望しかないその土地で、息をひそめて暮らすことを強いられてきた この映画では、そのウインド・リバーで起きた殺人事件を描いているのだが その背景からして、ただのサスペンス映画ではないことがわかる かつて、アメリカの土地に侵略してきた白人たちは、彼らをその何もない土地に追い込んで住まわせたけれど もしも、白人たちがその土地に強制的に住まわされることになったら、その白人たちはどうなってしまうのかを描いている その、とても複雑な歴史を持つ土地を一匹の狼を使って表現しているのが、オープニングである そこでは、ハンターのジェレミー・レナーが狼を殺すのだ 狼という生き物は、ネイティブアメリカンにとって、とても神聖な生き物なのだが、 かつて、ワイオミング州で暮らす牧場主たちによって「家畜を殺される」という理由で全滅されてしまったという しかし、近年になってネイティブアメリカンたちのたっての願いで、再び狼たちをワイオミング州に住まわせることになったのだが、未だに、牧場主たちは反対しているのだという (Wikipedia 調べ) その中で、ジェレミー・レナーは、狼やプーマが増えすぎて家畜を食い荒らさないように、バランスを取る仕事をしているのだ ネイティブアメリカンの女性と結婚し、息子はハーフというジェレミー・レナーは、その土地で長く生きていくために、白人たちと、ネイティブアメリカンたちの間に立って、バランスを取る役割をしているのだ しかし、その土地の複雑さを知らず、仕事のために強制的に連れて来られた白人たちは、その「絶望しかない土地」に馴染めず、フラストレーションが溜まっていき、一触即発の状態にまでなってしまう インディアン居留地の中で起きた事件は、よそ者のFBIにしか捜査権がなく、 その融通の利かなさが事態をさらに悪化させていく これは、絶望という土地に強制的に追いやられ、その後、全く見放されてしまったネイティブアメリカンたちを白人の目を通して描かれ、彼らの実情を知るための映画であり そのガイド役として、MARVELコンビが主役に選ばれたのだろう 多様性が叫ばれる時代の中で、未だに忘れられ、目を背けられている人たちがそこにはいるのだ エンドロール前に字幕で語られた現実には、とても胸が痛くなった 低予算で製作され、小規模公開されたこの映画は、アメリカで異例のヒットとなり、拡大公開されたという その事実だけでも、この映画を作った意義があったと思う 元々、アメリカの土地は彼らのものだったはずだ そのことを、1人でも多くの人が思い出せると良いと思う
分からなくて当たり前
演出は冗長だが、真摯な作りと役者の演技に引き込まれ最後まで見させる強い作品。 この映画の哀しみは日本人には理解はできない。アメリカ人のジェーンですらそれまでは理解できないのだから。ただアメリカにはこの様な逃れられない哀しい地域と人々は確実に存在する事を教えてくれる。 もう少し主人公の事を描いて欲しかったがこれくらいでよかったのかも。
やるせない怒りや悲しみの風景
アメリカ原住民の保留地で起こった少女死亡事件を追うというサスペンスですが、原住民の置かれた厳しい環境や、子を失った親の心情も描かれ、社会派ドラマとしても人間ドラマとしても観ることが出来ました。
また、知的で冷静に的確に獲物を仕留める、主人公のハンター役のジェレミー・レナーが格好良い。
なおかつ、怒りや悲しみを内に秘めた表情など、演技も素晴らしかったと思います。
犯人を追うサスペンス展開の方も、クライマックスの構成など、とても緊迫感がありました。
事件の真相となる部分は意外性があるわけではないのですが、こういった構成で提示し、緊迫感のある容赦ない銃撃戦へ続く流れは圧倒されました。
真相は意外性はありませんが、やはり非情で残酷だと思います。
犯人に報いを与えても癒やされることのない子を失った親の心、把握されない原住民の女性の失踪者達、ラストはやるせなさが残ります。
荒涼とした雪原の風景も印象的で、やるせない怒りや悲しみの心象風景のように感じました。
映画的な波がグッとくる
前半退屈だけど土地の持つ闇部をちらつかせて後半一気に波が押し寄せてキレイに流してしまう。残ったのは虚しさと未解決な土地の闇部… アメリカって野蛮だしどうしようもない問題だらけ何だなあ
アメリカの闇を抉った傑作!
鑑賞直後の感想はちょっとスリリングな現代版西部劇を観たな、といった感じだったのですが、作品のポスターの「世の中から忘れ去られたアメリカの闇」なるものが今一つピンと来なかったのが気になって仕方ありませんでした。それで公式HPや色々なレビューを遅まきで拝見したところ、この作品の見え方が私の中ですっかり変わってしまいました。いやはや、ネイティブアメリカン保留地についてこんな根深い問題があったとは... これからご覧になる方は少なくとも予め公式HPに目を通すことをお薦めしたいと思います。絶対作品の理解が深まります。それから伝説のHiropooさんのブログに感謝、目から鱗でした。
観るべき映画
大好きな映画の一つです。 アメリカ・ワイオミング州のネイティブ・アメリカン保留区ウインド・リバーで実際に起きた凄惨な事件を映画化したもの。 なんというか… あまりに悲惨で、酷くて、まだ根深いアメリカの先住民問題と、冬の夜は-30℃という厳寒の雪に閉ざされたその町の閉塞感に息が苦しくなる内容だけど、観てよかったと思う。 主役のジェレミー・レナーの表情がすごくいい。 ハンターとしてとても男らしい姿とストイックで頼もしい存在感を醸し出しつつ、その心にはある深い悲しみを抱えている様がよく伝わって、そして彼はとても心優しい人なのだとわかります。 (そういえば「メッセージ」の彼も名助っ人役でいい味出してた) 犯人たち・・・逮捕じゃなくていい、どうか殺して・・・ 誰もがそう思うでしょう。 ここほんとにアメリカだよね?司法はどうなってるの?どうしてこんなにも警察の目も行き届いてないの?FBIも渋々来るような所なの?? 繁栄大国アメリカ、その中に現代社会から文字通り置き去りにされている地域に、アメリカの深い闇の1つを見せつけられる。 正義とは?人権とは? CIA新米エージェント役のエリザベス・オルセンとジェレミーはアベンジャーズでも一緒でしたが、今回はかなりハードでシリアスな内容での共演。彼女も上手かった。 最初は頼りなかったのに、すごい成長ぶりというか、実はとても強い人だった。 ラスト近く。重傷の彼女を見舞った時のジェレミー・レナーのセリフが感慨深い。 「私は運が良かった」という彼女に応えた言葉が忘れられない。ズン!と響いた。 ぜひ、映画の中で聞いてください。
すごかった
子どもを亡くした者どうしの共感がなんとも胸を打つ。インディアンのお父さんが「オレはもう戦う気力がない」と言っていたのが「がんばれ」とは口が裂けてもいえないようなただならぬ空気だった。奥さんは鬼のようにリストカットしていて地獄のようだった。
銃撃戦がアクション映画的な演出が全く無くて、かっこよくもなんともないリアルな殺し合いだった。突っ立ったまま撃ち合う。
最後の制裁も素晴らしかった。彼女が事件に巻き込まれる様子がひどくリアルでありえそうで恐ろしかった。
現状ある全ては自分の選択によるものだ、というメッセージが半端に語られたらうざいばかりなのだが、ここまでの作品で突きつけられると納得せざるを得ない。
映画館が混んでいて、前から二列目で、映画館の冷房が効きすぎて寒くて、ウィンドリバーに連れて行かれたような気分だった。見終わって体調が悪くなった。
強さの物語だと思います
静かに、 時に厳しく降り積もる雪の前に、 ただ、なす術もなく、それを受け入れ、 一日一日を生きていく事と同じく、 不意に訪れた悲しみの前でも、 雪にそうするように相対する姿。 この静かな強さは、 とても厳しくも美しい雪の景色に、 重なる。 そして、 厳寒の地に追いやられた、 迫害の歴史を持つ先住民。 それでも静かに強く生き抜いた、 その強さは、受け継がれ、 彼女に、 極寒の夜の雪山を、 途方もない距離を走り抜かせた。 「強い戦士」 コリーは、そう称える。 彼女の強さと、 迫害の歴史を、 思い合わせ、 また胸が熱くなる。
良い…
『ウインド・リバー』鑑賞。ネイティブ・アメリカンの差別問題を織り交ぜつつ、殺人事件のサスペンスドラマとして物語に引き込ませるのが上手い。重厚で無駄な装飾のない作品だった。これが実話に基づくところが更に闇深い。ティラー・シェリダン推せるわ…。
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