SFファンタジー作品
物語の構造が最後にわかるSF独特の型を利用している。
テーマは「後悔と赦し」だろうか。
ペンション「赤木箱」
実に変わった名前だ。
この名前は家族でペンションを経営する父のマジックのネタでもある。
おそらくそのマジックこそこの作品全体を象徴しているのだろう。
同時にそれは「神様のポスト」と同じもの。
ゆかりが息子のそらに神様ポストを出す際、彼女と少女時代のゆかりの写真が登場する。
この写真は伏線であり、ミスリードでもあり、この物語全体の時間的概念を示す大きなヒントでもある。
ゆかりの夫が昼間からベンチに佇む場面が2度ある。
それはこのとき彼女がリモコンを使った証だろう。
結局夫は浮気し離婚もするが、その傷跡を最小限にとどめておくことができたのだろう。
それが成され、彼女はかつて母が言っていた後悔を思い出したのだろう。
時間枠は、
物語の一番未来に立っているリンカの娘、大人になったゆかり
彼女が成長し、科学技術が一段と発達した近未来
そこにはタイムマシンの試作がされているようだ。
さて、
この物語には3世代家族が登場する。
初代が鶴田真由さんが演じるリンカの母
2代目が家族を持ったリンカと娘ゆかり
3代目が家族を持ったゆかり 息子そら
それぞれの世代で家族の悩みを抱えている。
ペンションになぜあの「リモコン」があったのか?
それは、客としてその世界に登場した大人になったゆかりが持ってきたのだろう。
リモコンはボタンを押したものにしか効果が得られないようで、つまりゆかりは、母リンカの大きな後悔をさせないようにこの世界に降り立ったということになる。
ゆかりは「祖父」のマジックの小道具である「赤い木箱」が、神様との通信手段だと聞かされていた。
それを息子のそらにも伝えている。
彼女自身夫の浮気か何かで離婚した。
そして自身に起きた脳腫瘍
手術はおそらく成功したのだろう。
その時の最新ニュースで知った「リモコン型タイムマシン」
彼女はそれを手に入れ、母リンカの若い時代に来て、彼女に後悔させないためにリモコンを渡した。
しかしその前に彼女は夫との離婚と自身の脳腫瘍を鑑み、そらのことを案じた。だから最初にあの離婚へ至る経過に介入し、そして母の後悔に介入した。写真は「当時」からあるもの。
つまり、
時系列的には、彼女はその写真を発見したことによって、今後どうなるのか予想できたが、実際わかっていても思い通りにならないのが感情だ。
ゆかりは夫とのことと息子とのことの修正にかなり手間取ったのだろう。
だからペンションにリモコンを置いたとき、バッテリーはあと4回分しか残っていなかったのだろう。
時間を巻き戻しても「起きた出来事は変えられない」
ただ、別の行動をしていれば、起きる出来事を受け入れられるかもしれない。
これがこの作品のテーマの根幹にあるのだろう。
では、
冒頭のシーンはどういう意味があるのだろうか?
2代目 リンカの世代 娘のゆかりとバイトのひとみ
死亡事故を起こした男が交通刑務所から出所した。
迎えに来た妻 妻はひとみを連れて実家に戻り、ペンション赤木箱で働いていた。
夫は、娘に合わす顔がないと、離れて暮らす選択をしたのではないだろうか?
時が経ち、会社の同僚の助言もあって密かに娘の姿を確認しに出かける。
ひとみはもしかしたら頭の隅に父を感じたのかもしれない。
この最初のストーリーこそ、「後悔と赦し」
誰にでもあるこの後悔と赦しは、苦しみと向き合うことで初めて前に進むことができることを伝えたいのだろう。
そしてそれはおそらく「自己満足」でいいのだと思う。
自分自身が苦しみ悩みぬき、些細な行動によってそれが緩和できたのなら、それでいい。
作品の中盤に急展開で始まるSF手法はなかなか面白い。
何の前情報もなく見ているので、頭の中のタランティーノ監督も真っ青だ。
しかし、
このタイトルの意味は解らない。
タイトルだけが微妙に的を外しているように感じてしまう。
でも作品は面白かった。