劇場公開日 2018年3月30日

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トレイン・ミッション : 映画評論・批評

2018年3月20日更新

2018年3月30日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

磨きのかかった黄金コンビのコラボを堪能する絶品の列車ミステリー

リーアム・ニーソンジャウム・コレット=セラ監督は、もはや日本全国のジャンル映画ファンの絶大な信頼を獲得している黄金コンビと言っていいだろう。2011年の「アンノウン」から始まった両者の蜜月は7年目に突入し、今回で4作目。話につながりはないが、高度1万メートル上空の旅客機を舞台にした「フライト・ゲーム」に続く“乗り物ミステリー”第2弾というべき企画である。

保険の営業マンとして地道に住宅ローンと息子の教育費を支払ってきた主人公マイケルが、ある日突然、会社からリストラを宣告される。失意のどん底に突き落とされたまま列車で帰路に着いた彼が、その車内で謎の美女から理不尽な取引を持ちかけられ、人質にされた妻子を救うために奔走するという物語だ。

ヒッチコックの「バルカン超特急」から、先頃リメイクされたアガサ・クリスティー原作の「オリエント急行殺人事件」まで、過去の列車ミステリーの多くは寝台やレストランを備えた豪華特急列車での事件を描いてきたが、本作はニューヨーク発郊外行きのごく普通の通勤列車が舞台となる。10年間規則正しく同じ時刻の列車を利用してきたマイケルには、何人もの顔見知りがいて、車掌とも気さくに挨拶を交わす仲。その見慣れた日常が、脅迫、監視、殺人によって危うい非日常に変貌していくストーリー展開から目が離せない。車両間を駆けずり回り、時に大乱闘を繰り広げ、一度は車外に投げ出されながらも必死に食らいつく主人公の苦闘を、ニーソンが孤立無援の焦燥や悲哀とともに体現する。

元警官で洞察力は鋭いが、それ以外の特殊スキルを持たないマイケルにとって、帰宅ラッシュ時の車内で性別さえ不明の“見知らぬ乗客”を特定するミッションは、砂漠でひと粒のダイヤを探すようなもの。しかし列車が進むにつれて次々と乗客が降車し、“候補者”が絞り込まれていく脚本がうまい。また、多様な世代や身分の人々が同一空間を共有する乗り物ミステリーの特性を生かし、事情を一切知らない他の乗客たちが事件に巻き込まれていく様もスリルを加速させる。

そして列車そのものも制御不能の加速を開始する。このジャンルにおいては、乗り物が無事終点にたどり着くとは限らない。怒濤のパニック・アクションのカタルシスをも堪能させるこの列車ミステリーは、主人公の日常を巧みなアイデアで表現したオープニングから粋なエンディングまで、あらゆる手並みが鮮やか。ますますコラボレーションに磨きのかかった黄金コンビは、今まさに絶頂期にある。

高橋諭治

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