きみの鳥はうたえるのレビュー・感想・評価
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【60点】空気のような人間
20代の青春時代の儚さがテーマ。
刹那的に生きる男女を描いているが、全員この時間が永遠には続かないことを意識しながらも、現実から目をそらすように今を楽しむ、いや楽しもうとしている様子が印象深い。
「僕」は、佐知子に思いを伝えることができず、クールに演じようとしているが、かっこつけながらも自分が傷つくのを恐れているように見える。
静雄と付き合うことを聞くと、自分は静雄を通して、佐知子を知る空気のような人間になる、という発言から強くその感情がうかがえる。
しかし、最終的には演じていた自分に耐えられてなくなり、気持ちを初めて伝えるのだが、それを聞いた佐知子の表情がラストシーン。
解釈が分かれるシーンは好きだ。
掴みどころが難しいが、なんとなく儚さを感じた作品で、音楽や光の加減もよかった。
おじさんには難しいけど青春映画としていいんじゃないでしょうか?!
とうの昔に青春時代を過ごした年代には何だかな~って思ってしまうかもしれませんが…
何だか観終わったときの何とも言えない不思議な余韻がとても気になる映画でした。
まず主人公の『僕』が初めの方で120秒まで数えて佐知子が戻ってくるシーンとエンディングでもまた数えてみるが待てずに走って追いかけていくシーンの対比が見事です。
またエンドロールのバックで聞こえる街の雑踏と鳥の声、これもまた印象的であり、象徴的でもありました。
青春映画の何とも言えずかったるく、やるせない雰囲気が見事に醸し出されていましたし、主人公の3人の演技がすこぶる秀逸でした。柄本佑さん、最近はイケメン俳優として深い深い沼をお掘りになっていますが、いい役者さんです。
染谷将太さんも菊地凛子さんとの結婚はびっくりしましたが、名脇役ですね。
石橋静河さん、最後のシーン、笑っているのか悲しんでいるのか微妙な表情がとても印象的でしたし、途中途中の色々なセリフ、演技もなかなかいいじゃないですか!?
(でもお付き合いするとしたら本物のお父さんがとても怖そうです!)
同僚店員の足立智光さん、いいですね~クソ野郎加減が堂に行ってますが結構好きです。
また脇ではありますが店長の萩原聖人さん、最近はかつてのイケメン俳優もなんだかな~っていう役が多いですね。ケツメイシの『さくら』のPVでは片瀬那奈さんを美人にしたみたいな(失礼?!)鈴木えみさんとの共演が印象的でした。この映画とは関係ありませんが鈴木えみさん、めちゃめちゃ可愛かったですね!『映画理論講義』はきちんと読破したんでしょうか?最近とんと見ないですね~どうしてるんでしょう?
萩原聖人さんもあまり見ないような…『冬のソナタ』でヨン様の声やってましたたよね~懐かしい!こっちは20年くらい前??
萩原聖人さんの立場よりさらに上の年代としては若者たちの心情は理解できていないかと思いますが、深~い映画でした。
なんとなく『傷だらけの天使』のことを思い出してしまいました。全く似ても似つかないですが。
ビートルズを歌ってくれなきゃ意味が通じない
サブタイトルが「And Your Bird Can Sing」となっていることで意味が分かる。というより、ラストシーンにそれを全てぶつけてさえいるのだと思う。ただし、日本人向けにスカビートの「オリビアを聴きながら」を佐知子に歌わせていることで、出会いと結末を考えさせる効果もあった。
そのビートルズの曲の直訳風タイトルが面白いけど、この曲自体が多分色んな意味を持たせている意味深な歌詞なのです。“You”がミック・ジャガーだとかポール・マッカートニーだとからしいのですが、“Bird”は恋人を表すスラング。真っすぐに捉えると、柄本佑はずっと一人称“僕”なのだから“You”は当然染谷将太演ずる静雄であり、“Bird”は石橋静河演ずる佐知子のことだろう。
書店で一緒にバイトをしていたこともあり、ひょんなことから体の関係を持ってしまう“僕”と佐知子。妻子持ちの店長(萩原聖人)と付き合ってることも知っての上だから、「好き」という言葉も発しない、大人の付き合いだったのだろう。しかし、はっきり別れると切り出したところから感情が揺れ動く。そして店長から直接「離婚した」事実も聞かされるなど。そのモヤモヤ感は不誠実を増大させ、暴力行為にも発展し、ついにはフラフラ感へと展開する“僕”。こうして文章化してしまうと人間関係がより面白くなるのです。
バイでもないけど、静雄のことを大切にしている“僕”がいて、二人で映画に行かせるなどという余裕の態度で許してるのもそのためだろう。男2女1の関係はとかく名画に多い気もしますが、いつかは微妙な関係も破綻するのが常。静雄が無職であり、母が倒れたことをきっかけに大人として成長しそうな予感もするので、二人を見守ってもいい気持ちになったのだろう。「本心ではない」「好きだ」というラストの“僕”の言葉によって石橋静河の表情が数秒の間に戸惑い、怒り、嬉しさを見事に表現していたけど、彼女にとっては終わったことになっていたのだろう。「遅いよ」という言葉を発するのだと予想しましたが、彼女の気持ちは観客にゆだねるという手法で人と語り合いたくなる締めくくりでした。
尾崎亜美の「出会った頃は・・・来るとは思わずにいた」という歌詞がとても切ない、大好きな曲です。その歌の含みだけをもぎ取ると、“僕”とは終わった関係なのでしょう。そして前述した「静雄の恋人」というタイトルからしても、結局は静雄と恋人になるってことなのだと推測します。KYな森口もなぜか憎めない・・・
言えた
僕は、いつも他人に流されてばかりいて、やりたいことも特になくて、時間の意味も考えたことがなくて、多分周りの大人達に「今時の若者は!」と言われてしまうモラトリアムな人間なのだと思う。だけど、ラストに救われた。衣食住の他に人間が生きる喜びを感じられるのは、感じたことを相手に伝えられることだと思うから。
題名の意味
考えたけどイマイチ。
柄本佑演じる主人公の男は最後まで掴み所がなく、名前すらわからない。何も考えてないのか、何か考えてるのか。自分の思いに忠実で正直だが、ちゃんと謝れないし、ちゃんと愛してるとも言えない。最後に親友に恋人を持ってかれる。可哀想な奴。
さちこはどんな判断をするのか。
石橋静河の魅惑的なダンスは、サバ?でも披露されていたが、歌も上手くてびっくりした。
役者の演技力
柄本さんみたいなひともいるし
染谷さんみたいなひともいるし
本屋の同僚みたいなひともいる
石橋さんみたいなひとももちろんいるいる
というかいてほしい
もどかしい気持ちと、最後のシーンで風がそよそよして無音になるシーンなど
余韻が続く素晴らしい作品だった。
若い頃は、お酒毎日なんとなく飲んでいたり、夜明けに自転車でバイバイしたり、クラブにも行ったし
彼氏以外の人とキャンプに行ったことがあったので、よけいに感情移入。
最後に一言
石橋静香の役所羨ましすぎる!
染谷さんの役所もとてもいい。
歯磨き粉は最後のまで使う
コーヒーはドリップでいれる。など。
柄本さんに関してはお父さんの血を確実に引き継いでおり、くすっと笑えるところありで最高だった。
ねむれない、ねむらない夜
ああいう適当でかったるそうで、でもセクシーな雰囲気になってしまっている男のひとってどうも魅力的にみえちゃう。でも、実際女のひとが選ぶのは誠実でいてくれる優しい人。
眠れない、眠りたくない、眠らないで遊ぶ夜って切なくてでも輝いてる。ああいう時も必要。
気持ちが通じたね
佐知子の合図に
気づいて、
120数える。
あてのない約束を
どれだけ待てるかな。
2分って短いけど
理由なく待つ時間としては
長い。
来るとわかっていれば
短い。
エピソードとしては、ネタかな。
ホントにあればいかすけども。
全編を通して、
多くの人が経験する
時間が停滞する年頃の
空気感がシーンからにじみ出でて
目がはなせないです。
何故か、いつも
そばにいる異性が
キレイに見えたり、そうでも
なかったり。
友達と自分の彼女が
仲良くなっていくのが
わかってるのに、
何もできなかったり…
ラストなんて、ほんとに
そのまんま。
変なタイミングで
どうしょうもないのに
自分の気持ちを
ぶちまけて相手を困らせたり…
今となれば
自分の気持ちは、
タイミングよく伝えなければ
響かないことや
相手に遠慮して
嫌なことでも肯定するのは
ケースバイケースなんて
経験して学んでしまう。
まぁ、わかってるのに、
出来ないので同じか。
本作を、あぁあの感じ
懐かしい
と思うか、
なんだこれ
って思うかは、
意見がわかれそうだけど
ノスタルジックで
いいですよ。
切なさで押しつぶされそうになる
若干のネタバレあり
“僕”も静雄も佐知子も
傷つかない為に
傷ついたとして痛みを最低限に抑える為に
無意識に感情を伏せてる
でも各々が潜在的に抱えてる気持ちが溢れ…
勝手に“僕”に、静雄に、そして佐知子にさえも感情移入してしまいました
終わった直後ではなく
帰る為の車まで歩いてる間に
映画を反芻していたとき
胸締め付けられ涙が溢れた
良作です
最後に
上手くいく上手くいかないは別として
自分の素直な気持ちを表現できた
“僕”に 幸あれ
青春時代の儚さは現在も変わらないかしらん
以前のバイト先で知り合った静雄(染谷将太)と同居生活をしている僕(柄本佑)。
いまは大型書店でバイトをしているが、無断でサボったりもしている。
同じ職場で働く佐知子(石橋静河)から誘われ、以降、静雄も含めて、三人で毎日毎夜、遊んでいる・・・
というところから始まる物語は、まぁ、話としてはそれだけ。
ふたりの男性のあいだで揺れる佐知子の心情や、男性ふたりの微妙な友情が、ダラダラとした生活のなかで描かれていますが、それはユルイといえばユルく、相手の奥深いところまで突っ込んでい行かないあたりの微妙な距離感があって、そこいらあたりがこの映画の魅力・・・
なのだけれど、この若者の生き方って現代のそれなのかしらん、と脳裏をかすめていきました。
気になったので調べてみたところ、原作小説は1980年代はじめに書かれたものなので(原作者・佐藤泰志は1990年に命を絶っている)、モラトリアム世代の青春時代に重なる。
バブルがはじける前の、社会に出る前の浮草生活が許容された時代ならば、こういう生き方も可能だったろうし、また、可能だった。
遅れてきたモラトリアム世代としては、かなり、これに近いような生活だった・・・と思う。
でも、現代でこんな生活可能のかしら。
社会に出るに出られない閉塞感からくる浮草生活ではないだろう・・・と。
現代を舞台にしたならば、退職後のアラ還世代の男女三人で描けば、納得もできたかもしれない・・・なんてことも思ったりして。
とはいえ、他者との深い関係を拒否・忌避しながらも、最後の最後に自分の中にある熱い気持ちを肯定する・・・という僕の変化が、青春時代特有の儚さでもって描かれた佳作です。
ダラダラしてるが好きな映画
ストーリー自体にはあまり引っかかりませんでしたが、雰囲気が自分にフィットし、とても気持ちよく観れました。好きな映画です。
ダラダラした話で内容の割には尺もダラダラと長く、本来嫌いなタイプなのですが、ぜんぜん気になりませんでした。
若くて、何者でもなくて、何者にもなるメドも立たない3人が、コンビニで酒買ったり、夜道を歩いたりするシーンはおしなべてグッときました。
はっきり言って、自分自身の体験と重なるため、ノスタルジックなんですよ。あの、夜明けが近づいた夜空の青さとか、道路の街灯の感じとか。夜が明けるとシラけた街並みになるところとか。モラトリアムだが何かに向かってる訳でもなく、そして同じような状況の友だち同士で笑い転げながら夜を彷徨ったことのある人…つまり閉塞した青春を送ったことのある人は、なーんか胸を鷲掴まれるのではないでしょうか。
また、主演3人の顔がイイんですよね〜。柄本佑は、顔が汚くて超良い。色気があって、でも声が軽い。髪型が最悪に似合っておらず、それもまたいいんですよね。染谷将太はきれいな作りの顔ですが、なんかオドオドして奇妙な雰囲気。
石橋静河は、綾瀬はるかみたいに美人に見えるときもあれば、ブサに見えるときもあり、色気もあるんだかないんだかわからない。でも声は色っぽい。『夜空はいつでも最高密度の青色だ』でも味のある演技を見せてましたが、本作もいい感じでした。しかも似たような役どころだし。下流モラトリアム女子を演じさせれば、もはや右に出るものはいないのでは、と思わせるほどです。石橋静河、顔が好きとかではないんですが、この2作ですっかりファンになりました。
柄本佑演じる主人公は名前がなく、それが主人公を象徴してます。まだこの世に形を持って存在出来ていない。彼は自分にコミットできず、気持ちに触れることを避けて生きています。彼は苦悩できない。情動を感じる痛み、苦悩する痛みを極端に恐れている、臆病でナイーブな男なんだなぁと感じました。
そんな彼ですが、佐和子と関わることで、作品の終盤で小さな変化が生じます。逃げ続けた男がついに勇気を振り絞る瞬間が描かれており、実に胸が熱くなりました。また、映像や演出が優れていて、見事な盛り上がりを見せるのです。まさに映画の醍醐味、という感じで、大変素晴らしかったです。あと、やはり恋は良いですね。
演出も印象に残りました。語り手ではない人をアップにするとか、撮り方がユニークで印象に残りました。画面の陰影も雰囲気ありました。
わずかにイチャモンをつけるとすれば、主人公たちは閉塞してる割にはカネ持ってるな、ってとこでしょうか。けっこう佐和子が支払ってる場面が多かった気がしますが、店長からカネを引っ張ってきてたのですかねぇ。
時間と金の無駄
学生でもないのに自堕落で無軌道な生活を送る男女。何の魅力も感じられない「僕」になぜ「佐知子」が安易に身体を許すのかも理解不能だし、芸達者の染谷将太を起用しながら生気に乏しい「静雄」はもったいない。佐知子は店長との関係清算を機に書店を辞めた後も一人暮らしをしている様で、コンビニでのおごりなど金回りが良いのも不思議。周囲の年長者たちも一人として人生が充実しておらず、鬱勃とした自嘲が三人の刹那的な生活を助長する。登場人物の誰にも共感できず、敢えて原作から変えて函館に写した舞台もまったく魅力的に見えない。感性が近い人だけを対象とした内輪受け狙いか。
都会でも田舎でもない街に馴染む役者たち
とてもリアルな時間だった。
最初に出会ったのは僕で、危ういバランスの3人が
居心地よくて、楽しくて、きもちよくて、でも絶対長くは続かない。
ラスト、なにも言えない、あの沈黙にどうしようもない気持ちがごちゃ混ぜになって吐きたかった。
なんか落ち着いて考えたら佐知子は店長と僕の間でゆれていたり、店長を清算したとおもったら静雄と関係を結んでいたりと、なんともふらふらしている。でもそれが
女なんだろう。嫉妬させてみたり駆け引きだったり、したくないけどしてしまうし、よく分からない関係をはっきりさせたかったりさせたくなかったり、わけが分からないのだ。周りにも本人にも。そんな女に振り回される男もいればそんな女を作り出す男もいる。人を好きになるのは、人が人と付き合うのは難しいのだ。
函館という今作の舞台にかんしては、
都会でもなく田舎でもない、この街で起こる惚れた腫れたはリアルで良かったとおもう。原作の舞台は東京だそうだが、田舎の人間には「東京」という場所にはなにか不思議なフィルターがかかるのだ。きっと舞台が東京だったら、こんなに感情移入できなかったとおもう。
とりあえず今は原作が読みたい。
あ、書店の同僚の男の人間の小ささすごく好きだった。
あんなどうしようもない奴にイライラしてほっときゃいいのに同じ土俵でたたかってしまう愚か者。
実際にいたらめっちゃめんどいけど、今作では一番の愛されものではないのだろうか。
ほんとちいせぇよな笑 かわいいわ笑
もう一回みたらまた違う見方ができるのかもしれない。
とりあえず原作よみたい。
映像の色や音楽もスキです。
原作を知らないのですが、ミニシアターには
ぴったりの作品だと思いました。
石橋さんが美しく歌もダンスも上手く、フィーリングという物はどのタイミングで誰に合うかは わからない
所が楽しい。性格が良いから仕事が決まる訳でもなく、
自分に合う人生き方を見つける大変さも 感じました。
染谷くんのお兄さんが萩原さんではないか?とかその先の想像も色々考えてしまいました。
タイトルが関係なくなっている(著作権だと思うけど)
著作権の関係上かビートルズの曲が物語との関係が全く無くなっている。
この映画の監督自体が北海道出身で佐藤泰志さんと縁深い函館を使っての舞台チョイスかもしれないが安直な気がします。
原作の息苦しいまでの空気感を現代に置き換えるならやはり東京の閉鎖的な世界観が適切だと思いました。
ただ、傑作ですね。
この監督と仲の良い3人の役者さんが演じてる場面が素晴らしい。 が故に、ほかの脇役陣がどうしてもステレオタイプに見えてしまう。代表的なのが萩原聖人
役者に限らず、美術も自分が好きな部分はものすごくリアリティを感じるけど、その他はすっごくアッサリ…と言う具合
3人との関係性がこの奇跡みたいな演出を埋めたんだと思う。
そう思うと、濱口監督の演出と差を感じてしまう。
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