エリザのために
劇場公開日:2017年1月28日
解説
2016年・第69回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞し、「4ヶ月、3週と2日」(パルムドール)、「汚れなき祈り」(脚本賞&女優賞)に続いて、3度目のカンヌ映画祭受賞を果たしたルーマニアの俊英クリスティアン・ムンジウの長編作。イギリス留学を控える娘エリザを持つ医師のロメオ。ある朝、登校途中に暴漢に襲われたエリザは、留学を決める最終試験にも影響を及ぼすほど大きく動揺してしまっている。そんな娘の試験合格のため、ある条件と引き換えに温情を与えてもらおうと、ロメオは、警察署長、副市長、試験監督など、ツテをたよりに奔走する。そんな父に娘は反発し、ロメオには検事官の捜査の手が迫ってきていた。
2016年製作/128分/G/ルーマニア・フランス・ベルギー合作
原題:Bacalaureat
配給:ファインフィルムズ
スタッフ・キャスト
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外国での生活が長かった人、帰国子女の来歴をもつ人が、しばしば、日本人の習俗を、揶揄するのを見たり聞いたりすることがある。
論調はほぼ一律で、平和ボケで、のほほんと生きていることを、あざけっている。
耳に痛い反面、よけいなお世話だとも思う。
ただ日本しか知らないじぶんも、かれらが、どうしてその手のことを言いたくなるかは、想像が付く。
社会が不安定な国の映画には、その緊張があらわれる。
それは、映画技術であらわせない。
どうしても絵にへばりついてしまう、ダイナミズムであり、ことなる国の観衆に、いやおうなしに、じぶんの生きる世界との比較をさせる空気感である。
自然に帯びるそれに加えて、映画がうまいなら、なおさら圧倒される。
たとえば、
アンドレイズビャギンツェフ
アスガーファルハディ
ヌリビルゲジェイラン
いずれも先進な国家で社会が不安定というもの失礼だが、日本に比べてしまうならロシア~ヨーロッパは依存や他助が身を滅ぼす非情な世界であろうと思う。
その緊張がかれらの映画にはある。
韓国映画にもその種の緊張がある。
良識があるなら、外国体験のない日本人とて、じぶんたちが比較的甘い世界の住人であることは、知っているはずだ。
抑圧されてきた小国。チャウシェスクのルーマニア。クリスティアンムンジウの映画にもその緊張がある。4月3週2日のような、ひりひりする社会主義の爪痕がこの映画にもあった。
主人公は、不倫も不正もするが、誤解をおそれずに言えば、それをする妥当性が感じられる。真摯な父親だと思う。
父親は娘が留学試験を通って、不安定な小国を抜け出し、民主主義のもとで学び、幸福になってくれることを、切望している。
娘の揺らぐ気持ちを懐柔しようとして、父親はこんなことを言う。
「ロンドンの公園に行くとね、緑のなかからリスたちが寄ってくるんだ、おとぎばなしみたいでほっぺたをつねりたくなるぞ」
自国に対する諦めと一縷の望みである娘の幸福。民主化のために闘争をつづけてきた彼にとって、外国は夢のような国なのである。
娘と母も、それぞれの立場と、気持ちがわかる卓越した演出だった。
すなわち、帰国子女の論調は、そのまま外国映画と日本映画の対比に流用できる。
これだけ理知なペーソスを描ける映画監督が日本にいるんだろうか──と、毎度ながら反面してみると、わたしたちが平和ボケで、のほほんと生きているとの見解は、はいそのとおりだと思いますとしか言いようがない。
2019年5月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
画面も暗いが物語も暗くて重い。どんどこ急降下、どこまで堕ち続けるんだいい加減にしてくれと、観ている方が酸欠になりそうな心苦しさ。首までどっぷりはまった泥沼から、這い出すどころか、もがけばもがくほど、にっちもさっちもいかなくなる。もはや自暴自棄に走る道筋ばかりか?と思いきや、最後の最後に、小さな救いが。それもかけがえのない光を一筋、煌めかせて終わるところなんざ、心憎い。映画は好きじゃないけれど、確かに手応えある監督。で、犯人は誰だ?
2018年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ルーマニアの医師が主人公、若い愛人と逢引き中に一人娘が暴漢に襲われ病院に運び込まれる。
イギリス留学のための試験目前だったので、ツテを頼り善処を頼み込む。
これを娘に知られてしまい、更には検事が動き始め、妻に愛人のことがばれてしまい・・・。
悪い人じゃないのだが。
2017年8月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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イギリス留学を控える娘エリザを持つ医師のロメオ。ある朝、登校途中に暴漢に襲われたエリザは、留学を決める最終試験にも影響を及ぼすほど大きく動揺してしまっている。そんな娘の試験合格のため、ある条件と引き換えに温情を与えてもらおうと、ロメオは、警察署長、副市長、試験監督など、ツテをたよりに奔走する。そんな父に娘は反発し、ロメオには検事官の捜査の手が迫ってきていた。
結局エリザは自分の力だけで試験を乗り切って卒業する。
自分のことは自分で決めることを決めていた。