エンドレス・ポエトリー 劇場公開日:2017年11月18日
解説 「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」などでカルト的人気を誇るアレハンドロ・ホドロフスキー監督による自伝的作品「リアリティのダンス」の続編。故郷トコピージャから首都サンティアゴへ移住したホドロフスキー一家。さまざまな悩みや葛藤を抱えたアレハンドロ青年は、後に世界的な詩人となるエンリケ・リンやニカノール・パラら、若きアーティストとの出会いにより、自分が囚われていた現実から解放される。前作に引き続き、ホドロフスキー監督の長男ブロンティス・ホドロフスキーがホドロフスキー監督の父親役を、青年となったホドロフスキー監督役を、末の息子であるアダン・ホドロフスキーが演じる。撮影は、本作がホドロフスキー作品初参加となるクリストファー・ドイル。
2016年製作/128分/R18+/フランス・チリ・日本合作 原題:Poesia Sin Fin 配給:アップリンク
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主に父親の話だった「リアリティのダンス」の続きであり、前作からのキャストが続投していてオペラ歌唱で喋る母親もそのまま出てくる。ただ、オデッセイアのような流浪の日々から帰還した父親は、前作の成長をリセットしたかのごとく脇役に回り、大きな役割を果たすのはようやくラスト寸前。なので本作は「リアリティのダンス」の続編といより、ホドロフスキー本人が自分の若い頃を再創造した別個の青春ファンタジーと捉えた。 想い出が自分自身のものだからなのかはわからないが、ハチャメチャさは「リアリティのダンス」の方が上。しかし時代を踏まえた青春物としてはこちらの方がストレートに伝わってくる。それでも一番心を揺さぶられたのはラストの父親との和解だったりしたのだが。 自らの人生をイマジネーション豊かに語り直すこのシリーズ(と言い切ってしまうが)、老ホドロフスキーには心ゆくまで好き放題に続けていただきたい。あと何本観られるのかな。
2017年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
晩年になって二度目の全盛期を迎えているかのような活躍のホドロフスキーだが、「リアリティのダンス」に続く自伝映画第二弾。今回は家族がサンティアゴに移ってからの青年期の出来事を詩的な映像美で描いている。 世界的な詩人との出会いや、アーティストたちとの共同生活を経てホドロフスキーの感性が磨かれていく時期なだけに前作よりもさらに感覚的というか、理屈ではない組み立て方をしている作品だ。クリストファー・ドイルの撮影も素晴らしい。ホドロフスキーとは相性がいいと思える。 詩人であり恋仲になるステラ・ディアスを母親役のパメラ・フローレスが兼任しているのは興味深い。青年時代のホドロフスキーは彼女に母親の影を見たから愛したということだろうか。 次回作はパリ編になるようなので、それも今から楽しみだ。
2020年5月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館
劇場公開時以来久しぶりに鑑賞。 凄い作品だった。これまた極上の魂の救済の物語。ホドロフスキー作品は全てが魂の救済の物語。自分の本当の心を生きる。世間体や他人の期待、自他が作ったルールに縛られて本当の気持ちを押し殺して生きることは罪。自分を隠さず、何がなんでも自分自身の心を生きて生きて生きまくれ!そうすることで完全なる光に近づく。ホドロフスキー監督の力強くて愛のこもったメッセージに涙が出た。彼の思想と芸術が本当に大好きだ。作品の芸術性の高さは言うまでもない。真の芸術家アレハンドロ・ホドロフスキー。魂で描いているから、衰えやブランクやスランプによる作風の変化といった一般的な常識とは無関係。本当に素晴らしいと思う。 音楽の素晴らしさにも泣かされた。ホドロフスキー作品はどの作品も音楽の素晴らしさに触れずにはいられない。本作にはそのホドロフスキー作品の音楽が集約されている。「エル・トポ」の曲、「ホーリー・マウンテン」の曲など、これまでのホドロフスキー作品の音楽が次から次へと流れる。最後の友との別れのシーンでは「サンタ・サングレ」のフェニックスとアルマの別れのシーンの曲(La Barca de Oro)を「サンタ・サングレ」でフェニックスの少年時代を演じたアレハンドロ役のアダンがギターで歌う。鳥肌が立った。この様にホドロフスキー監督の過去作の音楽が所々で流れる。過去作とのリンクを感じて鳥肌が立ち涙が出た。 ラストシーンも本当に素晴らしい。父との別れのやり取りや、「リアリティのダンス」のラストとリンクするラスト。最初から最後まで驚きと感動に満ちていて素晴らしかった。スタンディングオーベーションもの。既に「エル・トポ」、「ホーリー・マウンテン」といった大傑作を創造しているのに、90歳間近でまだまだ大傑作を産み続けるホドロフスキー監督恐るべし... これが歴史に名を残す様な真の芸術家か。