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やりたいことやりきりました!ああそう良かったですね、って感じの映画。
有名キャラクターもののディストピア化自体嬉しくないのに、また日本映画はそういうのをやる。
原作「キューティーハニー」の敵は無限の財宝を夢見る欲深い犯罪結社・パンサークロー。しかし本作ではその存在自体ナシ、その代わり女幹部の(シスター)ジルは強欲な富裕層の為に都市管理をするハニー(瞳)の後継AIで、ひと握りの人間のためのユートピアを保つため欺瞞的な秩序を守り続ける…ってその構図「人造人間ハカイダー」('95)でやったよ!リメイクと言えばそればっかりか東映は!
実際CG以外の映像は説得力あるし、アクションはめっちゃ頑張ってるんだけど、そもそもの大前提がノれない。作り手の「キューティーハニーという題材を使ってこういうのやったら面白いんじゃないかな」と、観る側の「キューティーハニーと聞いて見たくなるもの」がまず噛み合ってないので、凝ったものを作られても裏切られた気分になる。(もしくはオリジナル作品だと誰も見てくれないからハニーの名を借りて…っていうこと?それはそれで情けないけど…)確かにハニーのバックボーンって年頃の少女が実は空中元素固定装置を埋め込まれたアンドロイドで…って悲壮感はあるけど、そういうのはまず華やかな七変化や胸のすく大活躍を見せてくれるハニーだから良い意味で辛いのだ。皆さんはお色気が足りないと言うだろうが、加えて僕にとっては長剣を片手に銃武装した男どもをサクサクっとあしらい、余裕の笑顔で「ある時は、ある時は」と名乗りを上げる、あの軽妙さ、頼もしいまでの「強い女」感がハニーなのだ。瞳は愛想がないし、いちいちバトルがいっぱいいっぱい過ぎて、あまり強そうに感じない…。せめてOP曲くらいかけてよと言いたい。ただ黒くてカッコよさげなもので固めただけでは「今時のいい映画」にはならない。ハニーフラッシュの直後申し訳程度に「この頃流行りの…」と流れかけるのに作り手の本音が見え隠れする。曰く「現代でキューティーハニーをやるのはカッコ悪い」と。なら最初から作るなや。「涙」ってタイトルにつけて警告したつもりか。
じゃあハニーとして見なきゃいいんじゃないと思うかもしれないが、ラブストーリーにしちゃフラグが雑だし、主演女優のプロモーションというなら彼女が演じる「瞳ちゃん」が観客に好感持たれなきゃ失敗でしょ?
まとめるとこの映画、「なんとな〜く暗くて黒くてダークでニヒルっぽい雰囲気」で「キューティーハニーの(作り手から見た)ダサさ、チャチさ」を塗り潰してる内に終わっちゃう映画。言い訳映画なのだ。少なくとも僕にはそうとしか見えなかったです!
「泣ける」ハニーなら90年代のリメイク作「キューティーハニーF」、実写のハニーなら原幹恵さん主演のドラマシリーズ「キューティーハニーTHE LIVE」が個人的オススメ。どっちも本作よりよっぽど原作への「敬愛」があります。
あと状況説明や見せ場に持っていく流れが不恰好すぎる。どの層が見て喜ぶのか分からない謎TVもそうだし、適当に身内を不利に追い込んで、笑顔で「ありがとー!」って言わせるだけの舞台装置としての子どもはいい加減やめて。あの状況で周囲を顧みずゴネるような年頃には見えなかったぞ。