トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

ALLTIME BEST

劇場公開日:

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

解説・あらすじ

「ローマの休日」など数々の名作を生んだ希代の脚本家ダルトン・トランボの波乱万丈な人生を、テレビシリーズ「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストン主演で描いた伝記ドラマ。

脚本家トランボはハリウッド黄金期に第一線で活躍していたが、冷戦の影響による赤狩りの標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒んだために投獄されてしまう。釈放された後もハリウッドでの居場所を失ったトランボは、偽名を使用して「ローマの休日」などの名作を世に送りだし、アカデミー賞を2度も受賞する。逆境に立たされながらも信念を持って生きたトランボの映画への熱い思いと、そんな彼を支え続けた家族や映画関係者らの真実を描き出す。

トランボを演じたクランストンが第88回アカデミー賞の主演男優賞にノミネート。共演に「クィーン」のヘレン・ミレン、「マレフィセント」のエル・ファニング、「運命の女」のダイアン・レイン。監督は「ミート・ザ・ペアレンツ」のジェイ・ローチ。

2015年製作/124分/G/アメリカ
原題または英題:Trumbo
配給:東北新社
劇場公開日:2024年11月1日

その他の公開日:2016年7月22日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第73回 ゴールデングローブ賞(2016年)

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) ブライアン・クランストン
最優秀助演女優賞 ヘレン・ミレン
詳細情報を表示

“観る楽しさ”倍増する特集をチェック!

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11
  • 画像12
  • 画像13
  • 画像14
  • 画像15
  • 画像16

(C)2015 Trumbo Productions, LLC. ALL RIGHTS RESERVED Photo by Hilary Bronwyn

映画レビュー

4.0映画史を俯瞰する上で欠かせない時代の傷跡を扱った硬派なドラマ

2017年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

知的

この脚本家の半生はとびきりのドラマに満ちている。当人にしてみれば苦闘の連続だったに違いないが、彼をこれほどの逆境へと追いやったことで歴史に名を残すほどの名作が誕生したのだから運命とは皮肉であり、滴り落ちる水、打ち続けるタイプライターのキーが巨大な岩を砕くことだって往々にして起こりうるのだ。初めはイデオロギーに関して頑なだった彼が、自身の投獄や仲間を失ったことで徐々に戦略的になっていく様の、まさに「史実は小説よりも奇なり」の巧みな転身ぶり。またそんな彼を支える家族の団結力もまた、映画に独特のダイナミズムをもたらしてやまない。そんなドラマを堪能しつつ、第二次大戦後の映画界に吹き荒れたレッド・パージの様子を追放される側から描く視点は、映画の歴史についてもっと知りたいと思う者にとって大きな財産となるだろうし、この潮流の中で有名スターたちが各々どのような主張を展開していたのかもわかって勉強になった。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
牛津厚信

4.5現在、ハリウッドに民主党支持者が多いのは、マッカーシズムの反動・・・と聞いたことがあります。

2025年2月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
よし

3.5エンタメに徹した共産主義者

2025年2月12日
PCから投稿

トランボの脚本からイデオロギーは感じない。それに驚嘆する。ハリウッドに敵視されるほどの思想をもっているなら作品にそれがあらわれてしかるべきだからだ。ところがトランボの書いたのはすべて完全なエンタメで、しかもゴーストで書いたのが二度もオスカーを獲るほど天才だった。トランボの脚本は才能にあふれていたがイデオロギーはいっさい漏れ出なかった。ローマの休日に共産主義を感じますか?

このことをわかりやすくするために逆の例を言うと新聞記者を書いた某記者にはイデオロギーはあったが才能はなかった。いやイデオロギーなんてものもなくて自己顕示欲だけがあった。だが映画新聞記者は賞をとったので某記者のようなごろつきリベラルの地位を向上させてしまった。日本映画界自体がリベラルがつくってリベラルがほめそやす構造をしているからだ。キネマ旬報系のお百姓さんたちが年度ごとに集まって荒井晴彦がベストで山崎貴がワーストというリストをつくっては悦にひたっているのが日本映画界。ぜんぜんいらない。とっとと滅んでしまえ。

ただし映画トランボは操作的であるとも批判されている。批判がでるだけでもさすがハリウッドである。あんだけばかな内容だったにもかかわらず映画新聞記者を公的に批判しているやつはいなかった。知ってのとおり新聞記者は政府が内緒で細菌兵器つくってまんがなという超弩級与太話なんだがそれを日本中がほめた。繰り返すがリベラルがつくってリベラルがほめるそれが日本映画界だからだ。

操作的であるとする批評家の言及は、共産党がたんなる野党のように見えてしまうこととブラックリストに載った者が全員無実のように見えること。
トランボは事実上マルクス・レーニン主義を根底とするスターリンや金日成を含むソ連式共産主義の支持者だった。共産主義は基調的に暴力革命を辞さない姿勢を是としている。むろん日本共産党もそうだ。だったら警戒はまぬがれず、やみくもに迫害されたわけではない。それが映画では不当な弾劾をうけたような見え方をしていると指摘された。
ただなぜトランボの脚本人生がドラマチックだったのかといえば赤狩りの真っ盛りだったからだ。映画はたしかに操作的で、トランボの陥った悲運に同情的である。とはいえ赤狩りという特殊状況下にあったことをかんがみるとトランボに同情せざるをえない。
この事情をつきぬけるのがトランボの才能だった。トランボは作家としての能力をすべてエンタメに転化していた。繰り返すが、それに驚嘆した。

たとえば日本で思想をもった人を想像してみたとき、彼/彼女はエンタメをつくれますか?たとえばフェミニズム。しおりさんは自身の体験をエンタメにできましたか?だれでもいい、リベラルなやつをつかまえてきて、彼/彼女はその思想がいっさい漏れ出ないエンタメをつくることができますか。・・・。日本人にはそれが難しく、概して日本の思想家活動家は思いを物語にトランスフォームすることができない。日本の思想家活動家にローマの休日が書けますか?つまりトランボは天才脚本家なだけでなく、ものごとを分けて考える分割思考力があった。

たとえば映画に出てくるトランボの仲間で癌で亡くなるアーレン(Louis C.K.演)は架空の人物だそうだが、かれは自身の共産思想を作品「エイリアンと農夫」に投映させた。エイリアンが労働者の権利を語り、資本主義の病理と中産階級の慢心を説く・・・。これじゃ俺まで赤狩り公聴会に召喚されちまう──と、B級映画製作会社キングブラザーズのジョングッドマン演を怒らせた。
つまり凡人の思想家活動家が脚本を書けばそうなる。考え方の土台となる共産思想が物語にもにじみでてくる。それがトランボにはなかった、そのことに驚嘆したという話。

そんなトランボにも自らの思想を投映したやりたい映画があってそれが原作脚本監督をしたジョニーは戦場へ行った(1971)だが、それ以外は個をおしころして受注作品や恋愛や西部劇をかきまくった。ウィキをみたらフランクキャプラのIt's a Wonderful Life(1946)にも初稿参画していたしパピヨンもトランボが書いた。
つまり、この全体像のなにがすごいのかというと、内情を知らない我々から見えることに過ぎないが、彼の人生には共産主義らしき左翼的あるいはリベラル的な行動がなかった。逆に言えばなぜ共産主義を標榜していたんだろう。なぜそれを主張する必要があったのだろう。共産主義的なことをしないのに。

今(2025年2月)アメリカには赤狩りのような粛清が敷かれている。推進しているのはトランプ大統領とイーロンマスクだ。トランプは就任早々大統領令に署名しまくって国土から不法移民を、女性競技からLGBTQを追い出した。先日マスクは何百兆円という不透明なお金の使い方をしていたUSAIDという海外支援団体を鶴の一声で解体させた。コラボの何百倍もの規模で公金をちゅうちゅうする第三セクターを一瞬でなきものにしたということだ。
そういうことをがんがん実践するトランプやマスクはひでえのか?と・ん・で・も・な・い。庶民にとってみたらLGBTQも意図不明なNPOもたんなる利権にすぎない。リベラルや多様性を掲げる意識高い系は「差別だあ」と叫んでお金儲けをしている活動家、我田引水事業主にすぎない。
わたしたちが今のアメリカに見ているのは有言実行という日本ではSFになってしまった言葉の実演なのである。

すなわちトランボはラストのアメリカ脚本家組合ローレル賞の受賞スピーチにおいていわれなき迫害をうけたこと、結果的にダイアンレイン演じる妻やエルファニング演じる娘たちに苦渋を強いたことを観衆に向かって泣訴するのだが、そりゃアメリカのせいというよりはあなたが共産主義者だったからだろう。
でもトランボはローマの休日やオールウェイズや数々のいい話を書いて庶民を楽しませた天才だったのでそれらが許容できる──そんな話だった、と個人的にはとらえた。

カークダグラス役もジョンウェイン役も似ていなかったがエドワードGロビンソン役のマイケルスタールバーグは似ていたと思う。苦み走った顔付きでいろんな白黒映画で見た記憶がある。
imdb7.4、RottenTomatoes75%と79%。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
津次郎

4.0【米ソの冷戦下で起こったハリウッドでも行われた赤狩り。人権、名誉、仕事、命を失った人達の中で、稀代の名脚本家ダルトン・トランボが後世に残る名脚本を書く姿を、彼を支えた家族の姿と共に描き出した逸品。】

2025年2月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

幸せ

ー 赤狩り:狭義では1940年代末から50年代にかけて、共和党議員ジョセフ・マッカーシーらによって、”共産主義者”とレッテルを貼られた人たちがはっきりとした根拠なしに攻撃された時代。ドナルド・トランプを育てたとされる悪名高いロイ・コーンがジョセフ・マッカーシーの右腕で有った事は、有名である。ー

◆感想<Caution!内容に触れています。>

  今作では、自由の国アメリカで70年前にこのような非人道的な事が行われていた事を、そしてハリウッドでも行われていた事を描いているのである。

  但し、今作ではダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)達、ハリウッド・テンを生み出し、ブラックリストを生み出した当時の政治状況を明らかにする中で、赤狩りに加担したゴシップジャーナリスト、ヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン)などを登場させているが、主としては闇の時代においても、名を変えて脚本を書き続け、別名義でオスカーを二度も獲得したダルトン・トランボを支え続けた、妻クレオ・トランボ(ダイアン・レイン)を始めとした家族が彼を信じ、葛藤の中支える姿を描いているのである。

  今作を観ると、高名な俳優やその後大統領にまでなった人物が、非米活動委員会のメンバーだった事が分かるのである。

  だが、ダルトン・トランボが、自分の脚本が名前が出ない事が分かっているのに、一日18時間、週7日間働くのである。そして、漸く70年代にその名誉が回復された時に、彼が満場の観衆の前で行うスピーチは感動的である。

<トランプが再び大統領になり、日本を含めた世界は成り行きを見守っている。だが、私は彼が掲げる自国ファーストという思想や、力で相手を屈服させる政治手法が大嫌いである。望むべくは、再び赤狩りの様な思想統制が、ロシア、中国に次いでアメリカでも起こらない事を願うのみである。
 今作では、突然”共産主義者”である(あった)という事実のみで(劇中で描かれているように多くの人は無関係である。)人権、名誉、仕事、命を失った”赤狩り”という思想統制の恐ろしさと、それに屈せずに家族と共に戦った稀有な脚本家の半生を描いているのである。>

コメントする 1件)
共感した! 12件)
NOBU