劇場公開日 2016年6月11日

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裸足の季節 : 映画評論・批評

2016年5月31日更新

2016年6月11日よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほかにてロードショー

少女たちが因習的な価値観に抗い、闘いに挑む姿を清々しく描き出す

ソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」は、10代の女の子にしかわからないふわふわした情感が渦巻く正真正銘のガーリームービーだった。一方、同じく5人のティーンエイジャー姉妹を主人公にしたこの映画は、自由と自立を勝ち取るための闘いを10代の女の子でなくとも共感できる形で描いている。

5人姉妹の敵は、両親亡きあと保護者となった祖母と叔父。そして彼らの因習的な価値観だ。姉妹を立派な人間に育てることではなく、立派な花嫁に仕立てることが教育だと信じている祖母と叔父は、男子生徒と騎馬戦で遊んだ姉妹の純潔を疑い軟禁。さらに、脱走をはかってサッカー観戦に行った姉妹を監禁する。これは、祖母と叔父の基準では「しつけ」、姉妹や西欧社会の基準では「虐待」にあたる行為だ。宗教的な背景も絡むなか、両者がどう線引きされるかは、この映画が提起している問題のひとつ。同時に、祖母をはじめ因習に泣かされてきたはずの村の女性たちが、寄ってたかって姉妹を因習に従わせようとする姿を描くことで、性差別は女性側の意識から改革しなければならないことを強く印象付ける。

注目すべきは、この問題を扱うデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督の演出の巧みさだ。テレビ中継を通じて姉妹のサッカー観戦を知った祖母たちが、男性陣にバレるのを防ぐために電柱を破壊するエピソードは、劇中最も笑いを誘う。最も重い問題を最も軽やかに描くところに、この監督のセンスを感じる。

姉妹はひとり、またひとりと強制的に嫁がされる。保護者が叔父から夫に代わるだけの無力な人生。それでも、見合い相手のお茶にツバを入れるようなささやかな抵抗を試みる姉妹の、闘う姿勢が胸を打つ。末っ子のラーレは、そんな姉たちの無念さを晴らす存在だ。車の運転を覚えることで自立のパスポートを手に入れたラーレは、人生の主導権を握るための最後の闘いに挑む。その姿を、大人社会に宣戦布告する「小さな恋のメロディ」の子どもたちのように清々しく描き出した監督の手腕に魅了された。

矢崎由紀子

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