ルームのレビュー・感想・評価
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”リアルな世界” とは何か
「部屋」は、彼にとって「世界」のすべてだった。ジャックにとって、外の世界は宇宙だ。初めて本物の「空」を見た時の彼は、驚きと希望で満ちており、見ている側にも高揚感を抱かせる。
「こんなに世界って美しいんだ」そんな気持ちにさせてくれる映画だと思う。
ブリ―・ラーソン演じる女性の心の葛藤もリアルだ。「部屋」では、「母親」であることで保たれていた心が、「部屋」から出ることで、彼女は「母親」であり、性的虐待、監禁を強いられたひとりの被害者、「女性」であった。そして、彼女の両親にとって彼女の子供は「娘を犯した男の子供」でもある。
「部屋」から出たら、おしまい、なんてならないところが、まさにリアル。現実社会に生きる葛藤、葛藤に打ち勝つ希望を見事に描いた作品だったと思う。
その作戦でいくか
脱出モノ、母と子とくれば母親の気概を見せつけてくれるのかと想定するが、そんな安易な発想は見事に吹き飛ばしてくれる。ここにあるのは神経質な実存的な母親像。決して感じ良くない。愛情も欲するし、被害者意識も膨らむ、外面も気にするし、子供を気遣う余裕もなし。周りの設定や対応も実にリアル。母子に完全にフィットするような救済策を持ち合わせている訳でもない。大きなトラウマから時間をかけて立ち直っていく母子の姿を優しく見守る。最後のRoomに別れを伝えるシーンは名シーン。最初にはった伏線を見事に回収してくれる。
“ルーム”だけじゃない、この広い“世界”はあなたの為にある
評判に違わぬ傑作だった。
アカデミー賞の傾向からして作品賞は無かったが、最も心に残る作品である事は間違いない。
現時点で今年の洋画ベスト候補だ。
何の予備知識もナシに本作を見たらその異常な設定に困惑するだろう。
地下室のような狭い部屋に、若い母親と幼い息子の二人だけ。
母親ジョイは高校生の頃に男に誘拐され以来7年間も監禁、5歳になった息子ジャックはこの部屋で産まれた。
冒頭から緊張感を孕み、すぐ引き込まれた。
二人にとってこの“部屋”が“世界”。
ジャックは外の“世界”は“宇宙”と信じている。
この“部屋”以外のものは本物じゃない。
外を知るジョイには“部屋”の暮らしは苦痛だが、ジャックにとってはこの“部屋”が全て。
…が、あいつが居る。時折やって来るあいつが。
暴力的な一面を表すあいつから息子を守る為、遂に“部屋”からの脱出を決意、決行する。
ある物語からヒントを得た脱出作戦はスリリング。
実際見てハラハラして欲しいので詳細は伏せるが、キーはジャック。
(それから、女性警官の名推理がスゲェ…!)
実際にあった事件を基に作られた本作。
その基の“フリッツル事件”は調べてみるとかなりエグいが、本作は監禁生活~脱出のキワモノ的サスペンスではない。
“その後”こそがメインだ。
遂に救出された二人。
待ち望んだ外の“世界”。
しかし…
ジョイにとって監禁されていた空白の7年間は大きかった。
“部屋”しか知らないジャックにとって“世界”は広すぎた。
この“世界”は自分が居ていい場所なのか、自分はこれからどう生きていけばいいのか、どう再会した家族や失われた時間と向き合えばいいのか…。
“世界”は二人にとって“部屋”以上に生きにくい場所…。
我々の知らない長期監禁被害者の実態を突き付ける。
前半の息が詰まりそうな限定空間、後半は静かに深くじっくりと…レニー・エイブラハムソンが卓越した演出力を発揮。
そして、本作の“命”であるブリー・ラーソンとジェイコブ・トレンブレイ。
この二人にはどんなに言葉を並べても足りないので、ただ一言だけ。
その演技に心打たれた。
監禁生活中のTV取材を受けたジョイに、インタビュアーが投げ掛けた言葉が痛かった。
あまりにも酷い辛辣な意見だったからじゃない、一理ある意見だったからだ。
確かに、他に最善策はあったかもしれない。
幼い子供に母親の存在は不可欠だが、本当に子供の事を思ったら、監禁男に頼み込んで子供だけでも安全な場所へ手放す事も出来たかもしれない。
実際ジャックは狭い“部屋”でずっと暮らした為に、内向的な性格になり、またジョイも外の“世界”の嘘を信じこませ、ジャックはそれを信じた。そして打ち明けられた時、ジャックは激しく混乱した。
それがこの歳の子供にどんな影響を及ぼすか。
しかし、母と息子の二人三脚だったからこそ、監禁生活を耐えられたのも事実だ。
息子が居たから母は強くなれた。希望を持てた。
監禁中も時々喧嘩はするが、本音でぶつかり合えるほど二人の絆は強く、固い。
それを引き離す事が出来るか。
それがあるから、この“世界”でも…。
“世界”は広い。怖いほど、広い。
この“世界”でずっと生きている我々でさえ“世界”を受け止められないのだから、ましてや小さなジャックにとっては押し潰されそうなほどだ。
でも、
空ってこんなに青い。
空気ってこんなに気持ちいい。
雨に濡れるとこんなにびしょびしょになる。
雪ってこんなに冷たい。
太陽ってこんなに眩しくて、暖かい。
海って、自然って、こんなに美しい。
動物ってこんなに温もりを感じる。
人って面倒臭いけど、優しさを感じる。
社会って大変だけど、ここで生きていかなきゃいけない。
“世界”は怖いほど広いけど、それ以上に、驚きと発見と楽しさ、素晴らしさ…何もかもが満ち溢れている。
その全てが、あなたの為にある。
子どもの生命力
ジャックがおばあちゃんに、アイラブユーという場面で泣いた。子どもの適応力、生命力。友達もできて、友達とサッカーをしたりして遊べるようになる。あの部屋にいたときは、友達という概念すらなかっただろうに。大人たちはその傷を癒すのにもっとたくさんの時間とトリートメントを要する。そんな大人たちも、子どもの生命力に大いに力をもらうのだと感じた。とにかくやるせない映画。
暗いだけじゃなくて本当に面白い映画
解決出来ない問題が山積み
Like a TV, but real. アカデミー賞納得の演技。感動作
観に行く前は重い映画だろうなっと覚悟を決めていたのですが、そんな事はない感動作でした!多分観る人の年齢や性別によって評価が全く変わってくるタイプの作品です。個人的にはボロ泣きでした。
異様な環境に育っても、そこで生まれ育った子供にとってはそれが全てですので、そこをおかしいとは思わずに適応してしまう。ちょっと違うかもしれないですがネグレクトのある環境の子供はハタから見れば可哀想ですが、子供本人にとってはそれが普通なわけで。ジャックが母親の為にそれはそれで居心地のよかった「ルーム」から踏み出して青空を見たシーンでは何故だか超泣けました。
そして世の中子供の方が柔軟に変化を受け入れ、大人になればなるほど環境の変化についていけなくなるのも事実。変化に少しづつ順応していくジャックに比べ、世間に対応できないジョイの気持ちも痛いほど感じました。その為、ジョイは自殺未遂してしまうのですが、自分だけが回りから置いて行かれた疎外感、子供の為を思っていた事の世間からの否定に耐えられなくなったのでしょう。最後にルームに分かれを告げるシーンで開放された気がします。
アカデミー賞を受賞したブリ―・ラーソンはもちろんの事子役のジェイコブ・トレンブレイ君が素晴らしい演技を見せてくれます。いや、これ本当にすごい才能ですよ。「ジェイソン・ボーン」シリーズで有名なジョアン・アレン、ウィリアム・H・メーシー等脇もがっちり固めてあります。そしてトム・マッカス演じるレオが良いキャラクターしているんですよね~。
重くなりがちなストーリーを子供目線を中心に持ってくる事によって上手くまとめてあります。色んな人に観て欲しい作品です。
後半、幼子の成長に希望を覚えるような作品かとも思えるが、その前には...
住めば都
大脱走。
この映画の山場とも言えるのが中盤の脱走劇。
入念に準備し実行。
それまでの健気な子供が精一杯頑張る。
精一杯よじ登り、ジャンプする。
そしてコケる。
ここで思わず息が止まった方も多いのでは?
そこからの婦人警官の快心の推理力で物語はカタルシスに包まれ、そっと優しく終わる。
終盤の散髪シーンで祖母に愛情を告げるシーンで、何かがどっと溢れた。
命って尊い。
世界は自分の中に存在する
子供はスポンジみたいに全てを吸収するんだなぁと。
知らないことも幸せだけど選択できることが自分の人生を生きることであることを知ってほしい。
ママも子供のままママになってしまい、母親にはなれても、大人?になれてなかったのが辛い気がした。
人は一人では生きられない。世界は自分の中にあっても、世間とは人と繋がらないと生きていけない。
そんな感じをうけた。
誘拐から脱出しても被害者の苦悩は続く
外国では監禁された少女達が発見されたり、日本でも少女が監禁から見つかったり、許されざる犯罪だと思う。最初は親子が監禁から脱出するまでの映画だと思ったが、子供が新しい世界に適応して行くのに、母親は周りのメデアや親たちの反応に傷ついて、自殺しようとする。それを助けたのが子供の髪の毛、母親を助けたい気持ちが痛いように分かり涙がでます。後半はもっと丁寧に描いてもらいたかったが良い作品でした。
ちょうど、監禁されていた女子中学生が自力で逃げ出したニュースと公開...
ちょうど、監禁されていた女子中学生が自力で逃げ出したニュースと公開が重なった。
男が女(多くの場合、少女)を監禁する事件は、昔からどの国でも起きているようだ。
そして、誰もが気になるけれど触れてはいけないと思っているのが、解放された被害者のその後の生活だ。
本作はそこにスポットをあてて、興味本意ではなく、母として生きていこうとする強い女性の姿を描き出している。
娘の生還を喜びながらも、犯人に生まされた子供を素直に孫として受け入れられない父親。
娘がいなかった7年間に、妻と別れて家を出ている。
娘が子供をつれて戻った家には、妻(母)が新しいパートナーと暮らしている。
娘とその息子、別れた父と母、母の恋人。
複雑な関係と複雑な事情の5人が囲む食卓で、「子供の顔を見て」と、娘に迫られる父親。
この食卓のシーンには心が痛む。
言われれば言われるほど、孫を直視できない。
複雑な表情で見守る妻(母)の恋人は、いわゆる好い人なのだが、そこにいる誰とも血縁がない唯一の存在で、だから冷静に寛容に事態を受け入れている。
彼は恐らく、男として父親の心境も理解でき、娘の悲痛な訴えも理解しているのだろう。
幼い少年は、母と祖父の確執は理解できないだろうが、自分が要因になっていることは知っている。
このシーンでは、事件がこの一族全員を不幸に陥れたことを示している。
さて、映画は終盤で主人公が固い決心でマスコミのインタビューを受け、これを契機に母子が現状を乗り越えて幸せな生活に辿り着いたことを示唆する。
しかし、インタビュアーの質問こそが我々が訊きたい下世話な質問であることは事実だ。
あの少年は、いつか自分の数奇な出生の事実を知ることになるはずだ。
だとすると、本当のその後はどうなったのだろうか…
本作観賞後、関連性はない是枝監督の「誰も知らない」を思い出した。
キーワードは「母の愛情」。
本作の主人公は、過酷な状況下で産み育てた息子に限りない愛情を注いでいる。
「誰も知らない」でYOUが演じる母親は、子供たちを置き去りにして男に走った、とんでもない母親なのだが、子供たちと一緒にいる場面では母親の愛情を感じさせた。
そもそも3人の子供は世間に隠した子なのだから、この時点で母親失格なのだが、学校に行かせられない子供たちに勉強を教えている場面では、子供たちを愛している良い母親だった。
このシーンを観たとき、果たして普通の母親たちがこんなに子供たちに愛情を注いでいるだろうか…と感じたものだ。
本作で、監禁部屋の中で息子を教育している主人公の姿に、「誰も知らない」の母親の姿が、重なった。
だが、この2作品の母親は同じではない。
責任を放棄した母親と、子供を守り抜こうとする母親なのだから…。
●終わりが始まり。
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