ルームのレビュー・感想・評価
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再生への道は重くのしかかる
誘拐の衝撃に終始しない姿勢が素晴らしい。部屋で産み落とされた我が子が天使のごとく母親を導く展開の上手さ。本来守られるべき存在が、一個人として描かれ、親と周囲の大人を導き、苦しみから解き放つ。また良いものを観せてもらった。
そうか。戻りたいか。
とにかく息子が可愛くて可愛くて。
部屋を出てからの、時間が流れてしまった、突き詰めてくる現実に苦しくなる母親。
ジャックにとっては、いつも優しかった母親との優しい時間が流れてた部屋が故郷になってしまっているのだ。だから、戻りたい。
そこがどうしようもなく切ない。
この親子が、外の世界で少しでも幸せな時間を過ごせますように。
監禁7年目、5歳になる息子の父親は犯人。
この題材なら、エンタメ的に美味しいのは悲惨な監禁生活と、そこからのドラマティックな脱出劇だろう。完全にスリラーの題材だと思う。でも、この作品はそこを目指さない。監禁中の描写も犯人より母子の生活に重点が置かれている。その部屋が世界のすべてだと教えられて育った5歳の子どもを丁寧にリアルに描いていく。
これが後半に効いてくる。脱出を決意した母親は、本当は部屋の外にも世界が広がっていることをわが子に教える。そんなちゃぶ台返しを、子どもは簡単に受け入れられない。当然、脱出後の生活の困難が後半の主題になってくる。だから、脱出までの展開は意外に早い。精神的には、脱出後の方がキツいくらいだった。
それでも、子どもにとってあの「部屋」が母とふたりだけの悪くない思い出になっている感じや、周囲の心ある大人たちに触れて世界を少しずつ受け入れていく様子にはグっときた。あの子役の演技たるや。ちなみに、観終えてから、フリッツル事件について検索してみたんだけど、正直やめておけばよかった。闇が濃すぎる。
脱出成功時は泣けてしまったのに
冒頭から狭いルームでの生活が“何か"伝えてくれる。
犬の散歩してるおっさんが反応しなかったらと思うとヒヤヒヤしてしまった。
しかし、解放されてからがこの映画の始まり。
被害者である若い母親と加害者の息子ジャック。
祖父、祖母と祖母のパートナー…娘が誘拐されこの様な結果で戻って来れても複雑過ぎる心境に揃って戸惑いを隠せない。
しかし、徐々に落ち着き取り戻して行く生活。
ラスト、ジャックがルームにやってくる。
彼にとって世界であったルーム。
「縮んだの?」彼の成長と本当の世界が広がった事を感じさせて映画は終わる。
暗く厳しい部分は控えめにしてくれたお陰で見易かった。
母親の苦しむ部分は自殺未遂を起こした為、作中には出てこないし、ワイドショー的下世話な部分が大嫌いな自分には良かった。
”リアルな世界” とは何か
「部屋」は、彼にとって「世界」のすべてだった。ジャックにとって、外の世界は宇宙だ。初めて本物の「空」を見た時の彼は、驚きと希望で満ちており、見ている側にも高揚感を抱かせる。
「こんなに世界って美しいんだ」そんな気持ちにさせてくれる映画だと思う。
ブリ―・ラーソン演じる女性の心の葛藤もリアルだ。「部屋」では、「母親」であることで保たれていた心が、「部屋」から出ることで、彼女は「母親」であり、性的虐待、監禁を強いられたひとりの被害者、「女性」であった。そして、彼女の両親にとって彼女の子供は「娘を犯した男の子供」でもある。
「部屋」から出たら、おしまい、なんてならないところが、まさにリアル。現実社会に生きる葛藤、葛藤に打ち勝つ希望を見事に描いた作品だったと思う。
その作戦でいくか
脱出モノ、母と子とくれば母親の気概を見せつけてくれるのかと想定するが、そんな安易な発想は見事に吹き飛ばしてくれる。ここにあるのは神経質な実存的な母親像。決して感じ良くない。愛情も欲するし、被害者意識も膨らむ、外面も気にするし、子供を気遣う余裕もなし。周りの設定や対応も実にリアル。母子に完全にフィットするような救済策を持ち合わせている訳でもない。大きなトラウマから時間をかけて立ち直っていく母子の姿を優しく見守る。最後のRoomに別れを伝えるシーンは名シーン。最初にはった伏線を見事に回収してくれる。
“ルーム”だけじゃない、この広い“世界”はあなたの為にある
評判に違わぬ傑作だった。
アカデミー賞の傾向からして作品賞は無かったが、最も心に残る作品である事は間違いない。
現時点で今年の洋画ベスト候補だ。
何の予備知識もナシに本作を見たらその異常な設定に困惑するだろう。
地下室のような狭い部屋に、若い母親と幼い息子の二人だけ。
母親ジョイは高校生の頃に男に誘拐され以来7年間も監禁、5歳になった息子ジャックはこの部屋で産まれた。
冒頭から緊張感を孕み、すぐ引き込まれた。
二人にとってこの“部屋”が“世界”。
ジャックは外の“世界”は“宇宙”と信じている。
この“部屋”以外のものは本物じゃない。
外を知るジョイには“部屋”の暮らしは苦痛だが、ジャックにとってはこの“部屋”が全て。
…が、あいつが居る。時折やって来るあいつが。
暴力的な一面を表すあいつから息子を守る為、遂に“部屋”からの脱出を決意、決行する。
ある物語からヒントを得た脱出作戦はスリリング。
実際見てハラハラして欲しいので詳細は伏せるが、キーはジャック。
(それから、女性警官の名推理がスゲェ…!)
実際にあった事件を基に作られた本作。
その基の“フリッツル事件”は調べてみるとかなりエグいが、本作は監禁生活~脱出のキワモノ的サスペンスではない。
“その後”こそがメインだ。
遂に救出された二人。
待ち望んだ外の“世界”。
しかし…
ジョイにとって監禁されていた空白の7年間は大きかった。
“部屋”しか知らないジャックにとって“世界”は広すぎた。
この“世界”は自分が居ていい場所なのか、自分はこれからどう生きていけばいいのか、どう再会した家族や失われた時間と向き合えばいいのか…。
“世界”は二人にとって“部屋”以上に生きにくい場所…。
我々の知らない長期監禁被害者の実態を突き付ける。
前半の息が詰まりそうな限定空間、後半は静かに深くじっくりと…レニー・エイブラハムソンが卓越した演出力を発揮。
そして、本作の“命”であるブリー・ラーソンとジェイコブ・トレンブレイ。
この二人にはどんなに言葉を並べても足りないので、ただ一言だけ。
その演技に心打たれた。
監禁生活中のTV取材を受けたジョイに、インタビュアーが投げ掛けた言葉が痛かった。
あまりにも酷い辛辣な意見だったからじゃない、一理ある意見だったからだ。
確かに、他に最善策はあったかもしれない。
幼い子供に母親の存在は不可欠だが、本当に子供の事を思ったら、監禁男に頼み込んで子供だけでも安全な場所へ手放す事も出来たかもしれない。
実際ジャックは狭い“部屋”でずっと暮らした為に、内向的な性格になり、またジョイも外の“世界”の嘘を信じこませ、ジャックはそれを信じた。そして打ち明けられた時、ジャックは激しく混乱した。
それがこの歳の子供にどんな影響を及ぼすか。
しかし、母と息子の二人三脚だったからこそ、監禁生活を耐えられたのも事実だ。
息子が居たから母は強くなれた。希望を持てた。
監禁中も時々喧嘩はするが、本音でぶつかり合えるほど二人の絆は強く、固い。
それを引き離す事が出来るか。
それがあるから、この“世界”でも…。
“世界”は広い。怖いほど、広い。
この“世界”でずっと生きている我々でさえ“世界”を受け止められないのだから、ましてや小さなジャックにとっては押し潰されそうなほどだ。
でも、
空ってこんなに青い。
空気ってこんなに気持ちいい。
雨に濡れるとこんなにびしょびしょになる。
雪ってこんなに冷たい。
太陽ってこんなに眩しくて、暖かい。
海って、自然って、こんなに美しい。
動物ってこんなに温もりを感じる。
人って面倒臭いけど、優しさを感じる。
社会って大変だけど、ここで生きていかなきゃいけない。
“世界”は怖いほど広いけど、それ以上に、驚きと発見と楽しさ、素晴らしさ…何もかもが満ち溢れている。
その全てが、あなたの為にある。
子どもの生命力
ジャックがおばあちゃんに、アイラブユーという場面で泣いた。子どもの適応力、生命力。友達もできて、友達とサッカーをしたりして遊べるようになる。あの部屋にいたときは、友達という概念すらなかっただろうに。大人たちはその傷を癒すのにもっとたくさんの時間とトリートメントを要する。そんな大人たちも、子どもの生命力に大いに力をもらうのだと感じた。とにかくやるせない映画。
暗いだけじゃなくて本当に面白い映画
解決出来ない問題が山積み
Like a TV, but real. アカデミー賞納得の演技。感動作
観に行く前は重い映画だろうなっと覚悟を決めていたのですが、そんな事はない感動作でした!多分観る人の年齢や性別によって評価が全く変わってくるタイプの作品です。個人的にはボロ泣きでした。
異様な環境に育っても、そこで生まれ育った子供にとってはそれが全てですので、そこをおかしいとは思わずに適応してしまう。ちょっと違うかもしれないですがネグレクトのある環境の子供はハタから見れば可哀想ですが、子供本人にとってはそれが普通なわけで。ジャックが母親の為にそれはそれで居心地のよかった「ルーム」から踏み出して青空を見たシーンでは何故だか超泣けました。
そして世の中子供の方が柔軟に変化を受け入れ、大人になればなるほど環境の変化についていけなくなるのも事実。変化に少しづつ順応していくジャックに比べ、世間に対応できないジョイの気持ちも痛いほど感じました。その為、ジョイは自殺未遂してしまうのですが、自分だけが回りから置いて行かれた疎外感、子供の為を思っていた事の世間からの否定に耐えられなくなったのでしょう。最後にルームに分かれを告げるシーンで開放された気がします。
アカデミー賞を受賞したブリ―・ラーソンはもちろんの事子役のジェイコブ・トレンブレイ君が素晴らしい演技を見せてくれます。いや、これ本当にすごい才能ですよ。「ジェイソン・ボーン」シリーズで有名なジョアン・アレン、ウィリアム・H・メーシー等脇もがっちり固めてあります。そしてトム・マッカス演じるレオが良いキャラクターしているんですよね~。
重くなりがちなストーリーを子供目線を中心に持ってくる事によって上手くまとめてあります。色んな人に観て欲しい作品です。
後半、幼子の成長に希望を覚えるような作品かとも思えるが、その前には...
住めば都
大脱走。
この映画の山場とも言えるのが中盤の脱走劇。
入念に準備し実行。
それまでの健気な子供が精一杯頑張る。
精一杯よじ登り、ジャンプする。
そしてコケる。
ここで思わず息が止まった方も多いのでは?
そこからの婦人警官の快心の推理力で物語はカタルシスに包まれ、そっと優しく終わる。
終盤の散髪シーンで祖母に愛情を告げるシーンで、何かがどっと溢れた。
命って尊い。
世界は自分の中に存在する
子供はスポンジみたいに全てを吸収するんだなぁと。
知らないことも幸せだけど選択できることが自分の人生を生きることであることを知ってほしい。
ママも子供のままママになってしまい、母親にはなれても、大人?になれてなかったのが辛い気がした。
人は一人では生きられない。世界は自分の中にあっても、世間とは人と繋がらないと生きていけない。
そんな感じをうけた。
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