リップヴァンウィンクルの花嫁のレビュー・感想・評価
全192件中、81~100件目を表示
不器用に現代を生きる女の子のおとぎ話
この物語は、現在の日本社会を生きる、とある不器用な女の子のおとぎ話だった。
前半は、主人公の結婚とその失敗、転落を描く。
皆川七海(黒木華)は派遣教員をやっているが、仕事は安定せず、友達も少なく、人生停滞気味。そんな時、SNSで知り合った鉄也との結婚話が持ち上がり、上手くいかない仕事から逃れるかのように彼と結婚する。主人公の結婚式に出席できる親族が少ないことを鉄也から咎められ、七海は「なんでも屋」の安室(綾野剛)に結婚式の代理出席を依頼して式を挙げる。しかし、新婚早々に鉄也が浮気し、義母から逆に浮気の罪をかぶせられた七海は家を追い出されてしまう…。
七海にとっての現実世界は過酷で、幸せを求めて進んだはずが、彼女はどんどん不幸の沼へと沈んでしまう……。
手持ちカメラを使用した撮影は、常に不安定な彼女の立場を表すかのように、淡々と進んでいく日々を映しとる。特に結婚式のシーンは印象的。新婦というその場の主役であるはずの七海を映すカメラの位置は遠く、あくまでも彼女が主体性を持って式に出ているのではないことを示す。感動的な親への手紙のシーンですら、寧ろ他人事のような空虚さがつきまとう。
そして、このように流されるままに結婚した彼女は、浮気の濡れ衣を被され、家を放り出されて、迷子になるのだ……。
だが、そんな前半の現実世界とは一変し、後半はおとぎ話のように、きらきらと繊細で鮮やかな日々が描かれる。
東京という大都会の森を彷徨っていた七海は、まるで魔法使いに別世界へ誘われるかのごとく、安室によって、月給100万円という好条件の住み込みのメイドの仕事を紹介される。夢のような大豪邸で、七海は変わったメイド仲間の真白(Cocco)と共に暮らすことになる。
洋館での生活は、現実感が無く、白昼夢を見ているかのよう。大きなリビングに、緑の濃い庭、クラゲや蛸やサソリが飼われているペット部屋。
二人は橙色の夕陽を背景に一緒に自転車で出かけたり、瑞々しい朝の空気の中で庭で水を撒いたりと、「メイドごっこ」生活を楽しむ。二人を捉えるカメラは、前半とは打って変わって鮮やかで、柔らかい。特にクラゲの水槽ごしに二人の姿をソフトフォーカスで捉えるシーンは、実に幻想的。
そんな洋館での生活を送るうち、七海は真白と友情を深めていくが、ある事をきっかけに、一見破天荒な彼女が持つ危うさと、彼女の抱えている秘密を知ることになる。そして、この夢のような生活の裏に別の真実があったことが発覚する……。
真白が七海にとってかけがえの無い存在となったある日、たまたま通り掛かったウェディングドレスの店で、真白と七海はウェディングドレスを買う。花嫁になった二人の女の子は、まるで本当の結婚式を挙げるかのごとく幸せな一日を過ごす。だが、その時、実はおとぎ話の終わりが近づいてきていた…。
七海の不器用さとピュアさを体現した黒木華、どこまで素か演技か分からない危うさを演じたCoccoの、二人の演技が素晴らしいのは勿論のこと、安室役の綾野剛の得体の知れなさも凄かった。おとぎ話に出てくる魔法使いの如く、物語におけるトリックスターとしての役割をしっかり果たしていた。
タイトルの基となった『リップ・ヴァン・ウィンクル』(Rip van Winkle)とは、1820年に発表されたワシントン・アーヴィングによる、アメリカ版「浦島太郎」的ストーリーの短編小説だという。
その名の通り、この映画は、一人の女の子が竜宮城のごとき豪邸で夢の生活を送り、最後には現実へと戻ってくる話だった。
だが、浦島太郎とは違い、最後に主人公の七海の元には、真白と送った日々の証拠が手元にきちんと残っていた。真白の存在は彼女の中で永遠となって、七海を前へと進ませようとする。映画のクライマックスは、いつもと同じ日常が戻って来たようで、だが七海のなかには確実に変わった何かがあることを示唆する。そんな希望に満ちた終わり方だった。
■余談。生まれついてオタクの私は、実は重度のサブカルオシャクソアレルギーを持っているため、公開時、岩井俊二監督作品というだけでこの作品を避けていた。その為観るまでに一年もかかってしまった。鑑賞中にじんましんが出たらどうしようととか、余計な心配しながら観たのだけど、結果として観れて良かった。鑑賞後、食わず嫌いは良くないなと思い、このレビュを認めたのでした。
CATVで観ました。主体性のない主人公の行く末にハラハラしましたが...
CATVで観ました。主体性のない主人公の行く末にハラハラしましたが、予想外の所に着地しました。ショートムービー3本みたような感覚。あの展開で話が破綻しないのはすごい。
これだけ引き付けられる3時間映画はそうそうない
3時間と言う長尺を忘れさせてくれるような、何とも面白みのある映画でしたね。
まあ全く長さを感じさせないと言ったら、何せ3時間ジャストの上映時間ですからさすがにそれは嘘になりますが、でも退屈知らずの3時間であったことは間違いない事実、これぞ岩井俊二監督と言える独特の世界観にすっかり魅せられっぱなしの3時間でした。
これ一体どこに着地するのだろうかと、次々起こる怒涛の展開に思わず引き付けられてしまうんですよね、ドキュメンタリーのような、ファンタジーのような、現実のような、夢物語のような、曖昧な虚実の境目に見る側も終始翻弄させられっぱなしのとても不思議な世界観でしたけど、でも見終わって妙に心地の良さが残る岩井ワールドに私はホントもう大満足でした。
現実の辛さ、嘘くささをこれでもかと見せ付けられるも、それだけじゃない何かが待っている映画とでも言いましょうか、とにかく黒木華が演じた七海の身に降りかかる出来事に、終始目が釘付けになってしまいました、よくある成長物語とは一線を画すがごとく主人公が変化していく様子は、まさしく岩井監督でしか描けないような独特の世界観でしたね。
勿論、これは黒木華と言う岩井監督の新ミューズあってこそ成り立つ世界、そう言えば山田洋次監督も蒼井優→黒木華路線でしたけど、まあこの2人はそれだけいろんな魅力に満ちた女優さんなんでしょうね、やっぱりこの2人が出ている作品は見てみたくなるもんなぁ。
ある種この映画は岩井監督プレゼンツ黒木華ショーと言えなくもない映画でしたが、間違いなくコスプレ込みで黒木華の演技力を堪能できる映画ではありましたね、前半の世間知らずなか弱さから、とある出来事を経て変わっていくその姿全部が魅力的だったなぁ、その引き立て役となった綾野剛の胡散臭さ、Coccoの切なさもたまらなく良かった、それと普通映画的には詰め込み過ぎと説明不足は大体マイナスでしかないのですが、この映画は良い意味でその2つが作用していたのがとても印象的でした。
特に綾野剛のガンダムまみれな演出からして怪しさ満天、謎過ぎて最高でした、この掴みどころのなさこそこの映画の魅力でもあったのかな、とにかく一体どうなるのか、気になって気になってしょうがなかった、転落していく様子とか、現代の闇と言われる部分の描き方も本当に上手い(必ずしも悪い部分だけでなく良い部分があることも描く辺りは優しくて好き)、切なさで思わず涙してしまうストーリー構成もお見事の一言、そして見終わった後はまるで夢から覚めたような感覚とでも言いましょうか・・・まあとにかく、素晴らしい映画でしたね。
踏み絵のような映画!!
黒木華は「ソロモンの偽証」の大人しい教師役と似たような役作りなのですんなり入り込む事が出来ました。3時間は長いですが、映画というよりはドラマスペシャルを前後編連続で観ているような感覚でした。主人公は何の問題意識も持たないため手配師に騙され続けている事に気付かず、何の成長もなく爽やかなラストシーンを迎えます。観客も良い映画だったね心が温まる素晴らしい繰り返し観たいと何だか見当違いの事を言う。いわゆる意識高い系の方々を識別するための踏み絵のような映画でした。
リアルとファンタジー
昔は大好きだった 岩井俊二監督作品だけど、
いま、それなりに大人になって、
荒んだ心になってから観ても、
ちゃんと美しく受け取ることができるだろうか、
と心配しながら観ました。
3時間、、、
生活リズムの事情で
二日間に分けなきゃ観れないな、、
疲れてるから、途中で寝ちゃわないかな、、
と不安だったけれど、
みはじめたら
どんどん引き込まれて
リアルな世界と ファンタジーの世界に翻弄されて
刺激的ではないけれど
3時間かけて、
ゆっくり じわじわ心を掴まれる。
やっぱり岩井俊二監督は凄かった。
これは映画館で観たかったな。
手元にDVDを置いて
時々見返したくなる作品。
どこかへ連れて行かれていたような感覚
見ている間夢を見ていたような、どこかへ連れて行かれていたような感覚に陥る。3時間と長いがとても魅せられた。
黒木華のおっとりした空気感と、Coccoの瞳に吸い込まれるような危うさ。異質な2人が織り成す関係になんとも惹き込まれる。
綾野剛の胡散臭さもいい味を出していた。
ノクターン2番が印象的に響く。
強く儚い。
フワフワと流されて、新婚なのに人から誤解されるような行動を次々と取る黒木華の役にドキドキ、イライラしましたが、そのフワフワのまま、目まぐるしく変化する環境の中で、常に同じでい続ける姿に、段々と引き込まれていきました。
その変化は、綾野剛演じる安室が仕組んだこと、だったんだけど、裸になって泣いてる姿と、廃棄予定の家具を持ってきたときの服装や話し方がそれまでと違っていたこと、きっと彼も、フワフワと流されながら芯のある姿に、何が感じ入るものがあり、心境の変化があったんじゃないかな、そうであって欲しいなと思いました。
家族を演じた人の再会、Coccoがベッドで言っていた、優しさを受け止めきれないからお金払うって話、要所要所に泣かされて、ジワジワと心の深くに沁み入るような映画でした。
人は儚くて、でも強い。
幸せは形じゃなくて、気持ちに宿るもの。
静かなメッセージを受け取れるかどうかで、評価の分かれる作品だと思います。
何を幸せって感じるかで何もかも変わってくる
久々の岩井俊二作品にワクワクし、物凄い朝早くから起きて初日の舞台挨拶後の回に鑑賞。
ユーロスペースが規模がそこまで大きくないのもありますが、満員+階段に座る人も多々。
通路側に座っていたので、異様にギュウギュウ感を感じながら映画を鑑賞。
最初は上映時間が180分という情報を見て、「180分て…3時間( ゚ ρ ゚ )」と心配でしたが、作品を通して2時間にも感じない位。
どこか現実離れしているのに現実感のある世界観。
劇中内で登場するLINEとTwitterの間みたいなサービスが妙にリアル。
「嗚呼、Twitterでこういうつぶやきしてる人いるなぁ」とか思いながら、ちょっと斜めに観ていたものの、どんどん引き込まれ。
綾野剛演じるの安室の胡散臭さと何気に何でも出来るマルチ具合は劇中で「俳優兼何でも屋」が妙に納得できるほどの絶妙ナイスな存在感。
安室のやっている事に腹立ったりするもののなんか憎めないし、正しくも感じたり、安室の波がとにかく凄い。
何でも屋でちょっと働きたくなったりする自分がいて、でも嫌で、でも魅力的に感じたりと、どのシーンを観ても感情が動く映画でした。
ちょいちょいクスクス笑いが散りばめられてて3時間あっという間だった!
取りあえず、観終わった後はCocco~!!!!!!!!て言いたくなる。
にしても上映館もっと多くていいと思いました。
世間知らずが知る世界。
ありがちな話から怒涛の如く転落の一途を辿る主人公のサバイバル
悲(喜)劇というのでこれはいいんだろうか。あっという間に離婚を
されてしまったヒロインはまさかそれが仕組まれていたとも知らず
に突然の変化に流されていく。世間知らずがいきなり放り込まれる
世界を取り仕切る綾野剛が絶品!後半は大笑い(だってあのシーン)
故りりィの姿が頭から離れない。Coccoが台頭してからはどんどん
浮世離れしていくのだが、常に流されつつ相手を恨まぬヒロインの
逞しさを優しく体現した黒木華はお見事。でもやっぱり長いなぁ(^^;
また観たくなる
正直長いんだけど魅せられてしまった。
人生、流され流され流されていく。ふと立ち止まる際の心情の映像の美しさ…
好きすぎてハマる映画ってあるけど、これはそうでもないのに何故かハマる映画。また観たくなるし、たぶん観る度に好きになり評価も上がっていく作品なんだと思う。
幸せとは仮面を並べていく過程に過ぎない
内向的な性格で両親もとうに離婚し、天涯孤独の契約教師・黒木華は、SNSを通じて、ようやく彼氏ができ、愛でたく結婚。
しかし、不遇な人生ゆえに黒木家側に披露宴へ招待する客が皆無。。。
面目躍如のため、サクラを集める派遣会社の社長・綾野剛と知り合いフォローしてもらう始末。。。
船出早々に、暗雲が立ち込めた結婚生活は、案の定、直ぐに破綻。
再び独りぼっちに戻り、泣くじゃくる彼女は、綾野社長が斡旋してくれたサクラ派遣業のバイトで擬似家族を演じて食い繋ぐ。
そんな日々の中、同僚のCoccoと知り合い、交流を深めていくが、彼女には知られざる秘密があった。。。
『ラブレター』『リリィ・シュシュのすべて』etc. 独自の作風を確立している奇才・岩井俊二の久々の最新作だったが、三時間の長丁場がネックで劇場公開時はスルーし、ようやくDVDでダラダラ鑑賞したけど、、、
う~~ん、当たり前やけど、やっぱり長いね。。。
しかも、浮気を巡り、姑を交えた夫婦のイザコザは昼ドラを彷彿とさせるドロ沼模様で辟易してしまう。
でも、クタビれながら最後まで観ちまうのは、岩井俊二ワールドの不思議な魅力である。
結婚式は幸福の頂点を意味する最大のイベントだが、出席して祝福する他人にしてみたら、あの白々しい雰囲気が、如何にも《偽善》を醸し出しており、友人の披露宴に何度か招待される度に、居心地の悪さを覚えて仕方無い。
其処に、ネットのコミュニケーションが絡む事で、更に軽薄さが浮き彫りとなっていく。
残酷と愛しさが気だるくも繊細に交錯する危ういバランスこそ、岩井俊二の描く美しさの真骨頂であり、其の脆い世界の象徴が、友人を演じたCoccoの存在と云えよう。
破天荒で明るいけど、何処か切なく、ひび割れた胸から絶えず狂気が溢れて、何をしでかすか理解できない哀しさ。。。
花と毒、他人と友人との違いとは?家族とは何か?を問うやり場の無いメッセージは、名曲『樹海の糸』を歌っている時とは異なる温度で、観る者の心に乱反射して、居残ってしまった。
人間のハートは繊細で絶えず壊れそうな物で、いつ壊れるか解らず、誰もが不安で仕方無い。
其の焦りをネットやセックスを通じて、確かめては、忘れたがる虚しい生き物が人間である。
束の間の共有を求めて、今、自分が何をできるのか?
私自身も天涯孤独な人間なので、緩やかに今後を突きつけられた様な三時間であった。
では、最後に短歌を一首
『春来れど 仮面並べる 脆い風 白々し笑み もたれて青く』
by全竜
主体性のない女性が、ひとりで歩きだすまで
誰が見てもそう思うだろうが、黒木華がとても可愛い。
まるで黒木華のPVのようなスローの映像と淡い光。
岩井俊二の映画の中の女の子たちは、いつも本当に可愛く魅力的に映る。
それはそれで映画として大きな魅力だけど、そのせいで映画のテーマのようなものが見えづらくなっているようにも思う。
黒木華演じる七海はあまりにも主体性がない。
好きなのかもよく分からない男と、なんとなく結婚する。
どう考えても危ないのに、怪しい男がいるホテルの部屋に入る。
綾野剛演じる安室に言われるまま、謎の仕事に足を踏み入れる。
「いやいやこんな女、世の中生きていけないでしょ」と思っていたが、25歳ぐらいならこんな人もいるかもしれない。
そして実際、次々と酷い目や危険な目に遭う。
その中で様々な出会いと別れを経験し、いっぱい泣き、笑い、彼女は少しだけ強くなり、ひとりで歩きだす。
…とまとめるとありがちだが、場面場面を切り取ると、絵面はかなりエキセントリックだ。
特に、Cocco演じる真白の実家でのシーン。
私は正直、あまりの展開に笑いを圧し殺していたが、隣の男性は泣いてるようだった。
人により全然違う感情の動きが起きるのは、とても健全で良い映画だと思う。
綾野剛の世渡り上手っぷり、表面的なにこやかさと内面の冷たさは印象的だった。ビジネスですんごい困った時にとりあえず「あーなるほど〜」って言う人、いるいるw
あと、数日前に同じ劇場でリリィ・シュシュのすべてを見て、私の中でリリィ・シュシュはCoccoのイメージだったので、同じ監督が彼女を起用したのは勝手に納得感があった。
ストーリーとその見せ方から、本作は黒木華さんのための映画だと思った...
ストーリーとその見せ方から、本作は黒木華さんのための映画だと思ったのですが、もっと魅力的に魅せるやり方があったのではと、思いました。彼女の透明感みたいな美しさが十分表現されていたとは思えませんでした。あと、「岩井ワールド」と呼ばれるものが、この映画にあったのだとしたら、私はそれに浸れませんでしたので、正直ツラい3時間でした。
全192件中、81~100件目を表示