リップヴァンウィンクルの花嫁のレビュー・感想・評価
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主人公に降りかかる嘘と毒と病は一生続く
美しい映像だが、物語には嘘と毒と病が蔓延している。教師いじめという毒に始まり、安室の嘘、マザコンの病……。それと相反して主人公七海は最初から最後まで純粋無垢である。言われたこと、目の前で起きていることをそのまま信じる純粋無垢であると同時に、感情が控えめで全てにおいて受動的、想像力が無く流されやすくもある。中学教師になれる程度の学力と常識を持ち合わせているにも関わらず、とりあえず流れついたホテルの値段が高いのか安いのかさえも調べることなく日々なんとなくそこにいる。こういう人が負のループにハマるんだろうなというのをとても自然に描いている。
負のループは真白との出会いで断ち切られ、楽しい日々が訪れる。奇しくも真白との出会いは安室によってもたらされる。安室は不思議の国の案内人のようだ。そこにいる七海はそれまでとは違い活き活きとしている。しかしそこには自然界の毒と病が存在する。自然界の毒と病によって楽しい日々を奪われた七海は初めて大声を上げて泣き叫ぶ。
ラスト、何かが大きく変わるわけではない。人の本質はあまり変わるものではないので、七海はこれからもなんとなく地味に日々を過ごし、安室に適度に生かされ搾取され続けていくのだろう。友達なんで、という言葉に乗せられて。(友達のいない人間は友達という言葉に乗せられやすい。)
岩井俊仁監督の作品を初めて観たが、じわじわ沁みてくる痛みや病をまとった世界観を美しい映像で見せてくるずるい監督だと思った。(好き)
期待以上
序盤から惹き込まれあっという間の3時間だった。
怪しさMaxの綾野剛に思考が振り回されっぱなしで、「?」の連続。
終盤のまさかの展開は笑ってしまうくらい衝撃的。
岩井俊二作品は苦手だと思っていたが、いい意味で期待を裏切られた作品。
黒木華、こういう素朴な人物を演じるのはほんとうまいと思う。 Coc...
黒木華、こういう素朴な人物を演じるのはほんとうまいと思う。
Coccoは彼女が持っている雰囲気がすごく良く出ていて、自分を語るシーンはぐっと来た。
綾野剛のどこまでほんとなのか、あの怪しいうさんくささ。そんな映画ではないのにつっこみたくて笑ってしまった。それがまた映画全体が暗くなりすぎずにバランスが取れているのかもしれない。
the岩井俊二のシュール
刹那に生きる人々をダークファンタジー的に切り取ってみたお話
この映画が長い理由は多分みんなの生活を描いてるから、全ての人が流されてて刹那に生きてる部分があるから、24時間でも一年でも撮り続けれるでしょう
自分の人生のどこを切り取るか、どこを映像にできるかを考えながら観るのは少し面白かった。自分のない自分を見ているようで切ない面もある。
誰かの人生の怖いところをこんな風に美しく見せることもできるんだなぁと。その手腕は素晴らしい。
この排他的な空気、昔は少し理解してたかもなぁ〜しかし、恐ろしファンタジーはやはり恐ろしい。
華ちゃん可愛い。
3時間も観る中身なのか…
やはり私のフィーリングに岩井俊二のテイストはマッチしない。
黒木華さんの主演というからチェックしたまでだ。
作中彼女の演技は素晴らしい。幻滅させない。
出会い系SNS
そこから結婚
そして離婚
孤立無援から新境地
東京で生きていく多様性
選択肢は無限大だが、やはり孤独。
綾野剛さんの役回りがペテン師を極めるわけでもなく、いい人すぎるわけでもない。中途半端で映画の展開をただ穏やかにしている感。
これも岩井俊二監督、脚本のこの作品で見せたかった世界観なのか。
なんとも評しにくい映画だった
演技力
岩井俊二監督・・3時間・・見始めるのに勇気がいった。しかし見始めたら3時間は気にならず。兎に角、黒木華さんと綾野剛さんの芝居が上手い。他の役者さんの絡みかたも見事で・・掴めそうで掴めないストーリー。
それもいい。
本当を見つける物語
黒木華のキャスティングが役にピッタリと合っていました。「何が本当で、何が嘘か、作り物か」を考えさせられる映画。本当であるものにも、偽物であるものにも安室が必ず絡んでいる。彼は、善?悪?考えさせられる。映画の評価は人によって分かれる作品なんだろうと思う。アングルや光の使い方はやはり岩井作品。
世界観の統一
作品というものは、こうであれ。と言ったような出来。
というのも、最近 よくわからない世界観の繋ぎ合わせというか、
「なに?これって あれ? そっち?」
みたいなのを見たせいだと思う。
ストーリーの起伏や筋立ての変化は楽しめるんだけれど
そうじゃない 腰の座りの悪い ただただ力不足 技術不足、 みたいなのは 客に対する冒涜だから。
綾野剛の さらっとした仕事ぶりは 彼の
役柄として 過去に、語る事も出来ない苦労(という言葉では陳腐)を生き抜いてきたしたたかさが ちゃんと見える。
そこが上手い。
黒木華は、当て書きだそうで
それはもう岩井俊二に当て書きされたら役者冥利に尽きるだろうなあ。
最初は女子高生にも馬鹿にされるような頼りないだけの教師が、頼っていいのか悪いのか判断しかねても良さそうななんでも斡旋屋を全く1ミリも疑わずに最後まで信じ切って、強さを身につけて行く。
そのストーリー性が上手い。
お城のような家の秘密がそこだったのかと 虚をつかれそして安堵する。
全体が曇り空。
常識人の見本のような 臨時教員が
東京で生きていく姿を見ると
もし 自分が今地方在住であったら、怖くて都会になんて子どもも孫も 出したり絶対出来そうにない。
ただそれは あながち間違いでもなく
東京での一人暮らしと 東京実家暮らしとでは
別の都市であるかのような顔を持つ町であるのは間違いない。
愛に溢れた映画だなぁ
とてもいい映画だった。
後になってもあそこが良かったとか思い出す映画って、いい映画だと思う。これはそういう映画だ。
主人公の大人になりきれない七海と便利屋で怪しい魅力の安室、そしてポルノ女優を全うするために癌の治療をせず余命わずか、子供の頃に母親にも捨てられて愛が足りない真白。3人が色々なエピソードで絡みながら確実にいろんな形の愛を生んでいく。
暖かくて泣けてくる。
1番の見どころは最後の真白の母親にお骨を届けた時だろう。死んでしまったけれど、真白はは最後に大きな愛に包まれたんだなぁ。そして、大人として成長した七海も新しい一歩を踏み出した。
愛と希望に溢れた岩井俊二らしい優しい映画だった。
安室が不気味すぎる
2021年2月22日@Netflix
映画自体は面白く、飽きずに鑑賞できたが、終始七海にイライラしてしまいました。
自分というものがまるでない。
映画のなかで成長するのかと思っていたが、そうでもなく、あんまり大きな変化もない。
しかし、真白との日々のおかげで、すこし自分の意思を持てるようになれたのかなと思いました。
ただ、七海を演じた黒木華の演技は芸術ものでした。
この映画のタイトルにもある「リップヴァンウィンクル」のことを知らずに鑑賞したので、映画の趣旨や方向性が掴めなかったのが悔しいところ。
安室の不気味さが光る映画でした。
綾野剛、上手い!
「すみません」と「ごめんなさい」ばかり言っていて、声が小さくて、腰掛ければ内股で、大人は履かないような靴下と踵が少しパカパカしてるゆるい靴。全然、大人になってない七海。子どもだから、何でもSNSに頼ってしまう。脇がすごく甘くて警戒心ゼロ!完全に餌食にされるのが目に見えている。友だちが少なくても、親戚が少なくても、親が離婚していてもいいじゃない。そもそも無理に結婚する必要ない!
七海にしか教わりたくないと、きちんと言える、何ヶ月も不登校の女子高生の方がずっと大人だ。だから、七海にイライライライラ!
と、言葉にするとこんな風になってしまうのだけれど、3時間を感じさせない面白さと美しさとドキドキで、とてもよかった、本当に。透明感ある黒木華、綾野剛は凄く上手い!りりぃと同じ姿になったのも、アムロ的サービス?とも思えた。
アムロは七海を大人にしてくれたのか?それとも、これから食い物にしていくのか?その曖昧さが余韻という美しいものになっていた。
ネット社会。📱
SNSを通じて人と繋がりを持つ七海(黒木華)。結婚、なんでも屋安室(綾野剛)ともSNSで知り合う。
黒木華の演技がこの役にピッタリ。黒木華の良さが引き出された作品です。
綾野剛も全くもって。頼れるなんでも屋を演じていて初めは詐欺して騙しているのかと思うほど。
常に。騙されてるよ。と思いながら…。
人って。困った事があるとこんなにも人を信じ頼ってしまうのか。かと考えさせられた。
真白との関係は何。
分かるところもあるけど変な世界に~。
いろいろな感情があって最後どうなるのか。
最後まで目が離せない作品でした。
岩井俊二ファンが見る映画
2020年8月2日
映画 #リップヴァンウィンクルの花嫁 (2016年)鑑賞
#黒木華 と #COCCO は岩井監督のお気に入りの雰囲気はあるよね。
#綾野剛 の真意・目的がとても気になった映画です。特に意図とかないのかな?
アムロ行きマース!は、笑った!
映画はシナリオの出来こそがすべてなのだと再確認しました。
岩井監督みずから書いた素晴らしいシナリオを、黒木華も綾野剛も見事に演じきっています。
まったく予想外の、想像もできなかったストーリー運びですが、破綻がなく、素晴らしいの一言です。
あ、もう一言。
面白かったです。ほんとに。
岩井俊二映画に昔ハマって、ほぼ見てます。 これも、世界観は昔のまん...
岩井俊二映画に昔ハマって、ほぼ見てます。
これも、世界観は昔のまんまな気がします。
前半戦の黒木華は、流されてハメられて人を頼りまくって、アホで全力でウザい演技力がすごい。
綾野剛の、こういう人いそうっていう胡散臭い男の演技も最高!
Coccoも昔好きだったから、ちょっとだけ歌っていたのも見どころ♩しかも洋次郎がピアノ!
長いけど、全然飽きずに見れました。
ちょっと苦手
黒木華のスーツケースを引っ張る姿が象徴かな。爽やかなラストでほっとする。危うくてか細くてハラハラする展開だったから。
でも、こういう長い展開、苦手。特に、ウェディングドレスを着たシーンは長すぎる、と思った。
映画が大好きになる映画
たった数行の心に響く詩を読んでいる間に気づいたら3時間経っていたというような感覚。
3時間と長い映画だが、タイムアウトのない濃厚な時間の映画と、一緒に生活をともにする季節を過ごすような連続ドラマ、両方の良さを併せて持っているような作品。
だからドラマ版の方も観たい。
すごくゆったりと流れる絵本のような映像のなかに、優しいながらも現代の歪さに斬り込む岩井俊二監督の巧みな表現力。
黒木華の柔らかさとクセのある綾野剛に、またCoccoの演技もなかなかいい。
クライマックス、Coccoのベッドのシーンでの言葉がすべてを物語る。優しさに押しつぶされないように、恩送りに冷たさを与えたお金…この世は本当は幸せに溢れているはず…永久保存版のメッセージだ。
公式サイトの著名人のコメントもそれぞれ詩的で素敵なので鑑賞後に読んでみるのもおすすめ。
迷子
「ここはどこですか?…私はどこに行けばいいんですか?」
「今後の日本について書きたいという衝動が沸き起こったんです」とこの映画について監督が語る(インタビュー記事から)。
まさしく、現代のある日本の情景。
後半の設定こそ奇抜だが、それぞれが抱える不安と孤独が描かれている。
SNSでの結婚紹介サービス。
ネットでつながる教師と生徒。
ある一定ライン以上は、踏み込まれない安心感。
何でも屋…お金で買えるサービス。
知り合いに頼むより、面倒くさくなくて、便利だもの。
「なんで相談しなかった!」と怒る割には、相談に乗る姿勢を見せない相方。でも、自分では気が付いていない自分勝手な男。…ワンオペママが抱えている苦悩。
不倫調査。別れさせ屋。実在するサービス。
喧嘩の仕方を知らない大人。
そりゃそうだ、子どものころ、大人に管理されて育ち、喧嘩なんてしたことがないもの。だから、雨降って地固まるなんてしらない。喧嘩したことないから仲直りの仕方を知らない。一度、関係が壊れると、究極の選択しかない。
迷子になっても、頼るのはグーグル。ネットの情報。
そんな希薄な関係の反面、
密着親子。絶縁親子。閉じた関係性。
「ここはどこですか?…私はどこに行けばいいんですか?」
自分が迷子になった時の心細さを思い出した。
頭が真っ白になったまま歩き続けたら、見知らぬところにいた。
道一本入っただけのはずなのに、元に戻れない。
誰もいない。表示もない。
人生にも道はない。中学・高校・大学・就職。反発しながらも、敷かれたレールを走ってきた。このまま行くはずなのに、人生には、ちょっとしたエアスポットが用意されている。思わぬ躓き。思わぬ方向転換。
頼るのは自分?ネット?見知らぬ他人?招待知れぬ親切な人?頼れる知人がどれほどいるのだろうか?
孤独と不安に耐え、自分で解決できるのは、自立した大人としては素晴らしいけれど…。
そんな中で出会った真白。…。
初めて、”自分”を必要としてくれる存在…。それぞれの思惑…。
そして…。
初見はネタバレしないで見ていただきたいけれど、
結末を知って再見すると、微妙なセリフ・表情他に、涙が出そうになる。
シーンは、どっきりカメラや、胡散臭いやらせの中に、七海が、設定も知らされずにオンエアされているような、ドキュメンタリーっぽく、展開する。
「ありえねー!」と叫びたく様なシーンの連続。
なのに、ふざけたバラエティのように見る気をなくすんではなく、なぜか見入ってしまう、魔訶不思議さ。
(ただ、監督や出演者のファンじゃないと、飽きるシーンもある)
実態があるようで、ないようで、あるようで。
そんな中で、われらは生きていると思い出させてくれる。
だから、手ごたえが欲しくなって、「やりがい」とか「自分探し」とか「ありのままで」「自分らしさ」とかが流行るのかな。
生きている実感をつかみたくなって。
そっと優しい歌声に涙した
彼女の口からこぼれ落ちる言葉には機微が溢れて、自分の事みたいにスルスルと涙が落ちてしまった。
流れに乗れない日々、そもそも流れに乗った事などない。そんな淡々とした生活に、儚い希望を持って過ごしていた頃に引き戻されてしまった心。
目の前に迫る雑多なビルがひしめく路地裏、彼女がビジネスホテルの窓を開けたあの瞬間、同じ気持ちに陥ってしまう。
とんでもない運命に、なんの疑いもなく流されて行く彼女の物語。
見ていたくなる気持ちが増してしまうのは、悲しみを誤魔化し受け止めず生きている私達に、気がつかせてくれてるのかもしれない。
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