『暗闇にベルが鳴る』がリメイクされ、『ファイナルデッドコール』なる邦題が付けられた。原題はどちらも『ブラッククリスマス』なのだが、『ファイナルデスティネーション』(2000年)がそこそこヒットしたもんで、さも同一シリーズの続編かの様な悪質邦題をつけた日本のビデオ会社の倫理観の低さにゲンナリ。ご丁寧に独自邦題を英語でも表示して原題と誤認させる悪質さ。
まー一応『ファイナルデスティネーション』と同じ監督の映画ではあるのだが、「シリーズ史上最叫」とのキャッチコピーと、(本編と全く関係無い)死神を中央にした日本版メインビジュアルは誤認させる気が満々。そもそもシリーズってなんのシリーズだよ。
オリジナルの『暗闇にベルが鳴る』の良さは、殺人犯の得体の知れなさ(&意味不明のセリフ)こそが恐怖のキモなのに『ファイナルデッドコール』では殺人犯ビリーの不幸な生い立ちやセリフの意味を丁寧に描写する事で一切の謎がなく、実にスッキリ。
実際にイカれた犯罪者に遭遇した場合、相手の情報が全く無く、素性も動機もわからない方が怖いと思う。旧作では最後まで発見されないままだった最初の犠牲者の死体もちゃんと発見されるし、犯人野放しのまま終わる旧作と違い、こちらはキッチリ退治されるし。静かにジワジワ迫る悪意が不穏な旧作に比べて、リメイク版は(近年のホラー映画の定番)突然飛び出してビックリさせるお化け屋敷方式。あまりに幼稚だし、驚きはするけど怖いのとは違うよね。旧作の様な観賞後の後を引く不安なカンジもなく、何の謎も不条理も無くなーんも怖くなくてドタバタうるさいだけの駄作となっている。内蔵出せば怖いって訳じゃないぞ。昨今の観客が何でもかんでも答を求めすぎるのも悪いんじゃないかな。
過剰に親切な背景説明で観賞側の不安感を無くした結果、恐怖感を激減させている。なお「謎の電話の発信元は同じ家の中からだった」というネタは携帯電話の普及によりリメイク版では消滅しており、かわりにかつて惨劇があった家を改装して女子寮にしていた、という新ネタを入れている(事故物件を寮になんか普通しないよな)。更に犯人側を複数犯にしてチョイと意外性も盛り込んでいるのだが、「フーン。そうなの」程度で驚きすらない。