人生タクシー

ALLTIME BEST

劇場公開日:2017年4月15日

人生タクシー

解説・あらすじ

イランのジャファル・パナヒ監督が、タクシーの乗客たちの様子から、厳しい情報統制下にあるテヘランで暮らす人々の人生模様をドキュメンタリータッチに描き、2015年・第65回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した作品。カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭で受賞歴を誇る名匠で、反体制的な活動を理由に政府から映画監督としての活動を禁じらてもなお、自宅で撮影した映像をもとに映画「これは映画ではない」を発表して話題を集めたパナヒ監督。今作では活気に満ちたテヘランの町でパナヒ監督自らタクシーを走らせ、さまざまな乗客を乗せる。ダッシュボードに置かれたカメラには、強盗と教師、海賊版レンタルビデオ業者、交通事故にあった夫婦、映画監督志望の学生、政府から停職処分を受けた弁護士など、個性豊かな乗客たちの悲喜こもごもが映し出され、彼らの人生を通してイラン社会の核心へ迫っていく。

2015年製作/82分/G/イラン
原題または英題:Taxi
配給:シンカ
劇場公開日:2017年4月15日

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(C)2015 Jafar Panahi Productions

映画レビュー

4.5 ルールや制約にとらわれない自由な精神が生んだ快作

2017年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

ジャファル・パナヒ監督その人がタクシーを運転している。理由は語られない。カメラはダッシュボード上の回転式の台に設置されていて、監督が自ら向きを変え、車の前方の道路を映したり、後部座席の乗り合いの客をとらえたり、“自撮り”したり。乗客が「あなたパナヒ監督ですね!」と気づくドキュメンタリー風のやり取りもあるが、さまざまなハプニングが続発するので、台本はあるのだろう。しかし乗客たちの会話は作為を感じさせず、ひょっとしたら俳優ではない一般人もまじっているのではと思わせる。一応はフェイクドキュメンタリーの範疇に入るのだろうが、ジャンルに収まらない魅力にあふれている。

イラン政府に批判的な姿勢のせいで、映画監督禁止令を受けているが、「これは映画ではない」と題した作品を作ったり。スケールの大きなユーモア、制約や圧力をものともせず微笑でメッセージを発信し続ける姿勢に心を動かされる。

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高森郁哉

4.0 地元で映画を撮り続ける覚悟と本気。

2017年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

知的

政府に映画製作を禁止され、軟禁状態と伝えられたパナヒが、映画を作れないもどかしさを自宅の中だけで映画にしてしまった『これは映画ではない』にも驚いたが、そのままパナヒは軟禁以降3本目の作品までものにしてしまった。

明らかにイラン国外で上映されている以上、パナヒが投獄されたりしないだろうかと心配になるが、作中のパナヒはどこか吹っ切れたように飄々としている。

気がつけばマフマルバフ一家も故キアロスタミもバフマン・ゴバディも、イランの名監督の大半はイランを離れてしまい、創作にとっていい環境でないことは確かだろう。ただしパナヒは軟禁以前にあくまでもイランで映画を作ることにこだわっているのだと、ゴバディがどこかで発言していた。

この素晴らしい映画を観て、制約がある方が名作ができるなんて訳知り顔で言うことはできない。ただパナヒの創作欲が旺盛であり、元気にしているらしいことを喜びたいと思う。

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村山章

5.0 笑えるけど笑っていい状況ではない

2025年11月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

イラン系の観るべき映画監督は結構いて、イラン国内で映画製作をしていなくともイランを舞台にした作品を作っていたりする。
それらを観ているとイランの抱える社会問題やシステムを自然と理解していくことになる。誰もがそれらを扱った作品を作っているからだ。
それだけイラン社会に、先進国目線で問題があると言うことだろう。
まあ、映画製作を禁じられた人や、亡命せずにはいられなかった人がいるくらいだから、少なくとも表現の自由は存在しないと見ていい。本作の監督であるジャファル・パナヒも映画製作を禁止された人だ。
なのでパナヒ監督は、本作を映画ではない体でゲリラ撮影したらしい。なかなか無茶をする。

話を戻すと、イランの問題を少し分かっていると、この作品の中で行われる様々な会話が非常に興味深い議論になっているのが分かる。
二つある法律、政治対立、これらは矛盾を生み出す。ズルく抜け道を探そうとするイランの国民性にも問題があるのかもしれない。
そして、そんなふうになってしまったのには元々のシステムに問題があるのではないかと、根本的な問題に戻ってくる。
抜け出せない負のループに陥っているようにみえるのだ。

よく海外では、日本の犯罪が少ないのは刑罰が厳しいからだと言っていたりする。
だけど自分の感覚では、この悪事を働いたら刑罰はどれくらいとか、そもそも知らないし興味もない。
つまり、刑罰が厳しいから、法律で禁じられているから罪を犯さないのではない。もっと単純に悪いことだからやらないのだ。
逆に言えば海外では、法で禁じられていなければあらゆる罪を犯すということになる。
この感覚の違いがイランの法律をグチャグチャにするのだ。
見せしめなどという発想が生まれてしまうのもこの感覚の違いのせいだろう。

文化も宗教も違う国に対して自分たちの基準で、こうすればいいと言うことは簡単だが、実際はそんなに簡単ではないと感じ取れてしまうだけでもこの作品は素晴らしい。そして何より映画として面白いのだ。

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つとみ

3.5 パナヒ監督の心の声

2025年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

採点3.6
パナヒ監督自身がタクシーを運転する、ドキュメンタリー風な作りの人間模様。
まぁトラブルに次ぐトラブルの連続。こんなのが日常だったらすごいことでしょうね。
その中でも、拾ったお金を返す返さないの件がたまらなく可愛かったです。
「このバラを全ての映画人のために」は正にパナヒ監督の心の声。実に素敵でした。

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白波