ボーダーライン(2015)のレビュー・感想・評価
全249件中、241~249件目を表示
越境
国境付近で繰り広げられる麻薬捜査を描いた本作。
—
撮影ロジャー・ディーキンス、凄まじ。
隊列を組んで国境付近へと向かう黒い車。それを映すカメラが地上から空へと移動するライド感。ヘリコプターの羽音と共に加速し移動するカメラ。
ただそれだけだが、素晴らしい。ただただ素晴らしい。
国境への道程、それこそがこの映画の描いたものである。
—
国境…もちろんそれは、アメリカとメキシコの地理的関係だけを指すのではなく。
法と超法規的措置との間にある境でもあり、善と悪との境でもある。
善?この映画に善なんてあったか?メキシコ麻薬カルテルも、コロンビア・カルテルも、かき回すCIAも、捜査するFBIも、それを指示するお偉方も、そしてシカリオ(暗殺者)も、それぞれの論理それぞれの流儀によって動いているだけであり、そこに対立が生まれ「境」があるというだけだ。
自分は正しい側にいる人間だと信じ流儀をかざすFBIの若造を、だから老獪なCIAは笑うのだ。お前の流儀で、この「境」を越えられるのか?この「対立」を無くせるのか?まだそんな事を信じているのか?それが傲慢なんだよ、と。
—
FBIのケイトが「境」を越えたのは、ラスト、サインした時だ。自分の信じる流儀を捨てざるをえなかった時だ。
「捨てなければ殺す」と迫るシカリオも、遠い昔に善を捨てざるをえなかったのであり、そのオトシマエをつけるために暗殺者になった。
それぞれの越境の物語。凄まじく面白かった。
—————————
追記1:いろいろ書いたが理屈よりも、アクション映画としてカッコいい。ミステリとして無駄を省いた脚本がいい。エンタメとして面白い。なによりベニチオ・デル・トロが素晴らしい。
追記2:「越境」といえば、コーマック・マッカーシーだなあ。そのことに触れた海外評も多い。『ノーカントリー』では、己の流儀で境を越えその傲慢さ故に罰を受けたジョッシュ・ブローリン、本作にも出演。マッカーシー『悪の法則』の越境を分かり易くエンタメに落とし込んだのが本作だと思う。
マッカーシー好きにはグっとくる映画だったなあ。
追記3:監督ビルヌーブ。『灼熱の魂』はギリシャ神話、『複製された男』はサラマーゴ、本作は(勝手な決めつけだが)マッカーシー。なかなかに文芸な監督さんだと思う。
カンヌで大好評を得るも受賞を逃した本作。(受賞作「ディーパン」も大好きだったけど)。ビルヌーブ監督は賞なんて取らんでも充分にやっていける、エンタメと文芸の境を横断しろ、ガンバレ。(素人がエラそうにすみません)
2度と俺に銃を向けるな
刺激的で重苦しい素材を丁寧に
エミリー・ブラント。 じゅうぶん女性的な人だが個人的にはお色気は感じない。出演は「とらわれて夏」のジョシュ・ブローリン。 ベニチオ・デル・トロがけっこういい役者だなと思った
Movix堺で映画「ボーダーライン」(Sicario)を見た。
劇場公開日:2016年4月9日
2015年製作/121分/R15+/アメリカ
原題:Sicario
配給:KADOKAWA
エミリー・ブラント
ジョシュ・ブローリン
ベニチオ・デル・トロ
午前中なのでMovix堺の駐車場はすいている。
公開初日の第1回目上映だが観客は20人くらいだろうか。
主演は「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のエミリー・ブラント。
じゅうぶん女性的な人だが個人的にはお色気は感じない。
出演は「とらわれて夏」のジョシュ・ブローリン。
ベニチオ・デル・トロがけっこういい役者だなと思った
アメリカとメキシコの国境で起こる麻薬戦争をリアルに描いた犯罪アクション。
巨大なメキシコの麻薬組織を殲滅するため、米国防総省の特別部隊にリクルートされたエリートFBI捜査官エミリー・ブラントは、謎のコロンビア人・ベニチオ・デル・トロとともにアメリカとメキシコの国境を拠点とする麻薬組織撲滅の極秘作戦に参加する。
命の危険が頻繁に起こる。
殺された人の死体の映像が数十体。
警察官が爆弾で2人殉死。
そういう映像が冒頭からずっと続くことになる。
そういうことなので映倫区分はR15+である。
上映時間は121分。
長さは感じない。
満足度は5点満点で4点☆☆☆☆です。
絶妙な暗さが素晴らしい!
『ボーダーライン』を観る。4月9日公開の作品を試写会にて。おもしろい‼︎麻薬カルテルとの国境での戦いが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の手によってとんでもない作品に仕上がった。助演にはベニチオ・デル・トロを添える。主演を超える存在感を発揮するところは、さすがの一言。この監督の“暗さ”を撮る技術は完璧。人の闇の部分の暗さを表面に出す演出力。さらに画面が暗く何を映し出しているのかわからないまま、音だけで表現する。その両方の“暗さ”が重なり合って、下手なホラー以上の怖さが存在する。この暗闇の先には何があるのか、怖いもの見たさを煽る。冒頭の突撃、護送車とパトカーが走る、トンネルを捜索する…印象に残るシーンがたくさんあり、そこには太鼓(?)の音が常に響いている。それが印象的すぎる。そこに息や銃声、エンジン音や物音が重なり合い素晴らしい映像が出来上がっている。アカデミー賞の撮影、作曲、音響にノミネート。
原題の意味が最後に活きてくる、ラテン風味剥き出しの骨太なドラマ
メキシコの麻薬カルテル摘発に躍起になるFBI捜査官ケイトは国防総省にヘッドハンティングされて全容が明かされない秘密の作戦に参加することになり、得体の知れぬ笑みを浮かべる掴みどころのない上官と眼光鋭く寡黙な謎のコロンビア人とともに国境地帯へ赴く。肝心なことは何も知らされず右往左往するケイトは合法と非合法の狭間で作戦の真相に近づいていく。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』では無敵の英雄に扮したエミリー・グラントが本作では理不尽な現実に振り回される主人公を好演。監督はドゥニ・ヴィルヌーブ、過剰に内省的で難解だった『複製された男』とは全く異なるヴァイオレントで骨太な作風に驚きましたが、あちこちに無造作に放置される死屍累々にラテンエッセンスが剥き出しでニヤリとさせられました。
冒頭に語られる原題タイトル”Sicario”という単語の意味が最後に突如活きてくるので、この凡庸で印象に残らない邦題はちょっと残念。
全249件中、241~249件目を表示