劇場公開日 2017年3月10日

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モアナと伝説の海 : 映画評論・批評

2017年3月7日更新

2017年3月10日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

甘くないディズニーの新ヒロイン!「レリゴー」に負けない名曲も満載

「私はプリンセスじゃないわ」とモアナは言う。まるで歴代のディズニー・プリンセスとは違うから、と主張しているように聞こえるが、実際、そう聞いてもいいと思う。これまでに有色人種のプリンセスは何人もいたが、こんなにたくましく筋肉質の姫はいなかった。海に選ばれ、島を救うため冒険に乗り出す勇敢な彼女には、アクション・ヒーロー的なかっこよさがある。だからといってボーイッシュなわけではなく、ちゃんと女子力もあってかわいい。しかも迷いや怯え、脆さも見せるから身近に感じられるという、古い時代の新しいヒロインだ。

もうひとつ、モアナが画期的なのは、恋に落ちないということ。モアナは半神半人のマウイとともに、クエストとミッションの旅に出る。マウイ登場の愉快なナンバー「俺のおかげさ」は、ブロードウェイ・ミュージカル「ハミルトン」にラップを持ち込んで観客を熱狂させたリン=マニュエル・ミランダのワザが最も光る1曲だろう。「アラジン」のジーニーを思わせる、やたらと自信満々なこの大男が実は虚勢を張っているだけだとわかると、さらに愛おしく思えるはず。だが、たとえ背景にロマンティックな風景が広がったとしても、マウイとモアナの間にロマンスはしのび寄らない。つまりはバディ・ムービーであって、これが清々しい。

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プリンセスものに付きものだった甘さの排除は、かわいいブタのプアを置き去りにしたことにも表れている。代わりに同行する、しゃべらない、かわいくない、意思の疎通さえできているんだか怪しいニワトリのヘイヘイは、役立たずでアホな点こそがラブリーなキャラ。ニュー・タイプの相棒なのだ。

こうした新しさを適度に盛り込みながらもディズニーらしさは鉄板。ポリネシアの神話や伝説を練りこんだストーリーテリングは鮮やかだし、南太平洋の海と光を描き出した映像の美しさはアートそのもの! 「アナと雪の女王」の「レリゴー」にも負けないパワフルな名曲が満載でわかりやすいテーマがバーンとあり、モアナの成長がある。

おまけに、特筆に値する、憎めない敵キャラがいる。グラムロック系のカニ(吹き替えのROLLY好演!)や、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」をNHKのどーもくんにやらせたような海賊たちとのバトルは痛快だ。老若男女が共感し、応援し、誇らしく思えるようなヒロインの活躍に拍手。字幕・吹き替えともに素晴らしい声をもった南国育ちの新人を発掘・起用したことにも拍手を送りたい!

若林ゆり

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