ショート・ターム
劇場公開日:2014年11月15日
解説
10代の少年少女を対象とした短期保護施設を舞台に、誰にも言えない心の傷を抱えた女性と子どもたちが、大切な誰かとともに生きる喜びや希望を見出していく姿を描いたヒューマンドラマ。ティーンエイジャーを預かる短期保護施設(ショート・ターム)で働いているグレイスは、同僚でボーイフレンドのメイソンとの間に子どもができたことがきっかけで、幸せな将来が訪れると希望を抱く。しかし彼女には、メイソンにも打ち明けられない深い心の傷を抱えていた。2013年のサウス・バイ・サウスウェスト映画祭でプレミア上映されて審査員特別賞を受賞し、そのほか多数の映画賞で話題となった一作。
2013年製作/97分/G/アメリカ
原題:Short Term 12
配給:ピクチャーズデプト
スタッフ・キャスト
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子どもたちが置かれた環境のあまりの酷さ。
親は選べない。
ネイトの軽薄さ。
マーカスの底知れぬ怒りと悲しみ、生きづらさ。それでもなお、他者をいたわれる優しさ。
ジェイデンの癒されない怒りとつらさ。
所長に「良い人だ」と評されるジェイデンの父親。
そんなだからジェイデンは本当のことを言えない。
「長年この仕事をしてきた」だけで「私は間違ってない」なんてあの所長はクソだ。
マーカスは歌で、ジェイデンは物語で、自分の痛みと辛さを表現できて、それを聞いてくれる大人がいて、よかった。
でも、そんなことで救われるような浅い痛みじゃないんだよね。
よく、怒りは二次感情だと言われる。
本当は別の感情があり、そこから派生するものだと。
それを解消せよと。
そんなこじつけみたいなことしてまで、怒りを否定するのは何なんだろう。
怒りは怒りだと思う。
親が酷い、そのせいで自分の人生、酷いハードモードになってる。
それは、怒り以外の何ものかなんですか?
そんなわけあるか。
サミーがぬいぐるみを取り上げられたように、
専門家につながれたとしても、それが自分にとって良い人とは限らず、救われるとは限らない。
救われないまま歳を重ねて大人になってしまい、
生きづらさゆえに色んなことがうまくいかないと、
周囲は自己責任、という目線を向ける。
親のせいでこんなことになっていたとしても、そこまで理解して寄り添おうとしてくれる人は、いない。
重いからと監督自らカットしたらしいけど、フルバージョンが観てみたい。
人生の不条理を描いた、最高の映画だ。
こういう真面目な映画を重いと言って敬遠するような人が、私は無理だ。
マーカスの歌と、傷ついたジェイデンのために誕生日を祝おうと皆に呼びかけるところ、涙が出た。
メイソンが養子だったと知ってびっくり。
彼が、グレイスの瞬間的に感情が振り切れて他人を振り回してしまうのに、見放さない包容力は、愛されて育ったゆえに培われたものなんだろうなと。
暴力や暴言を直接受けたわけではない。
それでも、親の不仲や、感情的なところ、に傷付けられていたんだと、大人になって理解した私にとって、寄り添ってくれるような映画だ。
人として社会で生きるためには、子に衣食住だけを与えるんじゃダメだと思う。
必要なものを与えられず、大人になって生きづらさを感じてるのに救われないままの自分は、この映画に、マーカスとジェイデン、グレイスとメイソンに、少しだけ楽にしてもらった気がする。
どんな酷いことを言っても見放さないメイソンがいてグレイスが羨ましい。
マーカス、お幸せに。。
2022年11月14日
iPhoneアプリから投稿
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青少年保護施設のショートターム
そこで働くグレイスを軸にとりあげる
保護観察員として子供たちに寄り添い、親のような友達のような関係を築いていく
埋まらない距離感、日々変動する感情に動かされる
そんななかジェイデンという少女が施設にやってくる
初めは壁を作っていたが、グレイスの関わりにより徐々に変化が見られる
ジェイデンは物語という形で父の虐待を示唆
虐待の可能性を所長に報告をするも父に引き取られてしまう
グレイスの父の出所、マックスの自傷、ジェイデンの外泊許可、グレイスの妊娠など数々の要因が重なり
メイソンにあたり、ジェイデンの家にバットを持って入り込んだ
ジェイデンに会い、踏みとどまったグレイスはかつてジェイソンがそうしたように自身の境遇をこぼしていく
ジェイソンとグレイスは父と戦う覚悟を決める
ラストシーン、冒頭と同じく職員が4人で談笑
グレイスとメイソンがマックスのその後を話す
これは優しい嘘か、真実か
ヒーローマントのような星条旗をかかげたサミーが飛び出して幕を閉める
2022年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
この映画で、癒された人がどれほどいるのかと思うと、申し訳ない限りですが、私には理解できませんでした。もちろん、ハートウォーミングないいお話だとは思います。タコのニーナのおとぎ話は、それだけを短編のアニメーションにしても通用するほどに優れたエピソードで、泣きながら少女が語るシーンはこの映画の白眉と言っていいと思います。
ただ、映画全体を覆う重苦しい空気と閉塞感が、何とも言えない「閉じられた」世界を想像させ、この日常が子供たちにとっていい影響になるとは思えない環境です。
ただの一例でいいから、この施設から旅立っていった成功者のエピソードを取り上げてほしかった。もちろん事実に忠実に映画化したのなら外ならず、映画という、90分の人生体験を期待する人にとって、この映画が、観客をどこへ連れていこうとするのか、よく解らないままラストシーンを迎えました。
そういう意味で、メイソンが語る出来事、カフェで偶然会ったこの施設出身の男の子に挨拶をした話を、なぜきちんとドラマにしなかったのか疑問です。心温まるいい話を切り離すような奇声を上げ、やせっぽちの少年が白昼堂々と脱走を企てます。
少年は、キャプテンアメリカを気取り、星条旗をマントのようにまとい、奇声を発しながらタッチダウン(施設の外に脱走)を狙います。それは、まるで予定調和の鬼ごっこのようにも映り、現にもう一歩のところで、少年は向きを変え、追いかけてくる保護管に向かって突撃しようとします。その楽しそうな表情は、彼らの日常が自己実現欲求を満たすための開放を表しているのでしょう。
冒頭のシーンをかぶせて、同じシチュエーションで締めくくるテクニックが使われていますが、冒頭のシーンは、入所して一日目の同僚をリラックスさせる「すべらない話」で打ち解けようとさせる保護管を一気に緊張の極致に導き、彼らの過酷な仕事ぶりと、施設に入っている子供たちの極限状況をいっぺんに見せます。このスタートとラストの対比こそが、脚本家の一番の狙いなのだと思います。
問題児ばかり揃っている施設の中で、自らが父親による性的虐待を受けた経験のあるグレイスが、同じ境遇の少女に共感し、とんでもない行動に出る様はエキセントリックで、どこかの何かのドラマで見た気になる既視感があります。
特に「世界にひとつのプレイブック」は、この映画の直前に公開され、高い評価を得たので、何らかの影響は受けていると思われます。
2017.11.29
2022年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ー 親からの虐待、ネグレクトにより傷ついた心を持つ子供たちのための短期保護施設施設「ショートターム12」。
そこで働くグレイス(ブリー・ラーソン)と、同僚でボーイフレンドのメイソン。(ジョン・ギャラガー・Jr)
子供ができたことをきっかけにふたりの将来は幸せなものになるかと思われたが、グレイスは誰にも打ち明けられない心の闇を抱えており、メイソンに子供は産めない・・、と伝えてしまう。ー
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・今作には傷ついた心を持った10代の子供たちが多数出演しているが、特に印象的なのは母親に虐待された故に嫌悪するマーカス、そして父親に虐待されて入所して来たジェイデンが印象的である。
・出所が近いマーカスが母親への憎しみをラップに乗せて歌うシーンと、ラップの歌詞。
- けれど、彼はその後立派に更生した事がメイソンにより語られる。-
・ジェイデンがグレイスに語ったタコのミーナとサメの話。
- ”君の脚を一本くれよ・・。お腹が減ったからもう一本。全部くれよ・・。”
父親からの虐待を暗喩している。そして、ジェイデンが心優しき女の子である事も・・。-
・短期保護施設施設「ショートターム12」で働くグレイスも、父親からの虐待を誰にも言えずにいた。刑務所に入っていた父親が仮出所すると聞いたグレイス。
そして、恋人のメイソン(良い奴である。)の子供を身籠った時に言ってしまった言葉。
”生まない・・。”
- 親から虐待された子供の中には、自分も子供を虐待するのでは・・、という思いを持つ子がいるという・・。-
<ジェイデンが、父親に家に戻ったと聞いたグレイスが所長を怒鳴りつけ、バットを持ってジェイデンの家に自転車で駆け付けるシーン。ジェイデンは無事だったが・・。
そして、二人は夜中、ジェイデンの父親の車をバットで叩き割る。
両親による子供の虐待はコロナ禍も影響し、増えているという。
私には、自分の子供を躾と称して、虐待する人間の気持ちは全く理解出来ないのであるが、今作のラスト、グレイスが過去の忌まわしき出来事をジェイデンと共に打ち砕き、メイソンとの子を持つ決断をするシーンと、彼女のお腹にいる子供の姿を二人で喜びながら、モニターで見るシーンは沁みたなあ・・。