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ルー・チューアン 脚本・監督の2012年製作(116分)中国映画。原題:王的盛宴 The Last Supper、配給:ツイン。
香港映画ではない、大陸側の中国の映画は初めて見たかもしれない。
統一中国の始まりの様な漢王朝の始祖である劉邦中心の映画だから、英雄的な映画となっても良いはずだが、死んでいく劉邦の妄執が印象に残り、全くそうなっていない不思議な感触の映画だった。
物語の中心は劉邦、及び項羽、韓信。劉邦は中国俳優のリウ・イエが演じる。劉邦との戦いで壮絶な最後を遂げるのが香港俳優ダニエル・ウー演ずる項羽、そして、将来の禍根を摘み取るため劉邦の意志ということで、妻の呂雉により処刑される韓信は台湾俳優のチェン・チェン。晩年の劉邦及び呂雉に関して肯定的に描いてるとはとても見えず、暗さが際立つ印象で有る。
穿ちすぎかもしれないが、歴史的物語の外型を借りて、現在の中国の香港及び台湾への姿勢を未来が無いドス黒いものとして、批判的に見ている様にも解釈された。権力を握った呂雉がその後、劉邦の息子(側室戚夫人の子)を殺害することも語られ、建国の精神を忘れた?現中国政権もイメージングされた。
項羽により殺される秦の最後の君主・子嬰を演じたルー・ユーライの高貴な佇まいと死に際の気高さは、かなり印象に残った。滅ぼされる皇帝への敬意の様なものは感じた。権力を失った誰かへの想いの反映なのか?
原作が司馬遷編纂の「史記」(紀元前92~89年完成)ということで、物語の舞台は当然ながら紀元前。日本では記述としては何も残っていない時代ということで、映画でも触れられていた様に真偽は定かで無いとしても、これだけの物語を残す中国の歴史書の存在に羨ましさは感じた。また、紀元前ながら鉄製品が豊富で、鎧、及び剣や盾の強力さも印象に残った。
古代中国の文明度の高さには、悔しさも有るが敬意を覚えた。
監督ルー・チューアン、脚本ルー・チューアン。製作:ハン・サンピン、ルー・チュアン、音楽リュウ・トン、撮影:チャン・リー。
ダニエル・ウー項羽、リウ・イエ劉邦、チャン・チェン韓信、チン・ラン呂雉、シャー・イー張良、子嬰ルー・ユーライ。