劇場公開日 2014年8月1日

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るろうに剣心 京都大火編 : インタビュー

2014年7月30日更新
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佐藤健×神木隆之介×大友啓史監督が明かす「るろ剣」続編に込めた熱

ほほの十字傷に、人を斬ることができない逆刃刀――緋村剣心が「るろうに剣心 京都大火編」「るろうに剣心 伝説の最期編」の2部作で、スクリーンに帰ってくる。前作「るろうに剣心」に続き、剣心を演じた佐藤健、剣心と相対する存在として刀を交える瀬田宗次郎に抜てきされた神木隆之介。そして、今回もキャスト陣を見つめ続けた大友啓史監督が顔をそろえ、前編「京都大火編」を軸に、続編に込められた熱を明かす。(取材・文/編集部、写真/山川哲矢)

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前作では、神谷薫(武井咲)を守るため刀をとった剣心だが、今回は託されたものが日本の命運だ。立ちはだかる敵も志々雄真実(藤原竜也)、四乃森蒼紫(伊勢谷友介)を筆頭に、これでもかといわんばかりに強力な布陣がそろった。倒しても倒しても現れる強敵を相手にし、撮影中は「撮り終わるかわからないほど大変」とこぼしていた佐藤。スケールアップしたアクションに人間ドラマ、そして続編への期待と双肩にのしかかるものは大きく、「本当に撮り終えることさえできないんじゃないかと思いながらやっていたので、とても感慨深いものがあります。よく完成しましたね、それが奇跡」と安堵した表情をのぞかせた。

続編から参加した神木は、人生初のブリーチで髪色を濃紺に染め、宗次郎になりきった。キャラクターに並々ならぬ憧憬の念を抱いており、「殺陣もそうですし、完成した作品を見るとよくあんなに早く立ち回りができていたなって(笑)。すごく大好きなキャラクターだったので、なりきってアクションや芝居をやっている時間が楽しくて、本当に夢のような時間だったなと思います」と笑顔をのぞかせる。

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大友監督は、「面と向かってほめちゃいけないんだけど、役者としても身体能力や演技力の高さでいっても、このふたりは若手では双璧」と全幅の信頼。ふたりを半年近く追い続け「健君も言っているけれど、『本当によくやったなあ、こいつら』という感じ(笑)。スタッフもキャストも、このレベルのことを半年で本当に頑張ったよね。自分が撮っていながら、僕が思った以上に熱気とか映っているものが強い気がするんです。最後までたどり着けるかどうかわからなかったというギリギリの状況も含めて、映像って何が功を奏するかわからないと思いましたね。豊かなスケジュールでのんびり撮っているものがいいとは限らないでしょうし。僕らは激動の時間を過ごしたんだなと感じます。そんな大友監督に呼応し、佐藤も「幕末でしたね」と口をそろえる。

明治政府のもと、平和な日々が訪れたかに見えた日本。しかし、政府の影として暗躍しながら裏切られ、生きながらに体を焼かれた志々雄が、「弱肉強食」の信念で新たな時代を支配しようと動き出す。そんななか、志々雄を止めるべく奮戦する剣心は、最初の強敵として宗次郎と出会う。人斬り抜刀斎として人を殺めた過去を封じ、逆刃刀に「不殺の誓い」を込めた剣心、幼少期に虐待された体験から感情が欠落してしまった宗次郎。佐藤と神木が挑んだふたりの剣客は、「バックボーンは違うけれど、合わせ鏡のようなキャラクター」だ。大友監督は、ふたりの戦いを「『伝説の最期編』のクライマックスで、剣心がどうやって戦うのかということへの大事な導入部」だと語る。

「佐藤君という役者も含めて、この映画の求心力は剣心なんですよね。その中で宗次郎は、もうひとりの剣心というものを見せ付けるような動きや、剣心のアイデンティティである逆刃刀を折り脅かすという、剣心と裏表のイメージでいるんです。一歩間違えれば剣心だって志々雄になったかもしれないし、志々雄だって剣心になったかもしれない。綱渡りのギリギリのところで、それぞれのあり方が決まっているんですよね、原作も含めて。宗次郎は、剣心の前にもうひとりの剣心が現れたというイメージで撮っていたけれど、内に秘めているものは違う。違うものは何だろうということを撮りながら発見していきました」(大友監督)

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宗次郎は、剣心と対をなす重要な役どころだが、劇中でバックボーンが描かれることはない。神木は、「自分がどこまでいけるかというプレッシャーもありましたが、殺陣でも芝居でも、瀬田宗次郎という人間がそこに存在しているということを意識しながら、楽しくやらせていただきました」とアクションに加え、笑顔ひとつにも闇や人間性をにじませ、重い過去を背負った天剣(天ぷの剣才の略)を熱演。「殺陣の技術もそうですし、剣心を脅かす存在でなければいけない、健君以上にならなければいけないという心持ちで練習していました。面と向かったときに、健君がちょっとでも『本気を出さないとやばいかも』と思うような存在でありたいと思っていました」と演じきった。

人気漫画の映画化に挑んだ大友組は、原作を土台に自分たちの「るろうに剣心」づくりへと突き進んだ。続編2部作はさらなる進化を遂げ、アクションにも俳優陣の強い思いが随所にほとばしっている。

『るろうに剣心』は感覚的にエンタテインメントなんです。漫画でも、戦う剣心が格好いいということが1番の魅力だと思うんですよ。だから、『格好いい、すごいと思わせたい』ということを追求していくと、リアリティが必要になってくるんです。リアリティがないところでは、どんな動きをしても響かないけれど、この人は本当に殴られている、斬られているというヒリヒリ感は、人を興奮させると思うんです。僕たちは実際に戦っているんです」(佐藤)

「アクション監督の谷垣(健治)さんに『本当に斬りにいけ』と言われていたので、本当に顔を突きにいったり、斬りにいったり、本気で避けてもらわないと当たるくらいの心意気でやっていました。そういうことや健君が言うリアリティ、それぞれのキャラクターの物語、どんな人生を歩んでこういう戦い方になったのかということを意識しながらつくっていきました」(神木)

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宗次郎は大久保利通暗殺のため縮地で馬車に飛び移り、剣心はさらわれた薫を追って屋根を爆走。桁はずれのアクションに加え、殺陣のなかでも刀を握りながら人間離れした走りを見せている。佐藤は「(神木は)若い(笑)。すごいなと思う。僕は1回ダッシュしたら休憩がほしくなるけど、隆はすぐに同じクオリティでできるんですよね。僕も5年くらい前はそうだったかな(笑)」と笑いながら、「全部大変なんですよ(笑)。1対1も難しいし本気なんだけれど、ひとりで大人数を相手にするのって、寒くなりがちなんです。後ろにいる敵が待っていたり。でも、そこもリアリティを追求するから、気を使って難しいですね」。神木も「すごく生々しく演じました。アニメではさわやかな感じで殺していたんですが、人間味がありつつも氷のような恐ろしさと生々しさを出したくて。怖いというか気持ち悪くできたのかな」と振り返る。

プライベートでは交流がありながらも、役者としての対じははじめてとなったふたり。壮絶な衝突を経て、それぞれをどのような存在だと感じたのだろうか。

「もちろん作品は見ていたけれど、現場で隆が本気で芝居をしているのを見るのは初めてでした。お互いに他の現場とは別の次元でやっているところはあるにせよ、やっぱり『さすがだな』と思いました。宗次郎をずっとやりたいと聞いていたけれど、『この役をやるんだったら自分が絶対日本で1番できる』という確固たる自信があったから、やりたいと言っていたんだなっていうのが伝わってきましたね」(佐藤)

「全力でぶつかっていって、それを受けて返してくれるということをお芝居のなかで感じて、『やっぱり健君は一歩先を行く人だな』とすごく思いました。現場での佇まいもそうですし、受け入れてくれる器が大きい。物事に打ち込む姿勢や爆発力が本当にすごくて、尊敬しながら戦っていましたね。これからもずっと追いかけ続けていきたい人だなって、実感しました」(神木)

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続編は、前編「京都大火編」での高ぶりをそのままに、後編「伝説の最期編」へと突き進んでいく。「伝説の最期編」の編集作業にあたり、「ラストに夢中です、今」と気持ちを高ぶらせていた大友監督は、「志々雄と剣心がどう決着をつけるのかというところって、勝ち負けではない何かが出てくると思うので、見応えがあります。そこに向かうところも含めて、世界で見たことのないアクションだと思いますね」とニヤリ。「『プロジェクトA』でジャッキー・チェンがみせていたのは1対3の戦いだけれど、それを超えようと1対4をやってみたり(笑)、1対1でも男同士の剣での対話を映しているんです。女性が見ても、感情がすごくわかってもらえると思うんですよ」と度肝を抜くアクションを用意し、観客へのサプライズも忘れない。大友監督がつくりだした「るろうに剣心」の世界に飛び込み、剣心らとともに動乱の世をうごめく熱を感じてほしい。

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