飯舘村 放射能と帰村
劇場公開日:2013年5月4日
解説
東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故を受け、全村避難を余儀なくされた福島県・飯舘村の2つの家族を追い、故郷を失った村人たちの葛藤や苦悩の1年間を記録したドキュメンタリー。原発から30キロ以上も離れていながら、風向きや降雪・降雨のため放射能に汚染され、全村避難となった飯舘村。酪農業を営んでいた志賀家の老夫妻は、村から数十キロも離れた町で暮らすことになり、別の場所へ避難した息子は酪農の道を捨てて工場に就職する。一方、4世代で暮らしていた長谷川家も、両親と長男一家で別れてしまう。父親は再び長男一家と暮らすことを望むが、長男は、子育てなど将来を考えると、村に帰ることはないと思うようになる。政府は2011年末から膨大な費用をかけて除染を開始するが、子どもたちが安心して暮らせるレベルにはほど遠く、村人たちからは疑問や不信の声が噴出する。監督は「沈黙を破る」「“私”を生きる」の土井敏邦。
2013年製作/119分/日本
配給:浦安ドキュメンタリーオフィス
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2013年7月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
街の雑踏をすり抜け、意を決して劇場に向かう。相変わらずひんやりひっそりとしていたけれど、場内はいつになく混んでいた。
スクリーンの中の人々は、涙を流したり、怒ったり、不安を訴えたり、憤ったりしていた。…その場(居合わせている人や所属している集団)に合わせるかのように。
自分自身、怒ってる部分、不安がっている部分、自分や他者に憤っている部分がある。その時、その場で気持ちは揺れる。一人のときは、なおさら。様々な気持ちのバランスの取り方が難しいと、つくづく思う。怒っているだけ、不安がっているだけでは、生活していけないから。
そういう点から、この映画には物足りなさが残る。様々な事情を抱える家族の姿や放射能除染の現状について、じっくり丁寧に描かれている、と感じるからこそ。この監督の手腕なら、前面に押し出される怒りや不安の裏にあるもの、選択や決断の難しさ…なども、もっと掬いとれたのではないか。後半に至るにつれ、東電や政府の対応不手際に対する告発に傾いてしまったのは残念だ。