鑑定士と顔のない依頼人のレビュー・感想・評価
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これをただの胸糞映画と捉えるか否か
まず、美術品が美しいです。
家具から家から絵画まで本当に綺麗。
胸糞映画としておすすめ出てきますが、ただの胸糞ではなく、人生とは現実こんなものだし、おそらく見ている側もいつの間にか主人公と同じ目線に立っているから面白いんだと思います。
何が”贋”で、何が”本物”なのか?
偽物の中にも本当がというけれど…痛い。
愛を知らない寂しさと、愛を知ったからこそ味わう寂しさと、本人にとってはどちらが痛いのだろう。
予告を見て、贋作がらみのサスペンスなのかと思って鑑賞したら、かなりハードな、人間ドラマでした。
途中の筋が下に記したようにご都合主義的でちょっと唖然と・中だるみしたけれど、終盤、オチが示されてからのラッシュ氏の演技に胸が痛い。『シャイン』『英国王のスピーチ』『バルボッサ』と数ある名演の中でもさらに秀逸。
他にも、さすがのサザーランド氏も、下の<ネタバレ>に書いたように神レベル。
と、役者の力で魅せる映画ですが、予告を見てもわかる通り、映像美・音楽で作り出す世界観にも酔いしれます。美術品を扱っているんだから当たり前と言われるかもしれないけれど、屋敷のインテリアが凝りに凝っている。そのくせヴィラは見事な屋敷なんだけれど、庭とかがただの草地で掘っ立て小屋みたい。あれほど、精巧な機械類に囲まれていたのに、出来上がったオートマタの醜いこと。すべてが、監督の想いを物語っているようです。
邦題は、なんのこっちゃと興味を抱かせるにはいいのかもしれないが、原題・英語題の方が含蓄あります。
予告に「結末を知ると、物語の構図は一転する」とありますが、結末を知ってから見直すと、登場人物の言動への理解が幾通りにも広がり、サスペンス以外の映画にも見えてきます。
鑑賞者の価値観・人生観によって評価が変わる。
ある意味、ヴァージルの成長譚にも見え、ビターなハッピーエンド。
同時に、人生の悲哀を見る痛切なるバッドエンド。
ある人に目線を移せば、複雑な心情の中での復讐劇。
オートマター肖像画ー顔を見せない依頼人…そして主人公の職業・世間的評価。
真贋とは何なのか。価値とは何なのか。
人生とは何なのか。成りたいものー成れるものー今の自分。
自分を取り巻く人々との関係。あの時、ちょっと彼らと話をしていれば…。己への過信。無意識の侮蔑。
心の中がぐるぐる回る。ラストのオールドマンが心の中から消えない。
★ ★ ★
<以下ネタバレ>
★ ★ ★
セキュリティを盗んだのは女だけれど、筋書きを描いたのはあの機械工、でもって裏で糸ひいていたのはビリー。
でなければ、女の母とされている女性の絵の作者がビリーであるはずないし、
オートマタがあそこに残されているわけがない。
「愛すら偽れる(思い出し引用)」
ビリーを演じたサザーランド氏が、これまた神。偽りの関係の中に、ヴァージルに向けた本当の気持ちをにじませ、腐れ縁的な”仲間”としてのいつもと変りないやり取りの中に、”虚”を醸し出す。
この大仕掛けを成功させるべく仕組んでいるのに、いろいろなところで「気づけ」とばかりのサインを散りばめる。それもオチを知った後に鑑賞しなおすと「ああ」と気づく感じ。この怪演があるからこそ、この映画に深みが出る。
ロバートが、あとで見返すとただの詐欺師にしか見えない(友達の振りして裏切る)のと好対照。
この対照も狙っての演出なんだろう。
ビリーの絵をもっとちゃんと見ていれば、あの絵の作者がビリーだってわかって、なんかおかしいぞって気が付いたのに。
あの屋敷のことを、あそこにたむろしていた人に聞いていれば、なんかおかしいぞって気づいたのに。
心づくしのケーキすら袖にする、秘書が結婚しているかも知らない、他人にはまったく興味を示さない男が、人間性を取り戻した物語かと思っていると…。
なんであんな情緒不安定女に、あんなに翻弄されるのかと不思議だったけれど、やっぱり…。脚本のご都合主義にも見えるけれど、オールドマンの女の好みを知り尽くしているビリーが組んでいるのならね、と(ちょっと無理やり)納得。
「あなたなら高く売ってくれる…」オークションに出される品物に対する評価が上がることだと思っていた。TVの何でも鑑定団の方々に鑑定していただくと箔がつくように。本当の落札主が代理人を雇って落札することはあるらしいから、オールドマンの代わりにビリーが落札するのはありなんだろう。けれども、主催者が代理人を雇っているのがばれたら、落札価格を不当に引き上げる行為とみられてしまう。実際に法に触れるのかはわからないけれど、信用はがた落ちだろう。だから、この言葉でも引っかかっていいはずだけれども、”箔がつく”の方と思ったんだろう。
私は気が付かなかったけれど、真贋評価を胡麻化して、秘密の小部屋の絵画たちを不当に安く手に入れていることをほのめかすシーンを指摘する方もいる。
ヴィラの物を勝手に持ち出すのだって”窃盗”だし。
警察に届けなかったのは…。いろいろな推測ができるし、そのすべてが絡んでいるのだろう。
ビリーを踏みつけにした代償。
ビリーの恨みに対して、やったことがひどいというレビューも見受けられるが、ビリーにしたら、ヴァージルに人生をつぶされたようなもの。”画家”としての生涯をつぶされ、「共犯」でさえない=単なる作業員としてしかの価値しかないとされ…。機械工にはプライベートを相談するのに、長年組んだビリーには相談しない。人としてすら認めてもらえていない。ならばと、同じように人生かけたものを奪い取り、自分の”共犯”の証を、本来の価値を認める人々の手に渡してなかったことにしようとしたのか。
オートマタの真贋も、思い上がりへのおちょくり?
とビリーの立場に立てば、これまでヴァージルが周りにまき散らした人害の代償なのだけれど、生い立ちから人と心を通わすことができない男が、人と心を交わすことができたと思った瞬間と思うとやるせない。恋をした相手だけでなく、プライベートを話した友人みたいな機械工にすら裏切られる。
ラッシュ氏の演技にズドーンと胸を締め付けられてしまう。
唯一の救いが、執事。自分の仕事を着々とこなすことに誇りを持っていらっしゃるのだろうか。
そして、プラハでの思い出のお店が実在していたこと。否、本当に実在していたのか?オートマタに似たあの変な店。
印象的なラストです。永遠にあの時にとらわれるんだろうな。
美意識に反する❗
予想外の展開
最後言葉が出なくなる
切ない顔
騙された!
とっても辛い初恋
ミステリー要素たっぷり。
ミステリー好きな人は楽しめる作品。自分はミステリー大好きなのでめちゃ楽しめました。
2回目を観れば色んなところに伏線が貼ってあったのがわかるように思う。まぁ、1回目でも途中からちょっと??と思うところはあったんだけど。
しかし、まさかあんな結末とは・・・。
作中で主人公の鑑定士が語る、「贋作者にはどうしてもその人特有のクセ(個性)が出る」という話が印象深い。偽物の中にもリアリティ(真実)がある、という示唆か。。
それが一番最後のシーンの伏線にもなってるのかな?彼の望みはかなわないと思うけど。。あとの人生、彼は想い出だけで生きていくのかな?という感じ。
それはそれで寂しいラスト。
何はともあれ、これは観るべき作品です。
映像が芸術的で美しい
【”いかなる贋作の中にも必ず本物は潜む・・・。” 若きシルヴィア・フークスの美しさに”やられた”作品】
<鑑賞当時の衝撃と、再鑑賞した冷静な感想を織り混ぜて記載しています。>
ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は常に手袋をつけているほどの潔癖症で”本物の女性”には興味がない(と言うか、生理的に苦手)、少し変わり者だが、美術鑑定士としては一流の男。
当然、女性経験はなく、一番大切にしているのは膨大な数の”一流の美しき女性の肖像画”である。
相方のビリー(ドナルド・サザーランド)と画策して、自身のオークションで”一流の美しき女性の肖像画”を安い値段で競り落としたりしているが、態度は慇懃で尊大である。
時折、”したり顔”で口にする言葉は、”いかなる贋作の中にも必ず本物は潜む・・。”である・・。
-ジェフリー・ラッシュが、良い味を出している・・。ー
そのヴァージルに、クレア・ベッソン(後半まで、一切顔を出さないが・・シルヴィア・フークス)という広大なヴィラに住むという女性から屋敷内の装飾品、家具、絵画一式を売り出したいので、鑑定して欲しいと依頼が入り・・・。
・クレアは15歳以降、一切外に出ていない。その理由は14歳の時、プラハの”天文時計”のある広場が気に入り、近くの”ナイトアンドデイ”という店に入った後、有る出来事が起きたから・・。
管理人からは、”広場恐怖症”と説明される・・。
-深まる謎に引き込まれて行く・・。-
・クレアのヴィラに足を運んだヴァージルが床で見つけた”古びた歯車”。
知り合いの修理屋ロバートに見せると、18世紀の機械人形制作者として有名な人物のモノと判明。以降、クレアの屋敷に足を運ぶたびに、”何故か”床に置いてある”歯車”を持ち帰り、ロバートに渡す。徐々に機械人形を作っていくロバート。
-面白い展開に更に引き込まれる。-
そして、ある日、クレアの美しき姿を覗き見したヴァージルが取った行動とは・・。
-が、いきなり姿を現すクレアと、急速に親密になっていくクレアとヴァージルの姿に少し”違和感”を覚え始め、ヴァージルが唐突に暴漢に襲われる辺りから、
ん?脚本が粗いぞ、ジュゼッペ・トルナトーレ監督と思い始めてしまう・・、が観賞継続・・・ー
そして・・・・・・・・・・。
<クレアのヴィラの向かいにあるバーに”常に”居る、小人症の女性の”言葉”と”名前”に驚愕し、慇懃で尊大だったヴァージルが、すっかり衰え、”ナイトアンドデイ”で注文を取りに来たウエイターに言った言葉・・・。
いやあ、面白かったですよ。ジュゼッペ・トルナトーレ監督。
この後の作品「ある天文学者の恋」も面白かったが、それ以降作品を発表していない・・・。
新作を待望しています。>
<2013年12月 劇場にて鑑賞>
<2020年4月30日 別媒体にて再鑑賞
今作はこれ位、間を空けないとね・・。>
壮年男性の悲哀を描いた物語
堅物でセレブの凄腕鑑定士が、広場恐怖症の女性からの依頼を受け、いつの間にか女性に翻弄されていくストーリー。
サスペンス色はありますが、本題は女性に翻弄される壮年男性の悲哀を描いた物語です。個人的にはあまり好きなジャンルではありません。しかし、「映画全般に登場する芸術の素晴らしさ」、「上流階級ならではの所作」、そして「傲慢でプライドの高い主人公が翻弄される説得力のある展開」は興味深く、面白く感じることが出来ました。
それでも、サスペンスの設定としては無理があり過ぎて、雑に感じたのも事実です。
サスペンスとして鑑賞した私としては、やや低い評点を付けさせて頂きました。
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