家族の灯りのレビュー・感想・評価
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灯りの影
冒頭の海のシーンで、あれっ?となる。
人物・手前の錨・奥の船・さらに奥の海の向こう、それら全てにピントが合っている。映画作法をあえて無視した、違和感のある絵作り。
オリベイラ監督、百歳をこえてなおアバンギャルドやっとるなーと思う。
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劇中、ほのかな灯りが室内を照らす。
灯りがあるところには影ができる。
原題「ジェボの影」。
ジェボ(主人公の老人)にとっての影とは何だったのだろう?
他人から預かった金なのか?(分配されない富・停滞する経済)
何も知らぬまま愚痴をたれる妻なのか?(無知)
閉塞を打ち破ろうと勝手に出て行く息子なのか?(革新)
現状を憂いマリア像を仰ぐ義理の娘なのか?(信仰)
オリベイラ監督は、その100年の生涯で、それら全てを見て経験したのではないか。停滞するポルトガルの経済も、無知な民も、それらを打破しようとする革新も、何もかも。
それで何か変わったのか?それとも変わらなかったのか?
独りの老人に起きる出来事は、劇中に降る雨のように避けようがないのか。
雨が最後は海に辿り着く摂理のごとく、運命には逆らえないのか。
ラスト、罪を被るジェボに、室外の強い光が当たる。
運命を受け入れた「諦観」よりも、「力強さ」を感じたのは何故だろう。
受け入れ、それでも尚、生きていく意志だろうか。
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老人のジェボと若い息子。
ジャンヌモロー、クラウディアの若き日の残像と、この映画に刻まれた彼女たちの「老い」。
若さと老いの対比が印象的な映画だったなと思う。
過ぎ去った「若さ」への郷愁より、行き着いた「老」の方に迫力を感じた。悔しかったら此処まで来てみやがれ的な。
高尚過ぎる。
これを「素晴らしい!」「まるで絵画のようだ!」と絶賛したり評するには、自分の感性はまだまだ成熟していませんでした。
ストーリーは分かりますよ。展開も単調でよく分かります。
どうしようもない息子に翻弄される『老夫婦』と、その息子の『嫁』三人を中心にした会話劇です。自分の置かれている立場、身の上、苦悩、全ての状況をキャラクターが丁寧に抜かりなくきっちりと語ってくれるので、話に付いて行けないということは全くないです。ないのですが、如何せん面白がり方が分からないのです。
一応、息子も登場するのですが、彼はトリックスターの役目であって、要するに言ってしまうと『老夫婦とその息子の嫁の三角関係』のお話なんですよね。いや、実際にジェラシーの炎を燃やすとか、性的な関係がどうとか、そんな話は一切出て来ませんよ。でも、もう明らかにそうなんですよ。義父と義娘が会話しながらもう凄いんですよ、スキンシップが。熟年夫婦でもようやらんわ、てぐらいにお互いの手を絡ませちゃったりして。
でね、これを面白がれ、と言われてもキツいんですわ。
何て言うんでしょうか。一言で言ってしまうと「高尚」ですかね。三角関係が高尚ってのも、おかしな話ですが。
えー、ですから、きっとこういう映画を真っ芯から自分が楽しむには、もっともっと沢山の映画を観て勉強しないと駄目なんだな、と痛感いたしました。
ん~いやぁ~それにしても、小津安二郎も真っ青の動かない絵づらのオンパレードだったなあ。オイラのポケットには大き過ぎらあ。
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