はじまりのみち

劇場公開日:2013年6月1日

はじまりのみち

解説・あらすじ

「二十四の瞳」(1954)、「喜びも悲しみも幾年月」(57)、「楢山節考」(58)など数々の名作を残した日本を代表する映画監督・木下惠介の生誕100周年記念作品で、木下監督の若き日の姿を描いた人間ドラマ。戦中、脳溢血で倒れた母を疎開させるために2台のリヤカーに母と身の回りの品を積んで山越えをしたという実話を軸に、血気盛んな映画青年として軍部ににらまれ、松竹を一時離れるきっかけとなったエピソードなどを盛り込みながら、母子愛の物語を描き出す。アニメーション映画「カラフル」「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」などで高い評価を受ける原恵一監督が、自身初の実写映画に挑戦。木下惠介役に加瀬亮、母親たま役に田中裕子。

2013年製作/96分/G/日本
配給:松竹
劇場公開日:2013年6月1日

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(C)2013「はじまりのみち」製作委員会

映画レビュー

4.0どこまでも清々しく、まっすぐに

2013年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

どこまでも清々しく、心に染みる。そんな作品に、久しぶりに出会った。遠州ことばが心地よく、海の青さと砂の白さがまぶしい。静岡へ、太平洋を見に行きたくなった。
シンプルでオーソドックス。澄み渡るように美しい物語の余韻に浸るうち、この作品の緻密さ、濃やかさに改めて感じ入る。病床の母をリヤカーに乗せ、黙々と50キロの山道を行く。波乱万丈とは程遠い、地味で辛い行路だ。しかし、そこで彼が見聞きしたあれこれは、全て「その後」の伏線であり、クライマックスで見事に骨太な物語へ収れんされていく。まさに、この旅が「はじまり」であったと分かるのだ。
とはいえ、本作は、木下惠介監督とその作品群をめぐる謎解きや知的ゲームではない。母子の情に浸るもよし、人生の岐路に立った若者の成長と再生を見守るもよし、映画史の一コマを生き生きと知るもよし。観る者をしばらず、懐深く、おおらかに味わい方をゆだねてくれる。
俳優陣のアンサンブルも素晴らしい。主役の2人は言うまでもなく、控えめだが存在感のある父•斉木しげるや、弟と外界をつなぐ兄•ユースケ•サンタマリアもなくてはならない役どころだ。そして何より、便利屋•濱田岳! 小柄な身体を生かしたコミカルな役を重ねるうち、いつの間にか彼は唯一無二の役者さんになっていた。彼あっての本作、と言いたい。「破れ太鼓」が観たくなった。

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cma

3.0実在した人物、それを知る人の多い今に作り手は苦労したはず

2025年8月15日
PCから投稿

木下惠介監督の半生を描く作品
あの隠れた名作「陸軍」から始まる。

当時、活字である小説の方は読んだ。
読んで感銘を受けた。分かりやすい。

映画は少し広く感じた。
広いとは"大味"と思った。
木下監督の映画への思い
それは彼の作品を観ればわかる。

淡々と進むこの映画の物語
母思いの木下惠介の強さがある。
やはや母を演じる田中裕子さん
個人的には、この方の存在は大きい。

木下惠介という人の心の内は
鑑賞した人が受け止めればいい。

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星組

4.0魅力的な役者たちの中でも、

2025年2月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

やっぱり田中裕子。田中裕子に尽きる。
この映画を観た多くの人が語っている、息子に髪や身だしなみを整えてもらう母のシーンがたまらなく素晴らしい。
それを黙って見ている周りの登場人物たちの、なんとも言えない無感情なのが、特によい。
母と息子の短いロードムービーだ。

映画監督・木下惠介の生誕100周年記念作品ということもあり、木下監督の映画シーンのつなぎ映像が全く感動的にもならない継ぎ接ぎで、長回しされている。
これには参ってしまったが、記念作品だから仕方ないと思って諦めて見続けた。

それでもいいと思えるくらい、田中裕子の出ているシーンが全てよかった。
加瀬亮もとても良いが、兄役のユースケサンタマリアがすごくいい味わいがあった。あまり俳優としては好きじゃなかったのだけど、この作品の彼は雰囲気がとても合っている。
そして濱田岳。飄々として頭も意地も悪そうなのに、憎めない。最後は観ている者の気持ちをかっさらって気持ちよく清々しく退場していった。

3回も繰り返し鑑賞してしまった映画。

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カモシカヤマネ

4.0【”お前の映画を待っている人が居ると母は私に言った。”今作は木下惠介監督が軍部から自らの映画を軟弱と言われた時に、深い家族愛と自らの映画を愛する人が居る事を知り、再生する様を描いた逸品である。】

2025年2月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 今作は、ラストに流れる木下惠介監督作の数々を観て、たった3作しか観ていない事に気付き、残りも観ようと思わせてくれた作品である。-

■木下惠介(加瀬亮)は、念願の映画監督になるも、戦時中は戦意高揚の映画を製作していた。その中の一作「陸軍」で、出生する息子を必死に追う母の姿が軟弱であると軍部に指摘され、次回作が作れなくなる。会社に辞表を出し、失意のうちに浜松に戻った彼は、病床の母(田中裕子)、兄(ユースケ・サンタマリア)と荷物運びの便利屋(濱田岳)と共に、母をリヤカーに乗せて爆撃の危険がある浜松市内から、山間地に住む親族を頼り長い道のりを歩くことを決意する。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作は、病により口をきくことが不自由な母、真面目な兄、そして力持ちだが剽軽で善良な便利屋と、暗い顔をした木下のロードムービーであり、4人の遣り取りが時に可笑しく、時に心に響くヒューマンドラマである。

・特に、力持ちだが剽軽で善良な便利屋を演じた濱田岳が、途中で泊まった宿屋の娘二人(ナント、相楽樹と松岡茉優である。)の事が気に入り、キャッキャと戯れる姿と、外に出て木下に対し、彼が監督したとは露知らずに映画館で観た「陸軍」の感想を言う姿が良い。
”あんな、素敵な映画はないに。最後は涙したに。”という言葉に対し、木下が言う”自分の息子に立派に死んで来いなどという母は居ない。”という台詞が心に響く。
 木下監督が、仕方なくプロパガンダ映画を作りつつ、映画人、人間として優れたる人物である事が良く分かるし、濱田岳の人間味あふれる演技は見事である。

■親族の家で、床に入っている母が木下に読ませるために書いた手紙を田中裕子さんの声が読み上げるシーンと、田中さんが口が利きにくい母の想いを木下に伝えるシーンは白眉である。

<今作に登場する人物は、皆、人間味が有り優しい。今作は、原恵一監督が木下惠介監督に捧げたオマージュであり、自らへの家族愛に触れた木下監督が喪失感から再生していく気品高き物語なのである。>

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NOBU

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