スクリーンで観る高座 シネマ落語&ドキュメンタリー「映画 立川談志」
劇場公開日:2012年12月8日
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劇場公開日:2012年12月8日
坂井真紀「談志師匠は最後まで談志師匠だった」
2013年1月12日談志さん長女・松岡弓子氏、勘三郎さん死去を墓前に報告
2012年12月8日一周忌追善企画「映画 立川談志」で2つの豪華対談が決定
2012年11月17日中島岳志の「思いがけず利他」という本の中で、かなりのページ数を割いて、談志の「文七元結」に関わる話が書かれている。娘が自身を借金の形にして得た50両を、長兵衛は帰り道に出会った身投げをしようとしている文七に渡してしまうという不可解な行動。この本を読むと、談志は、その長兵衛の振る舞いについて長らくスッキリしない思いを抱え、その時々でのベストを探りながら演じていた様子が伝わってくる。
この映画の中でも、「芝浜」の女房に対して、かなりの悪態をついているインタビュー場面があり、同様なスッキリしない思いがあるだろうことが伺える。だが、本編中の高座の中では、これまでに見たり聞いたりしてきた様々な落語家の「芝浜」と違い、談志ならではの、女房の「業」を前面に打ち出した「芝浜」になっていて、すっかり心を鷲掴みにされた。
談志の言う「イリュージョン」とは、演者観客双方が、その中に心地良く浸れる「創造された世界観」と受け取ったが、談志自身がその演目の納得解を探り続けた上で、登場人物それぞれに自由に振る舞わせてその世界観を創り出してきたのだろう。
今更ながら談志中毒になってみたくなった。
ある高校の定時制先生に『芝浜はやはり志ん朝ですね。』って蘊蓄たれたら、その方はある大学の『落研』出身で、国語の教師をしながらアマチュアの落語を打つらしく『おはこ』はなんとなんと『芝浜』だと返された。あ~恥かいた。と思ったら、続けて、なんとなんとなんと、彼は立川談志師匠の後援会長(未確認)をやった事があるとの事。
さて
今日暫くぶりで立川談志師匠の『芝浜』を聞いた。確かに
柳家小三治、古今亭志ん朝よりも立川談志師匠の方が良いと感じた。そして、同時にその理由が分かった。
間が絶妙なのである。
芝浜だよ‼️年明け4日に観たの 幸せだったよ~
高座をスクリーンの大画面で観るだけだけど 芝浜だからねぇ凄いヨ。
夢になるといけねぇってさ、死んだのだけは夢だったらよかったのにねぇまったくまいったヨ
月命日の21日と最終日に在りし日の家元の高座と人間模様を収めた今作を観る。
落語史上初めて哲学を盛り込んだ立川談志の芸は未だ賛否両論激しいが、談志を通して落語を愛する生きがいを見いだした事に間違いは無かったと改めて確信し、胸が熱くなった。
“落語とはイリュージョンである”と前半は『やかん』を、
“落語とは人間の業の肯定である”と後半は『芝浜』と、十八番を披露し、熱弁をふるう。
つまり、前者では“常識を疑え”
後者では“人間は弱いから物語に成る”と、自身の落語哲学を説いているが、生涯を懸け、病や世間と戦い続けながら、家元が掲げた落語の本質は、未だに上手く説明できない。
職場に介護に置き換えたら、
「利用者様にもっと人間らしい生活を!残業の無いスムーズな現場を!」
etc.綺麗事ばかり全面的に並べやがる上司の話なぞ聞く耳を持たないが、
「あのお爺さん暴力ばかり振るうなぁ…
夜勤行くの嫌やなぁ。ツラいよね、めんどくさいよね。
じゃあ、それを改善する方法って無いかい!?」と一人一人の持つ弱さから、課題について考えようとするリーダーの話には違和感なく惹かれていくのと相通ずるのかもしれない。
自分自身、職場で上手く答えが出た試し
が無く、むしろトラブルメーカーの身なのが、何とも悲しいが…。
人間の弱さやだらしなさ、ワガママを認め、さらけ出したうえで、ストーリーのキャラに憑依させる難しさにもがき、葛藤し、落語の表現に没頭した人生やったからこそ、立川談志は永遠に語り尽くせない落語家に昇華したと思う。
私は談志師匠のナマの高座はギリギリ間に合った世代で、2007年の静岡グランシップでの独演会を体験している。
掛けた演目は『二人旅』と『へっつい幽霊』
当時既に病状は進行しており、声はかすれて、展開をトバしたり、途切れてしまうのもしばしばで体調は最悪
全盛期をCDで聴き惚れていた信者には大きなショックだったが、神と同じ空間、同じ場所、同じ空気を共有できた時間は今でも掛け替えの無い財産である。
では最後に短歌をイリュージョンを用いて一首
『旅立ちて 神説く不条理 技(業)に酔い 段々と泣く 芝浜のあと』
by全竜
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