駆ける少年

劇場公開日:

駆ける少年

解説

「CUT」「マンハッタン・バイ・ナンバーズ」のアミール・ナデリ監督が1985年に製作し、ナント三大陸映画祭グランプリほか多数の映画祭で受賞。イラン映画の実力を世界に知らしめた人間ドラマ。70年代初頭。ペルシャ湾沿岸の小さな港町で暮らす孤児の少年アミルは、空きビン拾いや水兵の靴磨きなどをして生計を立てていた。過酷な境遇にありながらも、アミルは似たような身の上の仲間たちとともに毎日を楽しんで生きている。そんなある日、自分が読み書きできないことに気づきショックを受けたアミルは、必死で字を覚えはじめる。少年たちの走る姿を通して、生きることの輝きを描き出す。2012年、日本劇場初公開。

1985年製作/91分/イラン
原題:Davandeh
配給:「駆ける少年」上映委員会
劇場公開日:2012年12月22日

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映画レビュー

5.0好奇心の強い人間には『自分のいる世界を超えた世界』がつかみ取れる。

2024年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

時代的に湾岸戦争中(Iran–Iraq War (1980–1988))に撮影された映画かもね。主人公アミロAmiro (Madjid Niroumand)の負けず嫌いで、好奇心があり、向上心がある性格が気に入った。アバーダーンに住む孤児アミロは水を売ったり、外国人の靴を磨いたり、船上にいる外国人によって投げ捨てられた空き瓶を集めたりして、空いている建物の中で生活している。他の孤児とは違うふうに描かれているのは好奇心の高さだ。外国人相手の商売をする波止場で字が読めないが、雑誌を見ることが好きで、店主に追いはられてもやってくる。食べるものがなさそうだが、売上を雑誌に使う。

ある時、雑貨屋で、飛行機の雑誌を買おうとして、店主に『外国語が読めるの』と聞かれる。そして、大金を払って外国語の雑誌を買う訳だが、店主に「ペルシャ語が読めればやすいよ』と。この時の店主の一言。「お前のような歳なら、ペルシャ語が読めなきゃ』と。これが、アミロに衝撃を与えた。彼の生活はペルシャ語が読めなくても不自由はしない。読み書きは必要ないし、必要だということにさえ、気づかない。誰も教えてくれないだろうし、毎日毎日金をすこし稼いで生活ができて、飛行機の写真を見て満足していたわけだ。自分の想像を超えた世界があったとは?

好奇心の強い人間には『自分のいる世界を超えた世界』がつかみ取れる。

アミロは海で、大金を払って買った数冊の飛行機の雑誌を破る。大声で、『I must read! I must write! Why? Can't I ?』アッパレ! そのあとはまっしぐらに学校へ! それも、I had no one to put me to school and now I came here. と。孤児だし、学校なんて知らなかったよね。飛行機の真下で叫びながらペルシア語のアルファベット32を覚え終わるシーンだが、飛行機と学びのスピードを争っているかのように見える。達成感が感じられるシーンだ。

それに、イスラム教に基づく思想(盗みはしないとか人に対する憐憫の心)を孤児であっても失わない。どこからその倫理を習ったか映画では説明されていない。でも、倫理・信念のある少年として描かれている。ましてや、主に外国人をターゲットに商売(靴磨き)していて、外国人が泥棒扱いしたが、それに負けていない。自分はそんな人間じゃないと尊厳を守り通す。多国籍軍?がイランの土地に入っていて、そこに集落を作っている場所だが、(守りという体裁のいい、占領?)アミロの心は盗みはしないというイスラム道徳が信念になっている。弱肉強食の状態でも彼の芯は一本通っている。アッパレ。そして、片足をなくした老人に哀れみの目を向ける。アミロ自身、足を使うことを得意としていることもあるだろうから、足にも限界があることを感じて、ペルシア語の学びに興味が出たのかもしれない。あくまでも想像。

最後で、原油が燃える中、アイスが溶けないうちに、誰がそこまで一番に辿り着けるかという競争にアミロが勝った。そこでの、冷たいアイスを独り占めしないで、皆と分け合いお互いに達成感を感じるシーンは圧巻だね。

この映画を観始めたとき、まず、「バシュー、小さな異邦人」(1986年製作の映画)を思い出した。ここに無料映画があるが、私はDVDで観ているからもっと訳が多い。
Bashu, the Little Stranger コピペで無料で見られる。
まず、イランの南部で海辺で湾岸戦争付近の主人公から。それに、主人公が賢さが滲み出ている。政府奨励映画だしね。(Culture Association of Yourth)

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Socialjustice

4.0上映時間の割に長く感じた

2024年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

寝られる

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てつ

3.0奥が深い

2013年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

まさしくタイトル通りでした。こういうタイプの映画は初めてだったので私には難しかったです。でも自分なりにいろいろ考えながら見ることができました。生きるという基本的なことを再確認した映画でした。

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のん

4.5稀有な映像体験

2013年1月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

幸せ

ほぼ全編、子供が出ずっぱりの映画です。子供が主人公の映画と云えば、日本映画の「風の中の子供」、フランス映画の「禁じられた遊び」、スペイン映画の「汚れなき悪戯」、などがありますが、この映画はこれらの作品に引けを取らない出来栄えです。イラン革命以前の港町が舞台となっています。とにかく、子供たちが、元気よく走り回ります。余りに元気よく走り回るので、最後には、誰かの死をもって、映画は終わるのではないのか、と邪推したくなるくらいです。白眉は最後の10分間でしょう。燃え上がる天然ガス田を背景に溶けてゆく氷、を目指して疾走してゆく子供たち。科白も説明も何もないのですが至福の映像が連綿と綴られていきます。
尚、映画の中では、ルイ・アームストロング、ナット・キング・コールやエルトン・ジョンの歌が洩れ聞こえます。革命前のイランでは、このような欧米の歌がごく当たり前に流れていたことを考えれば、この映画は来るべきイスラム原理主義の圧政前のひとときの生の謳歌を描いているように思えてなりません。

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bashiba