アクメッド王子の冒険(1926)

劇場公開日:

解説

あまりの美しさに映画評論家の故・淀川長治氏も絶賛し語り続けた、ドイツの影絵アニメーション作家ロッテ・ライガニー(1899~1981)。彼女の処女作にして最高傑作「アクメッド王子の冒険」(26)は、世界初の長編アニメーションというだけでなく、その芸術的かつ娯楽的な質の高さで、数十年に渡って世界中の多くのアーティストに影響を与え、今もまったくその輝きが失われることのない映画史に極めて重要な作品である。しかし伴奏を必要とするサイレント作品であることから世界的に上映される機会が非常に少なかった。今回ドイツおよびイギリスの権利保有者と交渉の末、この作品の世界初となるステレオ・サウンド版ニュープリントを制作し、一般の映画館で上映することを可能とすることに成功した。また、「カルメン」「パパゲーノ」「ガラテア」「眠れる森の美女」「長靴をはいた猫」という、ライニガーの数ある短編の中から厳選した傑作5本を初めて35mmに起こし、ニュープリントを制作。特集上映「ロッテ・ライニガーの世界」で一挙公開された。彩色。

1926年製作/65分/ドイツ
原題または英題:Die Abenteuer des Prinzen Achmed/The Adventures of Prince Achmed
配給:エデン
劇場公開日:2005年11月12日

ストーリー

カリフ(イスラムの王)の誕生日を祝ってにぎわう都に魔法使いが現れ、魔法で作り出した<空飛ぶ馬>で飛んで見せた。カリフはこの馬がほしくなり、何でも望みの物と取り替えようと約束すると、魔法使いはカリフの王女ディナルザデーを妻に、と願う。ディナルザデーの兄、アクメッド王子はその非礼さに激怒したが、魔法使いはたくみに王子を<空飛ぶ馬>に乗せ、上昇法だけ教えて空へと飛ばせた。見る見る馬も王子も雲間に消えた。怒ったカリフは魔法使いを投獄したが、彼には重い鎖から逃れるなどたやすい事だった。他方、やっとの思いで馬を下降させたアクメッドはワクワク島に降り立つ。この島を治めるのは美しい妖精パリバヌー。夜ごとに鳥の姿で泉に舞い降り、水あびをする。物陰から彼女を見た王子は一目で恋に落ち、鳥の羽衣を隠して彼女を引き留め、共に故郷の王宮で暮らそうと語りかける。ついにパリバヌーもひたむきなアクメッドの情熱にほだされ、ふたりは<空飛ぶ馬>で飛び立つ。牢をのがれた魔法使いはコウモリに姿を変え、中国の都に着いた王子たちを襲ってパリバヌーを奪い、皇帝に売り渡す。彼女の美しさに皇帝の心も動いたが、パリバヌーはその求愛をはねつけた。腹立ちまぎれに皇帝は彼女を醜い道化男に与え、結婚を命じる。一方、魔法使いは王子を火山の頂の大岩で押さえつけて逃げ去った。しかしこの火山には魔法使いの宿敵、善い魔女フォンフランベルグがいた。魔女は王子をすくい、あわや結婚寸前のパリバヌー救出にも力を貸す。しかし、せっかく助けたパリバヌーはワクワク島から彼女を追ってきた魔物たちに取り戻されてしまう。パリバヌーの連れ去られた島は山の裂け目の大門を閉じた。この門を開けられるのはアラジンの魔法のランプの持ち主だけだという。ところが王子が怪物に襲われていた若者を助けてみると、アラジンその人。ただ、ランプは手元にない。ここでアラジンは自分が魔法のランプの持ち主になったいきさつを王子に物語る。アラジンは自分を利用した魔法使い(カリフの前に現れたのと同一人物)を出し抜いて手に入れたランプの精に宮殿を作らせ、カリフの娘ディナルザデーを妻に迎えて幸せに暮らしていたが、とうとう魔法使いに発見され、ランプもろとも宮殿も妻も消え失せてしまったという。ここに善い魔女対魔法使いの決戦が始まる。魔術くらべに続く大激戦。宿敵を倒した魔女は魔法のランプで山の門を開き、パリバヌーは開放された。ワクワク島に移されていたアラジンの宮殿ではディナルザデーも無事だった。一同は宮殿で空を飛び、もとの都に帰還する。悲しみに沈んでいたカリフは元気な姿で戻ったアクメッド王子と花嫁パリバヌー、アラジンとディナルザデーを代わる代わる抱きしめて喜びにひたるのだった。

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