初恋(1998)
劇場公開日:1998年5月23日
解説
初恋」にまつわる物語を鮮烈なタッチで綴った一編。監督はDJ・俳優・デザイナーなど幅広い活動で知られる、ラップ・ユニット軟硬天師の一員エリック・コット(出演も)で、本作が長編劇映画デビュー作。製作は本作が初のプロデュース作となる「ブエノスアイレス」のウォン・カーウァイと大里洋吉。製作総指揮はチャン・イーチェン。脚本はオーシャン・チャンとイップ・リムサム、撮影は「ブエノスアイレス」のクリストファー・ドイル。音楽はカール・ウォン。美術はマン・リムチャン。編集はチャン・キーポップ。出演は「世界の果て」の金城武、「kitchen キッチン」のカレン・モク、本作がデビュー作のリー・ウェイウェイほか。
1998年製作/97分/香港・日本合作
原題または英題:初纏恋后的2人世界/The Litter on the breeze
配給:アミューズ
劇場公開日:1998年5月23日
ストーリー
監督エリック・コットはなぜ自分が映画を作ることになったのかを語り始める。彼はこの映画のタイトルを「初恋」とすることに決めた。プロデューサーであるウォン・カーウァイやスタッフたちのインタヴュー、混乱を極める撮影風景がインサートされる。エリックは没になってしまった企画について語る。やがて夢遊病の少女(リー・ウェイウェイ)と軽く精神を病んだ夜間清掃員の男(金城武)の物語が始まる。夢遊病の少女は毎晩清掃員の男と眠ったまま街を歩き回っているのだが、目が醒めるとなにひとつ憶えていない。彼女はビデオカメラを首からぶらさげて眠ることにした。果たして起きてからビデオを再生してみるとそこにはいつも同じ男の姿が。男は自分と会っている時に少女に目を醒ましてほしいのだがどんなことをしても彼女は起きない。だが睡眠薬を飲んで三日間続けて眠った少女は夢遊病が直っていることに気がつく。それでも彼女は夢遊病にかかったふりをして男とささやかな夜のデートをするのだった。男は少女のことが大好きで結婚式を挙げたいのだが、そのへんになると監督のエリックにはこの男のことを描きにくくなった。まるで自分のことのようなのだ。そこで違う物語を始める。ヤッピン(エリック・コット)とカレン(カレン・モク)は十年前に結婚まで誓った仲なのだが、急に弱気になったヤッピンは結婚指輪を奪って逃げてしまった。そんな彼も今は雑貨屋の主として妻子のある身。ある日カレンは偶然ヤッピンと再会する。何も言わずにコーラを飲むカレン。ヤッピンは彼女が復讐に来たのではないかと悪夢に悩まされる。そんな気持ちの擦れ違いが無言のまま幾度も重ねられ、神経衰弱気味になったヤッピンは妻にあげていた件の結婚指輪をむりやりカレンに渡す。雨の夜、カレンがまたコーラを飲みに来た。何も言わずに立ち去る彼女。机の上には結婚指輪が置かれていた。ヤッピンは十年ぶりに自分からカレンに声をかけた。「この傘でタクシーまで送っていくよ」。監督エリックはまた語り始める。この映画を撮り終えて、自分が監督に向いていないことに気がついた。でも、もしも次に撮る機会があったなら、また自分でドキドキできるものを作ろうと思う。初恋と同じさ、と彼はビデオカメラに向かって感極まり涙を流すのだった。