山を飛ぶ花笠
劇場公開日:1949年9月11日
解説
企画は「飛騨の暴れん坊」の高桑義生と第一回プロデュースの浅井昭三郎の協同で、「嵐の中の姉妹」「毒薔薇」の川口松太郎の原作から「王将(1948)」につぐ伊藤大輔が脚色監督し、キャメラは「白髪鬼」の川崎新太郎が担当。主演は「海の野獣」の花柳小菊と歌舞伎役者で映画初出演の尾上梅幸で、それに「白虎」「ジャコ万と鉄(1949)」の月形龍之介、「人間模様」の東山千栄子、「母呼ぶ鳥」の沢村貞子らが出演する。
1949年製作/83分/日本
配給:大映
劇場公開日:1949年9月11日
ストーリー
江戸市村座の若女形竹之助は将軍家の御医師了仙院の娘お俊と火のような恋に陥ちた。だがお俊には長崎に修行中の許婚宗院がある。近く彼の帰京を待って華しょくの典を挙げることになっていた。お俊は家を出る決心をした。お俊の母菱江から事情を聞いた師匠の竹之丞は竹之助を一室にとじこめた。それを知ったお俊は竹之助を救い出し、その夜二人は手を携えて江戸を後にした。街道で二人がすれ違った一行こそ、帰京を急ぐ宗院であった。お俊の失そうを知った宗院のひとみにおう悩の炎が燃えた。そして四年の歳月が流れた。竹之助の演技は次第に世間の認めるところとなり運の目が向いてきたと喜ぶお俊、だが彼女は知らなかったがこの時竹之助の眼はほとんど盲目に近くなっていたのである。大入満員の名古屋の大須座の舞台で拍手かっさいを浴びながら竹之助は倒れた。座頭が盲目と知った一座の者はたちまち散っていった。しかし二人は負けなかった。わびしい一座を組んで旅から旅へ、お俊に助けられて舞台をふみ竹之助の必死の演技は次第に人気を取もどすようになった。木曽の宿は年に一度の花笠祭が近ずいていた。竹之助の跡を追って旅に出た宗院は竹之助の舞台を見、お俊に彼の眼の治療を申出た。だがその代償として彼女の肉体が要求されていたのだ。花笠祭の当夜、宗院の努力によって竹之助の眼は開いた、すでに事情を察していた竹之助は宗院に恩義を感じお俊を諦め彼女の幸福を祈ってただ一人姿を消そうと決心した。お俊は竹之助のあとを追った。手にしたじょうで竹之助の眼を突こうとした。「つぶしてやる!別れるつもりで苦労したんじゃない」お俊はワット泣きふした。夜霧に惨んで山を飛ぶ数百の花笠、高調する音頭、二人はその中を宗院を探した。残されていた一通の手残。「許す。仲よく暮せ--宗院」と。竹之助は泣いた。その翌日去り行く竹之助一行を峠に立って見送る宗院の姿が見られた。