祈るひと
劇場公開日:1959年2月11日
解説
田宮虎彦が『若い女性』に連載した同名長篇小説を「大阪の風」の三木克巳が脚色した文芸作品。監督は「絶唱(1958)」の滝沢英輔、撮影は「不道徳教育講座」の横山実がそれぞれ担当した。
1959年製作/97分/日本
配給:日活
劇場公開日:1959年2月11日
ストーリー
三沢暁子は結婚したからといって、必ずしも幸福になるとは限らない……これが蓮池弘志との見合をためらわさせた。死んだ父恭介は有名な国文学者だったが、家庭的には冷い男だった。暁子はやがてする自分の結婚は、父母のようなものならしたくないと考えていた。ある日曜日、暁子は母吉枝の友人薄井常子の紹介で蓮池青年と見合をした。型通りの会合が終ると、蓮池は明日の約束をしてさっさと帰ってしまった。吉枝や常子はそんな蓮池を男性的と賞めるが、暁子は好意をもてなかった。翌日、暁子は蓮池と会わずに、幼友達の喜代をたずねた。そこにはミツも来ていた。三人は戦争中疎開した房州での仲良しだった。幸代は西島と結婚し、ミツも漁師の三次と結婚して、それぞれ幸せそうだった。その夜、暁子を待っていた蓮池は彼女を責めた。暁子は学生時代から父の友人の佐々木教授の手伝いをしていた。そこでわかった父は別人のような明るい人だった。ある日家に帰ると、母の愛人庫木が来ていた。庫木は父の死後、暁子の家の経済面の世話をしていた。暁子は庫木と母は父の生前から交際していたのではないかと疑った。暁子が十六歳の時--母が他の男と歩いているのをみた。それが庫木だと確信していた。母の新しい幸せを喜びもし、悲しみもした。翌日、蓮池は下北沢で暁子を待伏せ、結婚を申込んだ。暁子はその強引さに驚いたが、男のたくましい愛情を感じた。暁子は友達の篤を、彼の勤務先の病院にたずねた。篤は蓮池を愛していないのなら暁子の結婚は不幸だと諭した。その帰途、暁子は蓮池の許婚者理津子と女性の幸福について話した。そして蓮池との結婚を断念した。蓮池はそれを聞き激怒した。彼は暁子が庫木の子であることを承知で話をすすめていたのだ。彼は彼女に秘密の全部をぶちまけた。暁子は蓮池の態度や、父の冷さの原因を知って悲しんだ。暁子は房州のミツを訪れた。嵐の中で命を賭けて働く、ミツと三次の真剣な生活をみて、暁子は愛の尊さと真の女の幸福を知った。暁子は家を出て独立することに決心し、佐々木家から出版社に務めることになった。暁子は庫木をたずね、母と結婚して幸せになって欲しいと頼んだ。--初秋のある日、篤と理津子の結婚式が行われた。暁子は二人の幸福を祈り、みずからの幸せを夢みるのだった。