獄門島(1977)

劇場公開日:

解説

「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄(1977)」に続き、原作・横溝正史、監督・市川崑、主演・石坂浩二のトリオが三たび放つ横溝シリーズ。封建的な古い因習の中で、本鬼頭と分鬼頭が対立する獄門島へきた金田一耕助が、連続殺人事件にまきこまれる姿を描く。脚本は「悪魔の手毬唄(1977)」の久里子亭、監督は同作の市川崑、撮影も同作の長谷川清がそれぞれ担当。

1977年製作/141分/日本
配給:東宝

ストーリー

終戦から一年たった、昭和二十一年九月下旬--戦地から帰国の途中、引き揚げ船の中で死亡した鬼頭千万太の遺書を私立探偵・金田一耕助が友人から預り、獄門島の千光寺・了然和尚へ届けにきた。「死にたくない。おれが帰ってやらないと、三人の妹たちが殺される」その本鬼頭の月代、雪枝、花子の三姉妹は千万太と異母兄妹で、いまは座敷牢に入れられている当主・与三松と後妻・お小夜の間に生まれた子供たちだが、千万太の亡祖父・嘉右衛門は、旅芸人だったお小夜と与三松の再婚には、死ぬまで徹底的に反対した。金田一耕助が島へきて三日目に行なわれた千万太の通夜の日に、第一の殺人事件が起こる。死んだ嘉右衛門の妾で、いまは本鬼頭で女中のように働いている勝野が、三姉妹の着替えを終えた直後、三女・花子の姿が消えた。その夜、千光寺の梅の古木に自分のしめていた帯で逆さ吊りにされた花子の死体がみつかる。現場へ駆付けた千万太のいとこの早苗は、逆さ吊りにされている花子の懐から一通の封筒が落ちるのを見つける。それは、対立している分鬼頭家・儀兵衛の後妻・巴が、月代宛に書かせたものだった。千光寺に宿泊している金田一耕助は、枕もとにある屏風に極門という雅号の男が書き写した、芭蕉の句が二枚、其角の句が一枚と、三枚の色紙が貼ってあるのを発見した。「鴬の身をさかさまに初音かな」「むざんやな冑の下のきりぎりす」「一つ家に遊女も寝たり萩と月」。翌朝、金田一耕助は、花子殺害の重要容疑者として清水巡査に逮捕され、留置場に入れられてしまった。その間隙をぬうようにして、無残な第二の殺人事件が起こる。次女の雪枝が、海に向って天狗の鼻のようにつきでた崖の上に置かれている千光寺の吊り鐘の中で死体となって発見された。そして、花子、雪枝の葬儀の夜、長女の月代までが、かつてお小夜が使用した祈祷所の中で絞殺され、その死体には萩の花びらがふりまかれていた。岡山県警の等々力警部が指揮する捜査陣の努力もむなしく、犯人はみつからない。殺人事件の解決に苦しむ金田一耕助は、ふとしたことから極門こと鬼頭嘉右衛門が書き残した千光寺の屏風の色紙の三つの俳句の中から、意表をついた事件の糸口をつかむ。三つの殺人がすべて俳句の中の言葉を元に行なわれている。そして、金田一耕助は最初の殺人現場で了然和尚が「き(季)ちがいじゃ」とつぶやいたのを思い出し、和尚に詰めよると、彼は妖気と邪知にあふれた殺人事件の謎を語り始めた。お小夜を憎んでいた嘉右衛門が臨終の時、自分の後継者は千万太であり、三人の娘を殺すようにと、俳句に意志を託し死んだ。そして、その時、勝野も話を聞いていたのである。和尚は千万太の通夜の晩、鵜飼が来ると花子をおだて、彼女を殺すと鬼頭家から千光寺へと死体を運んだのであった。しかし、第二、第三の殺人は絞殺であり、リュウマチの和尚にできるはずはなく、その犯人は勝野であると金田一は謎解きを続ける。同じころ、早苗は二年前兄のひとしが出征する時、自分たちの母は勝野であると言い残し島を去ったと勝野に話す。最初は否定する勝野だったが、早苗の涙ぐむ姿に嘘はつけないと、殺人にまでおよんだいきさつを話し始めた。もし、千万太が死んでひとしが生きて帰ってきたら、三人の姉妹は殺される。勝野は千万太に無事に帰るように手紙を書くが、千万太がマラリヤで死んだことを知り、嘉衛門との間にできたひとしが復員してくるまでに何事も終わらせたいと殺人を行ったのだった。早苗に母となのれなかったのは、孤児の勝野を拾った了然和尚の忠告のためであり、それでも昔の自分を思うと幸せだと勝野は語る。そして早苗はもっと早く母さんと言えばよかったと涙ながらに抱きつくのだった。すべてが解決した獄門島にひとしの戦死の公報が届く。復員兵にひとしは帰還すると聞かされていた了然和尚は、勝野の手をとると断崖から海へ飛びこんだ。金田一が獄門島を去る時、これらの殺人は勝野の悲しい思い出が生んだ事件だと彼には思えるのだった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第1回 日本アカデミー賞(1978年)

ノミネート

監督賞 市川崑
助演男優賞 加藤武
技術賞 村木忍
詳細情報を表示
オソレゾーン

フォトギャラリー

映画レビュー

4.0金田一シリーズでいちばん

2021年10月9日
iPhoneアプリから投稿

好きな作品。司洋子、大原麗子、石坂の演技合戦。
この頃までは日本映画面白かったんだよね。

コメントする 2件)
共感した! 2件)
ken

3.5錚々たる役者たち

2021年8月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

悲しい

知的

70年代に流行った金田一映画は全部見た気になっていたが何度も見たのは「犬神家」だけで後は原作を読んでいただけだった(個々の内容はもう覚えてないです)。だからこの映画も初見で新鮮で面白かった。役者の豪勢さに目を奪われてうきうきしてしまったので名前を書かせて下さい!太地喜和子(この時34歳!大人の女ー!)、大原麗子、三木のり平、加藤武、大滝秀治、草笛光子(金歯に凄み)、三谷昇、松村達雄、佐分利信、東野英治郎、司葉子、坂口良子…。

映像、カメラワーク、編集、スピード感、でかい文字のフォントが市川崑だなあと思って楽しかった。冒頭のキノコ雲と復員兵の様子と昭和的ナレーション、一方でエレキギターだかウクレレがハワイムードを醸し出していた。ドラムも何度も聞こえた。

旅回りの役者の話も胸をくすぐられた。道成寺、狐忠信、葛の葉子別れ。最後の二つは親と子の悲しい話。親を慕う子、引き裂かれる思いで子から離れなければならない母親。上手い構成だなあ。古さを感じなかった。蝉の音、冷や麦、絽などの着物で夏を感じることができた。

コメントする (0件)
共感した! 9件)
talisman

3.5【”獄門島には、本鬼頭先代の怨念がオンネン・・と呟き、二人は身を投げた。”禁断の結婚による、孤島での血塗られた人間関係を描く、市川崑監督、石坂浩二金田一耕助シリーズ第三弾。】

2021年6月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

知的

難しい

ー 且つて海賊の住処で、その後流刑地になった、獄門島には、”本鬼頭”と、”分鬼頭”の人々が住んでいる。
 だが、両家に間には、隠された血縁関係が・・。
 そもそも、島に暮らす人たちが、皆血が繋がっているのかもしれない。
 故に、発狂者もしくは精神的に不安定な人たちが多いのかもしれない・・。ー

■感想
 ・キャスティングで、誰が犯人かが”何となく”分かってしまう、”安心感”。
 ー 金田一映画シリーズの特長である。これは、第2作でも記載。
   只、今作は大原さんかな?と思いながら、観ていた。ー

 ・屏風に書かれた俳句が殺人の見立てになる所。
 ー これも、金田一シリーズの特長である事は、周知の事実。ー

 ・登場キャラクターの多さ及び、複雑に入り組んだ人間関係。
 隠された血縁関係。
 ー 今作では、凄ーくお若いピーターや、殺されちゃうけれど、浅野ゆう子さんも、出演。ー

 ・”そうか、分かった”が口癖の、全然分かっていない等々力警部(加藤武)も健在で・・・。

<獄門島という架空の島の、近親婚の重なりによる人間の精神性の脆さ、先代の本鬼頭当主の狂気性が惹き起こした事を、じわりじわりと序盤から描く市川崑監督の映画作りが良い。
 そして、現在では物故者が多くなってしまったが、”昭和”の名役者さんたちの姿。
 第1作、2作と比較すると、作品レベルはやや落ち気味だが、一定レベルの面白さはキープしている作品。
 昭和50年代の映画って、残虐描写もナカナカ・・。
 ジャパニーズホラーの萌芽時期だったのかな?>

コメントする (0件)
共感した! 7件)
NOBU

2.5第三弾

2021年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

流石に三本目ともなるとマンネリの匂いが漂ってくる。
だいたい同じような話で、犯人が目的を達したあとで金田一が謎解きをするという、遅れ馳せミステリー。
今回は司葉子と大原麗子がゲストなので、犯人は・・・。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
いやよセブン
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る