荒城の月(1958)
劇場公開日:1958年8月26日
解説
シナリオ作家猪俣勝人が主宰する独立プロダクション「シナリオ文芸協会」の作品で、彼自身が製作・脚本・監督をすべて担当した。若くして逝った滝廉太郎の姿を描いたもので、廉太郎には石浜朗が扮し、そのほか山田百合子・村瀬幸子・日野明子・近藤宏などが出演している。
1958年製作/71分/日本
劇場公開日:1958年8月26日
ストーリー
若き天才作曲家として、「荒城の月」「箱根山」「四季」など数々の名曲を発表し、創設期日本音楽界の期待を集めた滝廉太郎は、明治三五年、ドイツに留学した。だがまもなく病いに冒され、半年後、再び故国に戻った。療養生活を送る廉太郎は、先輩の女流ヴァイオリニスト幸田延女史に励まされてじっとしておられず、かつて「荒城の月」の曲想を生んだ思い出の地、豊後竹田に赴いた。日夜を忘れて作曲に取組む廉太郎は、ある日、想い出の人、林田菊枝に出会った。菊枝は「荒城の月」のメロディを口ずさんでいた。二人は幼友達で、お互いに思い合っていたが、菊枝は廉太郎を手の届かぬ人とあきらめ、廉太郎は我が身の病弱を顧み、互いに恋をあきらめていたのである。菊枝の吹く草笛の旋律から楽想を得た廉太郎は、よそへ嫁いでいく菊枝へのはなむけに、思い出のシンフォニーを捧げようと思った。いよいよ嫁ぐ日、廉太郎は母校・竹田小学校の音楽教室で、傷心をいだいてオルガンをかなでた。日夜の作曲に疲れはてた彼は、やがてオルガンの上に崩れ伏してしまった。二カ月後、二十六歳の短い生涯を音楽に捧げた滝廉太郎は、人々の哀惜のうちにこの世を去った。