こけし子守唄 夕やけ鴉

劇場公開日:

解説

関沢新一の原作を、「さよなら港」の中田竜雄が脚色、「船頭姉妹」の伊賀山正光が監督、「さよなら港」の藤井静が撮影した。主演は「雪姫七変化」の松島トモ子、「緋ぼたん肌」の大川恵子、「殺人者を逃すな」の三条美紀。ほかに高木二郎、東宮秀樹、岸井明、原国雄など。

1957年製作/57分/日本
配給:東映
劇場公開日:1957年8月20日

ストーリー

遠い昔こけし作りの名人といわれた仙太は、吹雪の山中で倒れていた学生渥美利夫を救けた。利夫は負傷が回復すると共にゆきずりの山国の乙女澄江に心惹かれるようになり澄江もまた利夫に命をかけて愛した。やがて利夫は東京へ帰って行った。二人の間に子供が出来た。或る日、決心をした澄江は一人利夫に会いに東京へ旅立って行ったが、期待していた利夫から冷い言葉をきいて、自分の無知を始めて知ったが今更故郷へ帰れなくなり、わが子道子を父仙太に預けて気のおちつくまで東京で働く決心をした。父なし子の道子は、母がいなくともすくすくと育ち、やがて学校へ行くようになりそして綴方にまで母を恋い慕った。温泉町の店へ仙太爺ちゃんと一緒にこけしを売りに行った日大事な母の写真とそっくりの人を見かけ「おかあちゃん!」と空しく追いかけた。その頃澄江の想いも同じだった。そしてわが子の姿を求めて村へそっと帰ってきたが、年と共に益々頑固になった仙太爺さんはわびる澄江を許さずに追い返してしまった。二人の争いに目を覚ました道子は、母のあとを追って駅へかけつけた。一途に母に逢いたいと願う子の情に寒村の駅長さんもほだされて東京へ向う汽車の発車を遅らせた。母子はしっかと抱きあって「おかあちゃん!」「道子!」と呼び合った。十年の月日がこの瞬間を待ちわびていたかのように……仙太爺さんも人の親だ。心の中ではどんなに娘を持っていたことか! ジリジリと鳴るベル、仙太爺さんは「澄江よう」「道子よう」と二人を呼び返した。今日ばかりは歌う道子の心もはずむ……磐梯に落ちる夕陽の影さえ仙太爺さんにも、澄江にも、道子にもあたたかくみえた。

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